契約の森 精霊の瞳を持つ者

thruu

6.

「グリフは……いや、やっぱりなんでもない」

 グリフに嫌われているかどうかなんて、こんな幼い子供に聞けるわけがなかった。

「グリフのこと?」

 そういうと、ジェフはベットに乗り込んできた。それからしばらく考えるような間をあけて、ようやく喋りはじめた。

「グリフはみんなにああなんだよ。ちょっと冷たくて、怖くて……」

 それからジェフは満面の笑顔で言った。

「でも、いつも助けてくれる!家出した時とか、母ちゃんに怒られた時とか、罰当番の時とか……」

 ジェフは指で数えながら次々とそんな事を言っていく。

「タカオも、グリフに助けられたんでしょ?」

 ジェフの言葉に、炎の中でみたグリフの表情を思い出していた。

「そうだね、グリフがいなかったら大変なことになってたよ」

 想像したくはないが、グリフが助けてくれなかったらと思うと恐ろしくなる。

 ジェフはあくびをして、何度か瞬きをした。すると、思い出したように言う。

「そういえば、誰かが襲われてるって、最初に気がついたのはサラだったんだ。そしたらサラが急に暴走しちゃって、グリフはそれを止めるためについて行って、そしたらゴブリンに捕まってる奴がいたって言ってた」

 ジェフはもう眠たいのか、目をちゃんと開けられないようだ。

「そうだったのか。グリフにも、そのサラって人にも、きちんとお礼を言いたいな」

 グリフがあんな態度だったのもあって、まだお礼を言えていないことが妙に心に引っかかっていた。

「サラにも?サラには会わないほうがいいよ。もうすぐ大地の契約が切れるからって、最近変なんだよ。もう自分が誰だか分からなくなったみたいに暴れるんだ。タカオのその怪我もサラのせい……でさ……」

 そう言うとベッドに横になってしまった。目は完全に閉じている。

 大地の契約とはなんだろうかと思ったが、とにかくグリフ以上に気難しい人らしい。

「そのサラって人はどこにいるのかな」

 そう聞くと、ジェフは最後の力を振り絞るように答た。

「うーん。部屋を出たら窓があるでしょ?そこから、この建物とは別に倉庫が見えるんだけど……そこに……でも危ないから……」

 ジェフはそこまで言うと、後は寝息だけが聞こえていた。

 まずは、グリフよりも気難しいサラという人に挨拶に行こう。明日になれば、この場所のことも、帰る道も分かるだろう。きっと。

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