魔滅の戦士

やましゅん

戦士

剣技において、筋力は重要だ。技の威力は剣を振る速さと力に比例する。


筋トレと言われてやってきたのは、川だ。川で一体何をしようと言うのだろうか。「向こう岸にでっかい岩があるじゃろう?あれを持ってこい。」そう言われて向こう岸を見ると、確かにあった。馬鹿みたいにでかい岩が。自分の身長と同じくらいの高さで、横幅は少女の身長と同じくらいだ。「あの岩をこっちまで運べたら、剣を教えてやろう。それまでわしは何も手伝わん。一人で考えて行動しろ。飯は用意してやる。」と言うと、少女は去っていった。とにもかくにも、岩を早く運んで、剣を学ばねば。向こう岸に渡るために、川に足を突っ込むと、思った以上に流れが強い。動けない。バランスを取るので精一杯だ。まずはここで踏ん張れるだけの筋力をつけろという事だ。それから毎日、天音は基礎的なトレーニングを始めた。腹筋100回、腕立て伏せ100回、スクワット100回、ランニング5キロ。これを1日3セット。ストイックすぎる。少女は天音に少しは休めと言ったが、聞く耳を持たなかった。1ヶ月後、天音は川の向こう岸へと渡った。彼の体は見違えるほどに鍛えられている。早速岩を押してみる。動きはするが、全力で押して、10cm程しか進まない。さらにトレーニングを続ける。押す。を繰り返し、2ヶ月が過ぎた。川の目の前まで、岩は運ばれていた。あの強い川の流れと、馬鹿みたいに重い岩。今まで以上に辛い戦いになりそうだ。普通のトレーニングだけでは足りない。そこで彼は、剣を持ち出した。そして、最初に習った心臓を貫く技を、岩に放った。岩にヒビが入り、あと少しで割ることが出来そうだ。だが、剣にも割れ目が入ってしまっている。あと2回が限界だろう。もう一度、構えを取る。放つ。岩は壊れそうだが、あと1度の技では砕けそうではない。極限まで高めた一撃を放つ必要がある。岩を悪魔に見立て、怒りと憎しみを力に変えて、放つ。岩は砕けて、持ち上げられる程度の大きさになった。刀は砕けてもう使い物になりそうにない。全ての岩の破片を、対岸に運ぶことが出来た。これで、技を教えて貰える。その様子を見ていた少女は、「よくやった。明日からは、剣技を教えよう。」と、手を叩きながら言った。


翌朝起きて、天音は少女に20種を超える剣技を教わった。長かった訓練士時代は、これで終わりだ。「今までよう頑張ったのぅ。では、こいつを渡そう。」少女は天音に戦士入隊許可証と書かれた紙を渡した。「次が最後の訓練じゃ。」そう言って少女は付けていた仮面に手をかけ、外した。「私を切れ。」仮面の奥にあったのは人間の少女の顔ではなく、ツノの生えている悪魔の顔であった。悪魔を切ることに、躊躇してはいけない。家族でも、友人でも、師匠でも。これで、本当に最後の訓練だ。天音は剣を抜き、悪魔の心臓を貫いた。

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