話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

勇者に見捨てられて死んだ大賢者はゴブリンに転生したので、魔王の配下になって魔族の軍勢を率いる大賢者になる

英雄譚

第32話 「幻想的な花畑」

 

 魔王様に勝利したことにより、願いを一つだけ聞き入れてくれるらしい。

 数時間も敗北したことを根に持ち、ずっと拗ねていた筈だけど肉を食べてからの豹変が速い。
 やはり猪は豚肉と似て、脂がとても多い。
 だからこそ美味いのだ。

 力とエネルギーを蓄えるなら牛肉とかが良いけど、豚肉は満腹になる。

「労働人……魔王様、とにかく人材が必要ですのでお願いできないでしょうか?」

 森林伐採で村を町へと拡大する計画だ。
 木造建築を専門にした蝙蝠族が数人、村に来てくれたおかげでゴブリンや蝙蝠族の家屋を建てるのに苦労はしなくなった。

 クロノス王国から様々な武器系統を貰う事もできたし、慣れる為に欠かさず実武器で(ゴブリン族)訓練させよう。

 あとは食料だ。
 先日、ゴブリン族の女子供たちは蝙蝠族の戦士たちに畑の耕し方を教わったらしい。

 おかげで昨日、村へと帰還した時に作物の種がまかれた状態の耕かされた畑が広がっていた。

 アズベル大陸より自然豊かなおかげで環境も良いし、土がしっかりとした養分を持っている。
 魔力も倍と濃度が濃いため、成長が早いのですぐに収穫できるらしい。

 ゴブリン族になってからは肉ばかりしか口にしていない、久々に野菜をも摂取したいところだ。

「げぇ……野菜苦手なんだよなぁ」

 珍しく野菜嫌いのゴブが駄々こねていたが、

「お兄ちゃん!  せっかく村のみんなが作ったのに食べないだなんて、ダメだよ!」

 と、激怒した妹のリンが一喝した。
 微笑ましい二人を見ていると、なんだか羨ましい気持ちになる。

 なんせ昨日から実の妹ノエルから、なんだか避けられているような気がしてならない。
 村には以前より馴染めているようだが、僕たちが村に居なかった時に何があったのだろう?

 今じゃ、ゴブリンの子供たちの大人気ものだ。

「ノエルお姉ちゃん~」

「ん、どうかしたの?」

 まるで子供たちの姉のような存在で、彼女も子供たちをよくしている。
 遊び相手なんて毎日やっている、なによりノエルのドジな性格がウケるらしい。

「最近、アルフォンス様を避けているみたいだけど、どうかしたのぉ?  喧嘩しちゃったの?」

「えっ!  いや……その、喧嘩っていうより、なんていうか……ああ、もう!  どう説明すれば良いの!?」

「あっ、ノエルお姉ちゃん逃げないでよぉ」

 頭を抱えながら、子供たちの前から数度コケながら逃げていくノエルなんてしょっちゅうだ。

 いざ、間近で見ていると心配だ。
 あまり彼女と暮らした事がなかった、彼女の成長を見届けず故郷から出ていってしまった。

 思い出も少なかったし、僕は彼女のために何一つやれた事がない。
 ただ一つ、彼女を魔物から救ってやったことぐらい……曖昧だけど微かに覚えている。

「ノエル、あの話があるんだけど……」

「……すみません、また今度お願いできますか。もう一人のアルフォンスさん」

 邪険にされる理由も分かるが、今の僕はゴブリンという身。
 人族は本来のゴブリンを間違えた認識で捉えている。

 だから、避けられるのは仕方ない事だ。
 キツイ、実の妹と久々の再会を果たせたのに避けられて傷つかない兄なんているのだろうか?

「アルフォンス様……!  どうかしたのですか、落ち込んでいるようですが!?」

 丸太の上に座り込みながら、ボーッとしていると過剰に心配した様子でラフレーシアが駆けつけてきてくれた。

 だけど、いまの気分では立ち直るのに時間がかかりそうだ。
 とりあえず、気を紛らわせる為に話しておこう。

「……てことがあってさ。ラフレーシア、ジークの姉である君に聞きたいんだけど」

「はい、なんなりと!」

「もし君がジークの妹だったらの話しだけど。ジークになにをしてもらえたら、一番嬉しいかな?」

「それは勿論、決闘をしてもらえた時です」

 相談する相手を間違えてしまった。
 純粋に答えてくれるのは嬉しいけど脳筋な姉弟、僕とノエルじゃ相容れない存在。

 決闘を申し込めばノエルには、さらに嫌われてしまう。

「決闘をした時って、ラフレーシアは闘いが相変わらず好きだよね。なんていうか……普段から血の気が高い」

「ふふふ、お褒めに預かり光栄です」

 若干恥ずかしそうにしながら、はにかみ笑うラフレーシア。
 敵と一戦を交える時に見せる慈悲のなさそうな表情とは打って変わって、まるで子供のような笑顔だ。

 褒めたつもりは無いのだけど、そうとう好きなのだろう。

 ………あ、そういえばノエルは。

「どうかしたんですか、アルフォンス様?」

 ある事を思い出した。
 それはかつて遠い記憶に残っていたノエルとの思い出。

「……ねぇ、ラフレーシア。この森林外の地図とか持っていない」

「はい、いま使用している倉庫に行けば一枚ぐらいは。なにか予定でも?」

「うん、まあ。色々あったから、みんな疲れていると思うんだ。だから祝い事なんて良いかなぁって思って」

 僕がこの大陸に来てから、きっと問題ごとが増えたのだろう。
 力み過ぎるのも良くないし、少しだけ羽目をはずすぐらいならバチは当たらない。

 皆はよく頑張った、その見返りを得る権利はあるのだ。

「流石アルフォンス様、良い考えですね!
 では、さっそく地図を持ってきますね!」

「うん、ありがとう」

 興奮しながら目を輝かせるラフレーシア。
 昨日も楽しそうにしていたし、賑やかな場が好きなのだろう。

 ラフレーシアもよく頑張ったものだ。
 エビルゴブリンの侵攻を抑えられたのも、彼女あってからこそである。

「………そうだ」

 走り去っていく彼女の背中を見届けながら、ある事をもう一つ思いつく。
 これならきっとノエルも喜んでくれる。





 ーーー




 そんなわけで、村の皆でピクニックをする為に森林を抜けた西方の目的地である高原を目指した。

 村をそのままにしておくのも怖いので、執事のケインと僕を何故か毛嫌いしているロイド含めて、数十人が残ってくれた。

「うん、いい天気だ」

 この辺の地形を詳しく知っているエルフ、ルシウスが案内役だ。
 だけど彼の能天気な雰囲気から、少しだけ不安が募る。

 本当に辿りつけるのだろうか?

「急にみんなで祝い事をしようって。意味が分からないですよ……」

 あまり乗り気じゃないのか、若干つまんなさそうにしながら着いてくるノエルの方へと振り返った。

「まあまあ、毎日労働ばかりじゃ精神的にもツライし息抜きをする事も大切でしょ?」

「ふん、確かにそうかもしれませんね。未だ古い文化で維持している国を、いまさら発展するのもさぞかし大変ですもんね」

 おっと、ちょっと声を小さくしてくれないかいノエル。
 一応サリエル様も何故かピクニックに同行してくださっているのだからさ。

「こらぁ!  人族の小娘!  余の国を見下すとは、随分と良い度胸ではないか!!」

 そうだった、以前フランにサリエルは誹謗中傷に対してだけ地獄耳を発揮するという忠告を忘れていた。

「ひぃぃ!  お慈悲をぉぉ!」

「待つのじゃぁぁ!  人族の小娘ぇぇぇ!!」

 そのあとは結局、目的地に辿り着くまでノエルはサリエルに追われっぱなしだった。
 彼女を喜ばせるどころか、最悪な日にしてしまったようだ。

 まぁ、その分は楽しませれば良いか。
 そんなポジティブな事を考えながら、目的地である高原の緑色と異なる無数もの色を持った草花が広がる場所を眺める。



「………うわぁ、綺麗」

 隣で、さきほどまでサリエルに追われたせいで体力を失い、這い蹲っていたノエルが感銘したように声を漏らす。

 無事に辿り着けたのだ。
 ノエルの好きな、草花が幻想的に咲き乱れるという『お花畑』に。

「勇者に見捨てられて死んだ大賢者はゴブリンに転生したので、魔王の配下になって魔族の軍勢を率いる大賢者になる」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く