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勇者に見捨てられて死んだ大賢者はゴブリンに転生したので、魔王の配下になって魔族の軍勢を率いる大賢者になる

英雄譚

第29話 「女魔王VSアルフォンス 前半」

 

 ゴブリン村、夜。

 崩落してしまった木造の建物は、村の中心部に集めて燃やすことにした。

 サリエルは非常に気分が良いようだ。
 なんせ今夜のゴブリン村は、猪の丸焼きを囲みながら宴を開催するのだから。

 MVPは勿論、猪を一撃で仕留めたゴブで彼が今回の盛り上げ役だ。
 村長ニコラスが誇らしそうに、蝙蝠族の職人がわざわざ用意してくれた正装を身につけたゴブの肩を叩いていた。

「よくやったぞゴブ。お前さんが、まさか魔王様に認められる日がくるだなんて思いもしなかったぞ……!」

「へへへ、そりゃ俺もだよじっちゃん。別に大した事をした覚えはないけど、喜んでもいいんだよな?」

 未だに自身の凄さを自覚していないゴブに皆、どうせ冗談だろうと笑っている。
 だけどゴブは馬鹿だ、本当に無自覚そうな顔をしている。

 日頃の行いが良いのに慣れたのが原因か、自身の優しさをまったく自覚していない。

 しかし、あれほどの上級魔物を相手にして撃退までしたというのに平然といられるとは。

「ハハハハ!  肉じゃ!  もっと肉を運ぶのじゃよ!」

「魔王様、食べすぎなの。ちょっとは遠慮して」

 地面にひかれた布の上で、肉を豪快に頬張るサリエルの周囲には様々な料理が並べられていた。
 サリエルの為にわざわざ、他所まで蝙蝠族やフラン達が手配して用意した最高級の食材で作られた料理たちである。

「酒もお代わり!  皆も飲みまくるのじゃぞ!」

 酒のせいで酔っているのか、それとも普段通りのテンションなのかは分からない状態のサリエル。

 彼女の食事の邪魔にならない為、少し離れた所へと座って村の中心部で燃え上がる炎を眺める。

 そこでちょうど皿に肉をのせたノエルが目の前を通り過ぎそうとしている。

「や、ノエル。調子はどう?」

「ひっ……!?」

 常に警戒していたのか、声をかけただけで驚いた拍子にノエルは肉を皿から落としてしまった。

「あ」

 足元に落ちてしまった肉をノエルは血の気が引いたかのように見下ろしていた。

 そこには感情は無い、完全なる虚無だけが顔に浮かんできている。

「ごめん、僕のでよかったら……」

 自分にも責任があるので、肉が多くのせられた皿をノエルの前に差しだす。
 別にお腹も空いていないし、全部は食べられないかもしれないので丁度いい。

 ノエルは涙目で差しだされた肉をマジマジと凝視しながら、お腹を小さく鳴らした。

「あ、ありがとうございます……!」

 躊躇いつつノエルは皿を受け取ってくれた。
 ゴブリン村の料理はどうやら人族の口にはあまり合わないらしい。
 あまり調味料を使用しないせいなのか、確かに肉類は焼いただけでは獣臭さが解消できない。

 それに人族の大陸には生息しない生き物ばかりを食材にしているのだ、妙な味がしてしまうのは仕方ないことだ。

 ゴブリンの体になっているので、あまり気にはしていないけど。
 ノエルには流石にキツイんだろうか、普段は無理して食べているようにも見えていた。

 料理などの分野には精通していないので、人族でも安心して食べれるよう施せる知識が僕にはないので改善の余地がない。

「そういえば、ノエルさ」

「なんでふが……?もぐもぐ」

 リスのように頰を膨らませながら返事するノエル。
 相当お腹が空いていたのだろうか、食べるペースが速い。

 小さく苦笑いしつつ、彼女に質問をする。

「ゴブリン退治の件なんだけど……その依頼主って誰なの?」

「っ!!」

 何気ない感じで質問した途端、ノエルは口に含んでいたモノを吐き出してしまった。

 驚きながらも彼女にさっそうと拭く用の布を渡す。

「依頼主っっっですか!?」

 完全に動揺を隠しきれないノエルは、顔を向けても目を泳がせながら視線を決して合わせない。

 その怪しげな行動に困惑を覚えながらも、なんの不自然もない様子で話しを続けた。

「この大陸では確かにゴブリンを毛嫌いするような種族は沢山いるし、特別なにか僕らに恨みがあって君を駆りだしたのかもしれない。強引に聞くわけじゃないけどね……その、理由を話してもらえたりしない?」

「理由もなにも、私は別に退治してこいって以外はなにも言われていませんよ……恩もあるし、断る道理が何一つありません」

 彼女自身も依頼の主な詳細をまったく聞いていない、とうい発言に違和感は特には感じとれなかった。

 生前、魔術師ギルドでの依頼で魔物の討伐などを数えきれないぐらい受注しているが、依頼主がその依頼を提出する事になった要因などはあまり追求したりしない。

 なので、彼女がゴブリン(魔物)達を理由もなく退治する事にはあまり疑問を抱いたりはしない。

「そっか、そういえばノエルはこの大陸に来てすぐ『魔族傭兵団』に保護されたんだよね。その傭兵団って、どこの所属なの?」

「……北西の魔王国、首都アルゼンですよ」

 唇を尖らせながら、緊張したような声で答えてくれたノエルの言葉に驚きを隠しきれなかった。

 北西の魔王国と言えば、魔王の中でも最狂の暴君と言われるサンダルフォンが支配する領ではないか。
 しかも首都にまで連れていかれたと言うのか?

 人族という身でありながら、よくそんな場所に足を運んで無事に生存できたものだ。

「サンダルフォン……様とは、会ったの?」

「いいえ、あんな恐ろしい方とは会っていませんよ。もし対面すれば間違いなく私は殺されています」

 それもそうだろう、と納得しながら胸を撫で下ろして安堵する。
 幸運にも、自分を匿ってくれる依頼主に助けられたのだろう。

 ならば彼女が危険を冒してまで、恩返しする理由がなんとなく分かる気がする。

「よかったよ、ノエル。こんなにも大きくなって……」

 魔の大陸は故郷と違って、とうてい安全とは言えない人族にとって地獄のような地である。
 少しでも油断をしてしまえば最悪、すぐに命を落としてしまうような場所だ。

 だけど無事に生き抜いてくれた、血の繋がった大切な妹が目の前に居る。
 これを喜ばないで何が兄なのだ。

 我慢もできず、徐々に顔を近づけながら無言でノエルを見つめる。

「あの、視線が気持ち悪いので……あまり見ないでくださいよっ!」

「……?」

 頰を赤らめながら、何を勘違いしているのかノエルは両手で胸を覆うように隠す。
 そのような反応をされれば本来なら傷ついていたところだが、気にかけたのはソコではない。

 ノエルの左腕には、包帯が巻かれていたのだ。

「その包帯、傷ついたりしたの?」

「っ!  いえ、貴方に到底は関係ない事なのでっ!  お気になさらず……ははは」

 隠すようにノエルは腕を袖から、服装の中へと入れてしまった。
 慌てる彼女をふたたび不審に思いながらも、傷ではないかと心配してしまう。

「いや……傷なら治癒魔術で治してあげるんだけど」

「だから、気にしなくてもいいんですよ!!」

 そうノエルに言うが彼女は嫌がる素振りをみせながら、物凄い勢いで首を左右に振る。
 だけど、どうしても気になるその包帯を追求せずにはいられない。

「アルフォンス!   お主に用があるのじゃが、嫌でも乗ってもらうぞ!!」

 途端、酒をガブ飲みしていたのにも関わらず平然そうな表情のサリエルが割り込んできた。
 普段のテンションだったらしい。
 一方、サリエルの傀儡であるフランが何故かうつ伏せにダウンしている。

 それはさておき、一体どのような要求をしてくるのだろうか?
 サリエルなら、くだらない命令をするのは目に見えている。

 あまり真剣に聞かなくても、なんの問題もない。
 適当に受け流さない程度に耳を傾けてよう。

「はい、なんでしょうかサリエル様?」

 ニッコリと笑顔で、膝を地につかせながら問う。

「気持ちの悪い笑みを浮かべるお主に!
 この『四強帝魔王』サリエルが決闘を挑もうぞ!」



 サリエルは突如と感じたことのない魔力と非常に似ている物質を掌へと収束させると、巨大な鎌を形成。
 器用な手つきで鎌を回転させてから、肩に担いだ。


可愛らしくウィンクをしながらサリエルは、返すようにニッコリと健気に笑ってみせた。

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