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勇者に見捨てられて死んだ大賢者はゴブリンに転生したので、魔王の配下になって魔族の軍勢を率いる大賢者になる

英雄譚

第23話 「悪鬼王《エビルゴブリンロード》」

 

「満身創痍の状態に陥ろうと、強者である我らエビルゴブリンに挑み続けるその不屈の闘志。些か蝙蝠族である貴様らを舐めていたようだ」

 この場にやっとの事でその姿を現したエビルゴブリンの統率者、悪鬼王からは信じられない程の妖気が渦巻いていた。

 マズイ、一言で敵を表現するならしっくりくる言葉だ。
『怠惰』との意識を統合し大賢者化した現在のアルフォンスの視野には、分析不可能な未知数の生物が闘争心を剥き出しにして映っている。

 分析不可能、今まで魔族や魔物などを数知れず研究してきたアルフォンスだったが、最も歴史が浅く情報量が圧倒的に少ないエビルゴブリンの生態や習性には一度も手をつけたことがない。
 それに千年も前に滅んだ種がまさか、こんな形で復活するだなんて思いもしなかっただろう。

 ならば先手必勝。
 有り余るぐらいの大賢者の魔力器を解放しながら魔術を発動させた。

 片手を悪鬼王にかざしながら、使用できる元素の中でも得意な『風魔法』を選ぶ。

「暴風波【ストルム・キューマ】!!」

 頑丈な岩であろうと関係に破壊できる威力を持つ魔力に包まれた強風を、アルフォンスは標的にめがけて放ってみせた。
 あくまで敵がどれだけ強いのか、様子見をする為の攻撃である。

 この技が直撃して致命傷、あるいは絶命をすればいいものの威圧感からして無理だろう。
 それだけではない、回避される可能性もある。

 そう予測している間に広範囲で高威力の強風が悪鬼王へと波のように押し寄せ、眼球であろうと捉えられるぐらいの空間の歪みを確認しながらも標的は避ける事をしなかった。

(避けないのか……?)

 瞬間、アルフォンスの魔法『爆風波』は動こうとしない悪鬼王を容赦なく飲み込んだ。
 嵐が周囲のエビルゴブリンを巻き込みながら吹き荒れ、直撃を食らった悪鬼王のあらゆる皮膚を切り刻んでいた。

 効いているのだろうか……?
 蝙蝠族の陣営の誰もが不安になりながら眺めているが、数秒後に風の波は飲み込んでいた悪鬼王を過ぎ通る。

「なっ、アルフォンス様の魔術が!?」

 一同は驚愕してしまう。
 流石のアルフォンスですら、悠然を保てずに口を開いた。

『爆風波』が悪鬼王を通り過ぎたのだが、勢いは未だに途絶えず侵攻してくるエビルゴブリン軍を飲み込みながら、最終的には爆散。

「あれほどの技を直接、食いながら立ってやがる!」

 エビルゴブリンの陣地へと大きな被害をもたらす程の魔法を悪鬼王はモロに受けた筈。

 だが、その身には切り刻まれた跡が無数に残っているが、ダメージを受けたには到底思えないぐらい平然な様子でこちらを見据えていた。

 どうしてなのか?
 疑問が頭に浮かんだ途端、悪鬼王の受けた傷から煙が唐突に吹きだし始める。
 肉と肉が糸のように繋がり、交じり、次第に傷は塞がれていくかのように治癒してしまった。

「自動治癒の加護……」

 蝙蝠族の一人、若そうな見た目をした青年がそう口に漏らした。

「あれを知っているのかい?」

 戦いの中で会話をするのは多少危険なのは承知しているが、万が一のために聞いてみる。

「ええ、なんせ北西の魔王国を治めている『魔王サンダルフォン』様が過去に創造した唯一無二の能力ですので、存知ていない者は居ないかと」

 サンダルフォン、生前なんども聞いたことのある名だ。
 魔の大陸を統治する『四強帝魔王』の中で初代魔王の血統を継いだ唯一の魔王である。

 その名は四人もいる魔王の中でも最も有名で、人族や魔族であろうと気に入らなければ容赦なく排除してしまうような危険人物だ。
 なにより『暴君』という呼び名を人族の間でも轟かせるぐらいの気分屋な性格であり、もし交戦することがあれば勝つことはまず不可能だろう。

「待って……じゃあ、それをどうしてエビルゴブリンロードが使用なんかしているんだ?  考えてみれば、おかしいよね?」
「はい、あの方がこんな奴らに能力を伝授させるだなんて到底思えません」

 ならば、奴があの能力を持つこと自体おかしい。
 発現するならともかく自動的に回復することはこの世界にとって、神に等しい存在でしか得られない万物を揺るがすような代物である。

 必然的に受けた傷は、通常人が進む運命の平行線を規則的に安定させる一つの役割を担っているが。
 それを阻害するのが自動治癒という不規則な能力である。

 本来なら深手を負い、死ぬ運命にあるはずなのに自動治癒によって命を取り留める。
 それだけのことで、この世界の運命は予想だしない方向へと大きく変化してしまう。

 他人に回復されるのなら問題はないが、創世に存在しなかった能力はこの世界の境界でしかその居場所を持てないようになっている。

「ひとまず、考えるのは後にしよう。敵を倒すのが先だ……………っ!」

 彼にそう告げようとした途端、体内の魔力が荒れ狂うような感覚が唐突に襲いかかってきた。
 胸に手をあてながら安定させようと必死に制御しようとするが、そうしている間に悪鬼王が片手で握っていた槍のような形状をした巨大な武器を振り上げた。

 瞬間、大量の魔力が吸われてしまう。

 アルフォンスだけでは無い、ほぼ空っぽ当然のラフレーシア達の魔力まで吸収されていっている。
 命の危険を察知し、吸収されているのにも関わらずアルフォンスは二人に自身の膨大な量の魔力を分けるのであった。

「ほう……ゴブリンでありながらも、その異常なまでの魔力総量。我に傷を負わせた理由も納得できる」

 そう言いながら、吸収を中断して悪鬼王は槍を下ろした。

「聞こう、ゴブリンよ。貴様の名はなんだ?」

 突然の問いを投げかけられ、大量の汗を流しながらアルフォンスは悪鬼王を睨みつけた。

「……断る」

 まさか、四分の一もの魔力を吸収されるだなんて予想しなかったアルフォンスは、自身がどれだけ敵を舐めていたのかを後悔していた。
 魔王とその側近以外にも、ここまでの強者ぶりを披露してくる者がいたとは。

 抑えきれない感情のせいで震えながらもアルフォンスは悪鬼王へと一歩踏み出してみせた。

「まあいい。名を聞いたところで貴様は我の手によって死に、いずれ忘れさられる者でしか過ぎん」

 呆れながら悪鬼王は槍を地面に突き刺し、赤い魔法陣を生み出す。
 そのまま先程アルフォンス達から吸収した膨大な魔力を魔法陣へと注ぎ込みながら、悪鬼王の槍から次第に魔力が膨らみ上がる。

 限界を迎えたその時、悪鬼王を中心に大地が割れ、地上の隙間という隙間から地獄を連想させられる妖気が溢れだした。

 それが悪鬼王の頭上へと一つに集結していき、槍が地面から抜かれた瞬間。

「無限の槍【インフィニティ・フルム】!!」

 悪鬼王が叫ぶとともに魔力が物質へと変換され、生成されたのは空を覆うぐらいの無数もの槍。
 それが全て、悪鬼王の意思に従いアルフォンス達のいる場所へと向けられる。

「魔力が有り余る限り、槍が降り止むことは無い。それが空を覆い、避けることはもはや不可能。何も行動できぬまま我の技で串刺しとなれ!」

 悪鬼王は片手だけで槍を全て操作し、宣告通りに空中に停止していた槍をアルフォンス達にめがけて高速で飛ばすのであった。

 雨のように降り注ぐ凶器を見上げながら一同は絶望に包まれてしまう。
 一方のアルフォンスでさえ震え続けたまま、上空へと視線を移動させた。

 言葉では表せられない感情によって、胸が高鳴っていた。


 どうして、こんなにも自分自身がーー









 ーー楽しんでいるのだろうか?


 アルフォンスは片手を横に振る。
 たった一度のその行動が空から迫り来る槍を全て、音も無く消滅させてしまう。

「なっ!  我の槍が!?」

 完全に勝利を確信していた悪鬼王が絶句してしまう。

「………ふん、その程度の力で大賢者化した彼に勝てると思っているのかい?  思い上がるなよ」


 悪鬼王が僅かに歪めた顔を拝見しながら、アルフォンスは恐ろしげな笑みを浮かべるのであった。

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