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勇者に見捨てられて死んだ大賢者はゴブリンに転生したので、魔王の配下になって魔族の軍勢を率いる大賢者になる

英雄譚

第18話 「出陣」

 

 時々、予想だにしない展開は必ず訪れてくるようだ。
 周囲を取り囲む弓や鉄剣、鎧を装備する蝙蝠族の集団に両手を低くあげる。

 今まさに僕たちは、この国の兵士たちによって包囲されてしまっていた。

「……おい、これは一体なんのマネだ!  どうして私たちに武器を向けるんだ!」

 この状況に疑問を抱いたラフレーシアが口を開き、目の前にいる蝙蝠族の一人に怒声を浴びせる。
 どうやら彼女自身も、この事について知らされていないようだ。

「姫、これは陛下の命令であります。たとえ貴女という人物であろうと我々は陛下に従います」

 鎧を着た蝙蝠族の若い兵士が槍をこちらに突きつけながら、ラフレーシアを宥めようとする。
 だがこの状況を安易に受け入れないラフレーシアが手を振り上げ、兵士にめがけて振り下ろした。

 途端、衝撃波が発生して目の前にいる兵士の槍を吹き飛ばしてしまう。
 そのままラフレーシアは兵士との距離を詰め、強い力で胸倉を掴む。

「んな事はどうでもいいんだよっ!  私が聞きたいのは、無防備も当然のアルフォンス様にどうして武器を突きつけたかだ!」
「単純です。そこのゴブリンがこの国に足を運んだと同時にエビルゴブリンが唐突に進軍してきたからです」
「なっ!?  まさか、父上はアルフォンス様が敵の使者なのかもしれないと何の根拠もなく疑っているのか!」

 ラフレーシアの言葉に兵士は首を振った。

「根拠もなにも、そいつがこの国に訪れて間も無くエビルゴブリンが発生したと何度言わせるのですか?  これは既に決定事項であり、そこに居るゴブリンは我々が捕えさせて頂きます」

 敵意を剥き出しにする兵士たちに対して、ラフレーシアは鞘に収めてある剣の柄に触れた。
 唾を飲み込みながら、僕自身も魔力を解き放ち敵の攻撃に備える。
 この人数なら例えラフレーシア一人であろうと、いとも容易く切り抜けられるが用心に越したことはない。

 ーー戦うか?

「……!」

 いままさに争いの火蓋が切られようとしたその直前、考え直す自分がいた。
 血走った目で飛び込もうとするラフレーシアを上げた手で制する。

「アルフォンス様?」
「ラフレーシア、武器を収めてくれ。僕たちがこの国に来た理由はあくまで国交を結ぶため、争いにくる為じゃない」
「しかし!  此奴はアルフォンス様に無礼を働こうとしているのです、到底許しえない行為です!」

 過大評価しすぎるラフレーシアに何度言い聞かせた筈なのだが、僕はそこまで大層な人物ではない。
 それに、この国にいる以上は相手の法律に従わなければならない。
 同盟の話を持って来た側なら尚更だ。

「自分の意志でだけ動いて、迷惑になったらそれこそ無礼だよ。だから命令だ、平常心を保ってくれ」

 と言いつつ、この状況で混乱しているのは僕も同じだ。
 確かにエビルゴブリンの軍が発生した日と僕がこの国に来た日が被ってしまっているため疑うのは無理もない。

 もしここで抵抗するものなら、信用を一生失うことになるだろう。
 ならば誤解の改善は話し合いで済ませるべきだ。

「分かった、貴方たちの言うとおりにします。だけど勘違いしないで欲しい、僕は貴方たちの敵ではない」
「お前の意志を聞くつもりは無い。大人しく同行してくれれば乱暴はしない。しかし、お前の罪を明確に判断した場合は、処刑は免れないだろう」

 それだけ告げると、数人もの兵士によって強引に取り押さえられてしまう。
 途中、味方の蝙蝠族とラフレーシアが割って入ってこようとしたのだが、先程の命令を繰り返した。
 納得いかない様子でラフレーシアが拳を握りしめたが、なんとか説得。

「ーーラフレーシア、そっちは頼んだよ」

 拘束された僕は、連れていかれる直前に振り返ってラフレーシアにそう告げた。
 彼女に伝わったのかは分からない、だけど可能性に賭けよう。

 この状況を打開するには、この国を守らなければならないんだ。
 そう、今の僕たちに必要なのは言葉ではなく行動での証明だ。


 連れて行かれると同時に、ラフレーシアが真剣な表情で頷いてくれるのが見えた。





 ーーー




 城内の地下に連れていかれた僕は、そこにある牢屋に幽閉されてしまった。
 両手が鎖で繋げられ、牢屋の中にはケインに預けた筈のゴブリン達の姿があった。

 どうやら彼らも捕まってしまったらしいが、誰も傷を負っていない。

「アルフォンス様!」
「アルフォンス様ぁ!」

 不安そうに訴えてくるゴブリン達を見て、なんだか申し訳ない気分になってしまう。
 その中、村長ニコラスの甥である好青年が皆を宥めてくれていた。

 彼の名前は『アレス』。
 ゴブリン村の戦士の一人であり、努力家の優しい男である。
 普段は狩りなどの仕事を請け負う彼だが、たまには村の子供たちの遊び相手になったり、とにかく微笑ましくて頼り甲斐のある戦士だ。

「コラ、あまり騒がしくしていると流石のアルフォンス様でさえお怒りになるぞ……静かにするんだ」
「はは、大丈夫だよアレス君。そのぐらいじゃ怒ったりはしない」

 若い連中の背中をさすったり、泣きそうな女の子の頭を撫でたりしているアレスの隣に並ぶように座る。

「……アレス君、ちょっと耳をかしてくれないか?  他のみんなにも伝えるから、看守の耳に届かないように話すよ」

 人差し指を唇に当てながら、鉄格子の外にいるであろう看守に視線を向けた。
 察してくれたゴブリン達が一斉に頷き、これから口にする作戦を看守に聞こえないように、数人が丁度いいぐらいの声で世間話をする。

 おかげで、アレスに伝えた作戦がゴブリン達の声によって看守に漏れたりはしなかった。

「なるほど……それなら蝙蝠族の王もお認めになりますね」
「うん。あまり難しい作戦ではないけど、気を抜いたりしたら失敗してしまうかもしれないから慎重にいくよ。いいね?」

 あえて「了解!」と声には出さず、アレスは額に手をあてて頷いた。

「ーーそれじゃ、作戦実行だ」





 ーーー





 エビルゴブリンが進軍してくるとの報告が王に伝わって間も無く、応戦するための戦力をかき集めていた。

 報告によるとエビルゴブリンは現在地である山岳地帯から北東のヴェリル森林を流れる河川に沿って移動しながら、かなり大規模な軍で侵攻してきているらしい。
 

 そんな軍の兵士は。
 どこで調達したのかが分からないぐらい上品な武具で全員が武装。
 前線には使い魔である四足歩行の魔物に乗るエビルゴブリンライダーの姿、巨人にも匹敵する巨躯の武装したエビルゴブリンが数匹、後方には十分と言っていいぐらいの遠距離専門の弓兵。
 総50000体を超えるだろう。

 まるで事前に備えていたかのように、準備があまりにも整いすぎていた。
 だが、軍を統括している者の姿はまだ確認していない。

 今ある情報を蝙蝠族の戦士達や兵士達に伝達。
 岩山を降りてエビルゴブリンの侵攻するであろう道筋に数万もの兵士や戦士を布陣。
 最前線には蝙蝠族随一の戦力を誇る精鋭部隊が配置され、その統率者にはジークとラフレーシアが請け負うことになった。

 ゴブリンの為に国王に反抗した身である二人なのだが、国の存亡に関わるなら話は変わってくる。
 そんな故郷を見捨ててしまう程、二人は落ちぶれていないし誇りも残っている。

 なによりラフレーシアは、別れ際にアルフォンスが口にした言葉の意図を理解し実行に移すため最前線に立つことにしたのだ。

 そんな彼女の思想には、アルフォンスと父であるエルマートンが手を交えながら共に戦う姿が浮かんでいた。
 それを叶えるためにも、ここを守りきらなければならない。

「ーー来たか」

 前方から約数キロ先に進軍してくる軍を捕捉すると、ラフレーシアは昔から愛用していた狂剣【モラルタ】を鞘から引き抜き、戦場に向かって出陣した。

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