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勇者に見捨てられて死んだ大賢者はゴブリンに転生したので、魔王の配下になって魔族の軍勢を率いる大賢者になる

英雄譚

第17話 「侵入者の正体」

 

 蝙蝠族の王、エルマートンの許可を得て僕たちは城内に一時滞在することになった。
 だけど時間に猶予はない。

 ここで協力関係を確立しなければ後先、困難になってしまうだろう。
 そもそも、あの王はゴブリンが嫌いなんだという理由で同盟を頑なに否定した。

 その後、その真意を聞くため応接室で王と再び会話をしたのが、やはり考えを曲げる訳にもいかないらしい。
 それだけではない、唐突にエルマートンはこんな事を訪ねてきた。

「一つ問いたい。その同盟とやらは魔王サリエル様の命なのか?  それとも貴様個人の提案なのか。どっちなんじゃ?」
「個人です……国交を結ぶことによって互いが好都合になると判断して、ここまで足を運んできました。それに『魔線戦争』も間近、勝利するにはまず魔王さまの戦力である我々には共有が必要かと」
「戦力?  ゴブリンが我々と同等の立場にあるとでも思っておるのか?」

 冷たい視線を向けられるが、引き下がる訳にはいかない。
 それに、魔王サリエルが本格的にもゴブリンもブラッティア陣営の戦力に加えると宣言していたし、ゴブリンも戦力内なのは事実である。

 それを取り敢えず説明しておく、だがエルマートンは難しい顔をしたまま。
 理由も言わずに、どうしても同盟の事については拒否をしてくる。

「ジークとラフレーシアは儂の息子であり、娘。アイツらが貴様を認めた理由が何となく解る。貴様は愚かではないが、同時にうつけ者じゃ」
「へ?  えっと….僕がですが?」

 落ち着いて茶を啜りながら、エルマートンは厳しめな口調で指摘してきた。

「素直なのは良いことじゃが、もし貴様が先ほどの儂の質問に『魔王様の命である』と告げてさえいれば考えていたものの」
「いえ……魔王様の権力を借りて、嘘偽りを口にするだなんて流石に無礼ですよ」

 あの魔王、気さくそうな性格をしているけど同時に短気そうだよね。

「だが、配下の貴様の考案ぐらいは御許しになるだろう?」
「さぁ……あまり交流が無いので何とも言えせん」

 魔王サリエルの配下になってから、もうそろそろ一ヶ月ぐらいが経過する。
 だけど大まかな仕事内容、どのように振る舞えばいいのかさえの相談も無し、配下に加った実感がまったくしない。

「まあいい話を戻すが。我がどうして貴様と組むのを拒絶するのか、分かるか?」

 唐突にエルマートンから切り出してきた。
 だが無論、この僕では答えられる筈がない。

 そうやって俯いて考えていると、エルマートンは自分の席から立ち上がって扉の方へと歩んでいってしまう。

 途中立ち止まり、彼は一言だけ放つ。

「儂はゴブリンが嫌いだからじゃ」

 その言葉には辛辣な何かが含まれているような気がしたのだが、声はどこか悲しいようにも聞こえた。
 不本意にも捉えられるが、気のせいでは無いのは確かである。

 エルマートンがゴブリンと何があったのかは知らないが、考えてみると蝙蝠族にとってゴブリンは驚異ではない筈。
 直接的にエルマートン自身が被害を受けたようには見えない。

 あの王には、一体なにがあったのだろうか?




 ーーー



 城内の中庭に一人、すぐ側にある庭園の珍しい花を眺めながら考えこむ。
 現在のゴブリンならば、どの国に必要と言ってもいいぐらいの力になる思っている。

 生前、この目で見てきた人族側の騎士団や王国軍の兵士、傭兵の力などを超えるぐらい『忠信の契り』によってゴブリン達は急激に成長している。
 それだけではなく彼ら自身、僕では与えられない個人の能力さえ密かに開花させていっているようだ。

 以前リンが言っていたが、ゴブリンの中で魔術を使用できた者をいままで見たことが無い。
 だが最近、村で魔術だけに限らず魔術に似た系統の能力さえ使う者が増えていっている。

 たとえ魔力を使えなくたって中にはゴブのようにBランクの魔物を素手で倒すゴブリンだって存在しているのだ。
 やはり、それをあの王に直接見てもらって認めてもらうしかないかもしれない。
 だが、あの王ではその程度のことで同盟を承諾してくれるとは到底思えない。

 なにか、キッカケになる方法はないのか?  
 一人で試行錯誤していると、

「アルフォンス様ぁぁぁぁああ!!!」

 唐突に聞き覚えのある声で、慌てたように僕の名前を呼ぶ者に気がつく。
 見ると、忠信の契りを交わした蝙蝠族らとその先頭を走るラフレーシアが何か良からぬ表情をしていた。

「そんなに慌てて、どうかしたの?」
「大変です!   ただいま先ほど、この王国に繋がる地上の出入り口で侵入者らしき姿を確認して排除いたしました」
「侵入者……それが、どうかしたの?」

 深刻そうな雰囲気を漏らすラフレーシアたちを交互に見ながら、その表情から物語ってくる侵入者と呼ばられる『驚異』の正体が一瞬だけ頭をよぎる。

 だけどそんな筈がない、そうあってほしいと心の片隅で現実逃避をしながら覚悟を固める。
 そしてラフレーシアがこれから報告をしようとする事態に、僕は固唾を飲んだ。

「その侵入者が、単独ではないと判断した我々はさっそうと地上の岩場に身を潜めながら他に敵が居ないのかをネクロノ王国に繋がる出入り口の周辺を満遍なく捜索してきました。その結果、敵の軍勢を捕捉しました」

 額に汗を垂らしながら、震える声を必死に抑えてラフレーシアは報告を続けた。

「ーー敵はどうやらエビルゴブリンのようです」
「!?」


 予想が的中した途端、思考が急に全て遮断されるような感覚に襲われる。
 事実、目の前の光景が一瞬だけ途切れてしまい、見覚えのないビジョンが視界を覆いかぶさるように広がっていた。

 映像のようにボヤけながら流れていく。
 人々の声と姿、滲みでてくる血。
 地上を覆うほどの、人のような影。

 認めたくもない眼前の光景に頭を抱え、全てを悟ったその瞬間。
 それを全て無残に切り捨てるエビルゴブリンが現れ、僕は唇を強く噛みしめた。

 ーーまた、お前らが……!!


 かつて自分が生きていた幻想的で美しい世界。
 遠い遠い、異郷が血に塗りかえられるその瞬間を僕は思いだしていた。

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