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勇者に見捨てられて死んだ大賢者はゴブリンに転生したので、魔王の配下になって魔族の軍勢を率いる大賢者になる

英雄譚

第15話 「開始される同盟の交渉」

 

 城に辿り着くと、妙な空気が体を過ぎるような感覚がした。
 何処から漏れ出しているのかは分からないが、この空気を発している張本人が只者ではないのが確かに感じとれる。

「同胞どもよ!  我等は無事に帰還を果たす事ができた、報告のためにも父上に会わせてもらおう!」

 城の前には数十もの兵士がピリピリとした雰囲気で待ち構えていたが、先行してくれているジークの言葉で兵士達は安心したかのような表情を見せる。

「現在、我が連行しているゴブリンは族長の立場を超える存在の者。父上との対面をなさる権利があり、話を聞いて損はないと我ら一同が保証しよう」

 知性的に見えない外見からくる丁寧な口調に慣れてきた僕は、少々困ったような顔を作った。
 怪しまれない為にも、村を占領され打ち負けた捕虜の立場を演じ続けなければならない。

 顔を上げてみると、ごく当たり前かのように蝙蝠族らに侮蔑の目を注がれた。

「おい、テメェら。見せもんじゃねぇからあんまガン見してんじゃねぇぞ?  私らがして欲しい事は父上に会わせてもらい、話しを聞く以外の何でもないんだよ……!
   此処にいるゴブリンに石ッコロの一つでも投げつけてみせろ。いくら同胞だろうと私達の言葉に背いた場合は対価をキッチリ払ってもらうぞ?」

 物騒な言葉を唐突に吐き出したのは、フードを被りながらも髪を逆立たせるラフレーシアだった。
 彼女自身、交渉をする為にも僕達を王の元まで連れて行かなければならないのを存知ている。

 だが義理堅い習性のラフレーシアは、忠誠を誓う対象を侮蔑されて気分は良くないのだろう。
 だからこそ怒りを露わにしているのだ。

 それが伝わったのか、周囲の兵士らが僕達から一斉に視線を外していた。

「おい……あの方、ラフレーシア様なのでは?」
「なに?  姫様だと?」
「以前会った時より一段と美しいお姿で……!」
「そう言えば、あの話は決まったのかな……?  だって」
「断るとは聞いたぜ、だって相手がアレなんだ。仕方ないさ」

 だが、その半数はラフレーシアを見た途端に訳もわからなくザワつき始めていた。
 一体なんのコソコソ話をしているのかは見当もつかないが、特に知る理由も無いので気にはしない。

 違和感を感じながらも、兵士達が空けてくれた道を通る。
 ジーク達が同行してくれるおかげで斬りかかってくる者は誰一人として居ない。

 その前にラフレーシア達が排除してくれるだろうが、念のために魔術をいつでも使用できるよう事前に準備をする。
 前世のように予想外な展開が起きた場合に対応できるよう、用心は怠ったりはしない。

「よく帰ってきたな、儂の愛するジーク、ラフレーシアよ。長い時間を待たされたおかげで心配したぞ」

 城壁を通り抜けると、すぐ眼前の広場には立派な翼を生やした貫禄のある老人がいつの間にか待ち構えていた。
 その背後には従者が二人いる。

 瞬間、先程から感じていた重々しい空気の正体がこの老人なんだって事に気がつく。

 僕達を見るやいなや老人は目を細める。
 また侮蔑し睨みつけられてしまうのだろうと思ったのだが、老人は目を逸らした。

「……父上。また再会を果たせた事を心良く思っている所存であります」

 父上。
 その単語がジークの口から出た瞬間、口を開けてしまう自分がいた。
 あの老人が蝙蝠族の『王』。

「ふん、まあいい。それよりも、どうやら儂に客が来たようだが話は中で聞こう」

 蝙蝠族の王がそう言い残すと、僕が瞬きをすると同時にその姿を消していた。
 あまりにも一瞬だったため、何が起きたのかが理解できず驚いてしまう。

 だが一方、動じた様子を見せていないジークと蝙蝠族の面々、少し不機嫌そうなラフレーシアが互いに見合う。

「流石にゴブリン達を全員、王に会わせる訳にもいかないので。申し訳ありませんが、アルフォンス様以外の皆さんはケインの案内で控え室で待っていてください」

 縄を縛られたゴブリンの戦士達に対して、申し訳なさそうにジークがそう告げる。
 誰も反対する事はなく素直に頷いた。

 相当あの王が恐怖だったのだろうか、全員の顔が真っ青だ。

「ケイン、頼めるか?」
「お任せください。なるべく皆様が快適に過ごせるようになさいますので、若はどうかアルフォンス様をお願い致します」
「勿論だケイン。この身を焦がそうとも、アルフォンス様は我と姉のラフレーシアで守ってみせる」

 互いが納得し合うと、ケインとその他の蝙蝠族らは僕以外のゴブリンを連れて城の何処かへと向かっていった。
 それから、場に残されたのはラフレーシアとジーク、僕の三人だけだった。

 不安に思いながら、うまく事が運ぶよう願うばかりである。




 ーーー



 城はサリエルのと比べれたら少しだけ狭い方なのだが、城の裏にある宮殿と濃い魔力でしか咲かない珍しい花の庭園の数には驚かされる。

 採掘された鉱物、宝石などが城内に無数と展示されたり飾られたりしていて、外の殺風景な街と比べたら絢爛なものだった。
 肖像画はあまり無いが十分とも言える豪勢な場所である。

 そんな僕が案内された場所は、魔王サリエルと違って玉座のある『王の間』では無かった。
 場所は会議室のような場所。

 そこには既に数人もの蝙蝠族とその王である『エルマートン・ハーマン』が席についていた。
 どうやら大体の状況は察してくれているらしい。
 だがそれを良い方向に受け取るのにはまだ早い。


 人数分の席が用意されている、口にせずとも一つ空いていた。
 だが座ることに躊躇してしまう。
 本当に座っても良いのか?  無礼に思われないのかが心配だ。

「アルフォンス様、こちらにどうぞ」

 助け舟を出すように苦笑いしながらラフレーシアが椅子を引いてくれた。
 多少、恥ずかりつつ咳払いしながら黙々と座ってみせる。

「それでは、さっそく事情を聞かせてもらおうじゃないかゴブリンよ。見るからにどうやら儂らに何か用事があるようなのだが?」

 部屋に響き渡るぐらいの、威圧ある声で王エルマートンが疑問を投げかけてきた。
 周囲も同調するように様々な質問を繰り出すが、僕の目的はただ一つである。

「ゴブリン族と蝙蝠族の同盟の交渉を行うため、代表してこの場に足を運んだ魔王の配下『アルフォンス・ブラッティア』であります」

 魔王のファミリーネームと『配下』という単語を口にした途端、この場にいる蝙蝠族らがザワつき始めた。

「魔王様の配下ですと!  何故そのような人物がゴブリンなんかに?」
「にわかに信じ難い話だ……」
「都合よく配下を偽っているのではないか?」

  交渉の事より、どうやら魔王の配下という言葉に周囲は敏感に反応したらしい。
 流石に威圧あるエルマートンも額に汗を垂らしながら目を見開いている。

「言葉でなら何度でも嘘は吐ける。なにか証拠になる物は無いのか?」

 よしきた、それを待っていました!

「はい、こちらがサリエル様の配下に属している証であります」

 サリエルの配下になる時、耳裏に刻まれた黒くて気味の悪い形をした『ブラッティアの紋章』をみせる。
 紋章には微かにサリエルの魔力が流れている為、見た者にはサリエルが感じとれるような仕組みになっている。

「ふむ、どうやら嘘偽りを口にしてなさそうだ。なら貴様の話とやらを聞こうじゃないか」

 納得してくれたのか、エルマートンは真剣に耳を傾けてながら口を閉ざしてくれた。
 他の蝙蝠族らも同様、おどおどした様子で信じてくれたのか話を聞いてくれるらしい。

 さて、同盟の交渉は今ここで開始された。

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