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勇者に見捨てられて死んだ大賢者はゴブリンに転生したので、魔王の配下になって魔族の軍勢を率いる大賢者になる

英雄譚

第9話 「運命に導かれて」

 


 数日前、魔王国『ヴラッティア』の首都サリエルにて。

 配下になるための契約時に、サリエルはもう一つのある条件を僕に言い渡してきた。

『魔の大陸戦争に備えるための育成?  なんでしょうか、それ』

『ふふふ、お主は賢いのじゃが噛み砕いて言おうぞ!  この大陸で時期に勃発するであろう四強帝魔王同士の戦争があるのじゃ!』
『……はい?』

『100年に一度だけ開催される恒例の行事でな~。戦力拡大のためにも魔王の支配下にある領土、民の一部をかけて四国の魔王軍同士がぶつかりあって、最後まで優勢を保った最強の国を決めるのじゃよ』

『……えっと、もしかしてそれが理由でゴブリン族を戦力にできるよう育成しろと?』

『そうそう、なんせ最も劣勢に陥った場合の魔王国は他国に牽制され、領地の一部を譲渡しなければならなくなる。そうなった場合は余だけではない、お主らも迷惑じゃろ?』

『まぁ、確かにそうなりますね』

『ということでもう一つの条件はできる範囲でいい、時間があれば我の支配下にある魔族どもの育成に励んでくれたまえ!  以上!』

『以上って、まだちゃんとした詳細とか……』

『それはお主に全部任せるとしようぞ!  ホラ、さっさと行くのじゃっ!』

 玉座の間を、尻に命中した魔王の蹴りで蹴り出されてしまう。



 ということがあって、他国の軍に匹敵するためのゴブリン族の育成を任されてしまった。
 しなければ配下の役割を解雇され魔王国から僕を追放する、との事らしい。
 責任重大だ、どうしてこうもこの世界の人間ってほとんど僕に丸投げするんだろうか。

 そろそろ他の計画にも回ってくれそうな人物を使役するべきだろう。

「それでは、アルフォンス様。お手ほどきの方をお願いします!」
「こちらも準備はいつでも!」
「おっしゃ!  お前らアルフォンスさんに一発ぶち込むぞ!」

「「オォォォォっ!!!!」」

 騒がしく四方から僕を囲むジークとラフレーシア、ゴブにゴブリン族と蝙蝠族の戦士たちである。
 非力と魔王に罵られた此奴らを鍛えるため、仕事に暇を持て余したゴブリンや蝙蝠を森の中にある広場へと集結させた。

 なにもない更地である。
 いつかここで訓練所のようなドーム状の建物を建設するのもいいかもしれない。
 あとは武具や防具の調達、薬、食料。
 まだ資源などは充実していないが、理想が膨らんでいく。
 後回しにした方がいいかもしれない。

 さて、仕事の悩みは一旦だけ忘れて鍛錬を始めるとするか。

「これは、君たちの実力の向上を図った重要な訓練であり演習だから手加減する必要はない。全力で僕を殺す気でかかってくるんだ。だけどもし疲労と怪我で倒れるようなことがあったり、辞めたい場合は強要する気はない。だけど訓練の邪魔になるから即座に帰ってもらう。いいね?」
「「はい!!!」」

 一斉に四方から元気のある声が返ってきた。
 戦闘力を上昇するための指導はあまり得意ではない。ゴブリン族らや蝙蝠族らも同様で、教えるのが苦手らしい。

 なんやかんや、仕方ないのでこの村でも最も実力があるであろう僕が直々に鍛えることになった。
 だが、魔術以外の知識は疎い。
 まあいい、魔族の場合は頭で覚えさせるよりかは体で覚えさせた方がよりよく伸びるイメージがある。
 ひとまず、それでいこう。

「それでは、開始!」

 ブン!!

 と、瞬きをした途端に頰を何かがかすめる。
 驚きながらも瞬時に振りかえり確認すると、ラフレーシアが背後で剣を振りおろしていた。

 えっ、ちょ。

「アルフォンスさん覚悟だぁ!!」

 ラフレーシアに気を取られていたせいか一瞬だけ反応が遅れてしまうも、目を離した隙に飛びかかってきたゴブに気がつく。

 その両手にはいつもながらの棍棒が握られている。
 重量のある武器は振るう速さを鈍くしたり、動きを硬直させたりとデメリットが多いが。

 しかし、ゴブの振るう速度はそうではなかった。
 速っ!!

「っぶない!?」

 ギリギリのところで回避するのに成功する。
 しかし、先ほどまで立っていた地面がゴブの棍棒によって粉々に砕け散ってしまう。

 ひぇぇ、と恐ろしく思いながら声を漏らす。
 ゴブ、あんなにも小柄なくせしてなんて威力の攻撃を繰り出しているんだか……。

 まあ、殺す気で来いと命令したのは僕だが、まさかあんな本気で脳天をぶち破りにくるだなんで思いもしなかった。
 ていうかゴブの奴、こんなに強かったか?  と疑問が生じる。

「いまだ!!」

 と、ジークが戦士たちに指示をだし、地面を蹴る。
 すぐさま僕との間合いを詰めてきたジークは、槍で突いてくる姿勢を作った。

 だが、その前に【爆風弾】で槍へと狙いを定める。

「【水黒霧】」

 途端、ジークは水魔法を使用。
 彼を中心に黒い霧が蔓延し、視界を妨げられてしまう。
 だが位置だけは確認できる、と影が丸見えのジークにめがけて【爆風弾】を射出。
 予想通りに命中すると凝縮されていた風が大爆発を起こし、周囲に蔓延していた霧もろともジークを吹き飛ばした。

「!?」

 だが、霧が晴れると先ほどまでジークの背後で待機していたゴブリン族や蝙蝠族の戦士たちが、魔力の塊のような物体を僕の方へと向けていた。
 それも風、火、土、水の四元素である。
 それも魔力適応が低い、魔術にビビるゴブリンが使用している!?

 ゴブの妹リンは確かゴブリンに使える奴は居ないと言っていたはず。
 ……どういうことだ?

 しかし魔力操作がまだ不慣れな術者たちが難しそうな顔をしている。

 ならば対処は簡単だ。
 まさか魔術師に魔術を使用するなんて、分析力がまだ疎い証拠だ。

 それぞれが攻撃魔術を放ったその瞬間、大賢者の能力を一瞬だけ発動させる。

【魔力接触】で飛んでくる魔力に触れ。
【魔力分解】で魔力によって形成された塊を崩す。

 その二つの能力を統合させ【原理崩壊】を習得。

 まとめて自分にめがけて飛んでくる魔法に接触し【原理崩壊】で形を崩壊させる。
 そのまま戦士達の放った魔力の塊を消滅させてみせた。

「うぉっ!?」
「えぇぇぇ!!」

 反則だ!  と言わんばかりの表情を戦士たちに向けられる。
 悪いけど、生まれもった時から習得していた能力なので文句を言われると困る。
 と、説明したいところだけど周りの反応を伺う限りそうもいかないようだ。

 無理もない、僕自身も自分が異常だってことには気づいている。

「ほら、みんな手を止めないでっ!」

 とりあえず【爆風弾】を全員にめがけて撃ち込む。
 だが、意外にも数人に回避されるか弾かれてしまう。

 ジーク、ラフレーシア、ゴブ。
 最初から僕を翻弄していた三人は勿論、ゴブリンの一人である気の弱そうな女の子もが避け切っていた。

 おかしい……?
 先日まで戦うのが不慣れだったはずのゴブリン達の能力が格段に変化している感覚だ。

 まるで別人かのように強くなっている。
 ゴブリン達だけではない、ジークもラフレーシアもまるで前まで瞬殺されていたのが嘘かのように動きが変化している。
 ゴブは筋力、ジークは耐久力、ラフレーシアは移動速度だけではなく全ての能力が上昇している。

(やばい、これは手加減していると本当に殺されてしまう……)

 前のように油断できないのは確かだ。
 ならばある程度、本気を出さなければならない。

「流石はアルフォンス様、お強いこと……」

 ラフレーシアが頰を染めながら言う。
 その横に並んでいたゴブ達も共感するように頷く。

「出会った当初から俺も驚かされてばかりだな。ちょっぴりは俺も驚かせなきゃな!」

 と自信満々に言うゴブ。
 大丈夫、コッチの方はもう疲れるぐらい驚いているので。

「煽ててもなにも出ないよ?  さあ、話は後にして続けるよ!」
「はは、バレたか。まあ最初からそのつもりだけどな!」
「私たちも頑張りましょ、若!」
「当然だ、アルフォンス様に認められるまで戦いは続くのだ!」

 いつも通りの調子でむかってくる一行を見て、嬉しさで思わず笑みをこぼしてしまう。
 これなら、苦労することなく鍛える甲斐がありそうだ。


 それから数時間後。
 やっとのことでラフレーシアの攻撃が僕にダメージを負わせることが出来たので、訓練を終了させることにした。

 まず、今回の訓練で疑問に思ったことを村長ニコラスに相談したところ、どうやらゴブ達の戦闘力が格段に上昇した理由が僕にあるらしい。
 心から忠誠を誓い、永遠に仕えると決意した対象に契約した者だけのみに効果が現れる。

 その効果条件が、忠誠を誓った主人の信頼を得ること。
 さらに、契約を交わした主人の力が強大であるほど効果が大きく変化する。

 これを『忠信の契り』と呼ぶらしい。

 つまり僕が強くなれば強くなる程、信頼を置く仲間はさらなる強力な力を得る、ということか。
 なるほど……だから魔王は玉座の間でラフレーシア達にあんな事を聞いていたのか。

『 我々、魔族の忠誠がどのような意味があって、どのぐらい重要なのかはわかっておるよな?』

 なら納得がいくはずだ。
 でなければ、あそこまで彼らが急に成長できるはずもない。

「アルフォンス様、牢に幽閉した人族の雌が目覚めました。いかが致しましょうか?」

 村の民家を改装するための計画を、この村の大工である『ゴブロウ』と話している最中に、執事服を着た蝙蝠族『ケイン』が影から突然報告してきた。

 思わず驚いてしまい、情けない声を出してしまう。
 どうしてこう……存在感を放ちながら声をかけてこないのだろうこの人。

 そういえば急に村に侵入してきた、武装をした格好の少女がいたような。
 昨日のことなのに、うっかり忘れるところだった。

 少女は確か村にきては暴走を始めて、ドジにも躓いたせいで頭を打って気を失ってしまったんだよね。
 なにを見せられているのだろうって一瞬だけ困惑してしまったが、村のみんなと話し合って気絶した少女を村の中央にある牢屋で寝かせることにした。
 目を覚ましてまた急に暴れる危険性があるので牢屋に閉じ込める他なかった。

 あれから一日経過するが、鼻息を立てるばかりで目を覚まそうとしない。

 だが、ケインの案内で牢屋へとたどり着くと、そこには用意した食事を豪快にほうばる少女がいた。

 ちょうど串に刺さった肉を食べ終えたところで、少女は鉄格子越しにいる僕と目をが合う。

「………あ」

 腰まで伸びる黒いロングヘアー、緑にも近い水色の透き通るような柔らかな瞳。
 まだ未熟な幼い少女のようだが、どこか大人のような甘い雰囲気を漂わせる美しい顔立ちをしていた。

 そんな彼女を見た瞬間に、心底の何かが弾けるような感覚がした。
 兜を被っていたせいで素顔をあまりよく確認出来なかったが、彼女の姿と容姿を目の当たりにして脳裏にある面影が浮かぶ。

 その面影はこの少女と非常に似ている。
 自分を何処までも追いかけようとーーー

 確信した瞬間、僕は少女の名を口にしていた。

「……ノエル?」

 ずっと前。
 僕が大賢者として冒険に出た時に、それを追うようについてきた妹のノエルがそこにいた。

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