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勇者に見捨てられて死んだ大賢者はゴブリンに転生したので、魔王の配下になって魔族の軍勢を率いる大賢者になる

英雄譚

第8話 「ポンコツ女冒険者」

 

 あれから五日間の時が流れた。

 ずいぶんと賑やかになったゴブリン村で、蝙蝠族とゴブリン族の共同作業によって焼かれてしまった村は徐々にその姿を取り戻していった。

 最初は他種族でいがみ合うかを心配したものの、互いがしっかり協力しているところを見ると、僕の知らない間どうやら影でこっそり仲直りをしたらしい。
 特に蝙蝠族の姫であるラフレーシアとゴブリンの村長であるニコラスが真剣にこの一帯をどうすべきか話合っている。

 ゴブリン族には建築力がないが力仕事が得意。
 計画性に特化した蝙蝠族がそれを補足する。

 僕から指示せずともそれぞれの知識と力で、この村の復興を順調に進ませていた。
 そんなある日……、



「……それで、どうして僕は御神体のように祀られているのかな?」

 扉のない、石造りの建物の中に僕は座らせられていた。
 座布団の上で、しかも目の前には蝙蝠族とゴブリン族の行列ができている。

 先頭が僕を見上げるわ跪き、手を合わせてお祈りと今年の抱負を……。

「偉大なるアルフォンス様を礼拝するために設けられた礼拝堂でございます」

 ニコリと、隣で同じく座りながら待機していたニコラスが説明する。
 お茶をすすりながらだ。

「にしてもずいぶんと規模が狭いね!?」
「皆さまはアルフォンス様の守護があるからこそ、こうして安心して仕事に取り掛かることが出来るんですぞ、フホホ」

 否定は出来ない。
 なんせ行列が待ちどうしいと言わんばかりの顔で並んでいるのだ。

「私~欲しい物をお願いするの~」
「私は財力~」
「俺は力!  アルフォンス様の加護で力を貰うんだ!」

 と、ヒソヒソ話が若干聞こえる。
 尊敬の念を抱かれるのは嬉しいことだし悪い気はしないが、そこまでの期待を持たれてしまうとプレッシャーがやばい。

 並んでいる人たちの願い事とか叶えられるかは分からない、出来る事なら叶えてあげたい。

「これ、誰が提案したのかな……ニコラスさん?」
「ゴブとリン、ラフレーシア殿がですぞ」

 あぁ~……

 顔を覆いながら唸り声を漏らす。
 まさか魔族の忠誠心がここまで過剰だったなんて、思いもしなかった。

 完全に見誤ってしまった。

「我にお恵みをってか?  ふん、随分とくだらねぇ事をしてんだなぁ」
「……ん?」

 皮肉のような言葉が耳に届く。
 行列の方ではなく、近くの建物の壁に寄りかかる筋肉質な青年からだ。

 彼を見るわ、舐め腐るような表情で舌をだしながら僕を挑発してきた。

「こら!  ロイド!  アルフォンス様に向かって何を言いだすのだ!?」

 隣にいた村長ニコラスがロイドと呼ばれる生意気な青年を怒鳴りつけた。
  いまにでも噴火しそうな真っ赤な顔でだ。
 隣にいた僕でさえ、ニコラスの大声に少々驚いてしまった。

「ふん……アルフォンス様だとか魔王様の配下だとか知らねぇんだが、他所から来たゴブリンの癖して俺らを指図するのが気に入らねぇ」
「馬鹿いえ!  アルフォンス様は我らゴブリンを導くために現れた救世主なのだぞ!  だというのに貴様という奴はぁ~……」

 弱々しい体で無理に激情するニコラスの命の危機を察知し、僕はすぐさま彼の肩に手を置きながら宥めてみせた。

「しかし、命の恩人であるアルフォンス様を愚弄することは、到底許すことは……」
「いい、誰だって意見が食い違ったりすることはある。気にすることはないよ」

 少し説教気味た感じの口調で言ってしまったが、村長は納得いかないも素直に頷いてくれた。

「ーーそして、そこの君」

 ロイドの方へと振りむくと、小馬鹿にするような仕草であっかんべーをしてきた。
 途端、背中が震えるような感覚に襲われる。

 言葉が詰まり、ロイドを拒絶するような感情が徐々に湧いてきた。
 似ている、僕を見捨てていった名だけの勇者ルークに。

「……アルフォンス様?」
「ふーん、言っとくが俺はテメェの言うことを聞く義理なんかねぇからな。勝手にテメェらで蝙蝠族と仲良しごっこをやっとけ!」

 そう言い残し、そのままロイドはウザったらしい感じで立ち去っていってしまった。

 去っていく背中を見届け、不思議に安堵してしまう自分がいた。
 なにが悲しくてあんな子供当然の奴に怯えなければならないんだろう……?

 ゴブリンに転生してから数週間は経過している。
 ニコラスに現在の年や日にちを訪ねてみると、どうやら僕が死んで転生するまでそんな時間は経過していないらしい。

 ドラゴンに食われて一ヶ月後、この世界にある魔の大陸に復活した形である。
 どうせならルーク達が居ない時系列で復活したかったが、仕方のないことだ。

 そんな事を考えながら礼拝してくる人々の方へと目線を向けると、なにやら慌てた様子でゴブが走ってくる。

「アルフォンスさん!  じっちゃん!  大変だぁ!」

 たどり着くなり呂律が回らない状態でゴブは語りだした。

「に、に、にんっ!  るんだ!」
「ゴブ落ち着いて、一体なにがあったのさ?  ゆっくりでもいいから説明してみてよ」

 彼の肩を撫でながら、溢れでてくる動揺が静まるのを待つ。
 間も無く、他のゴブリンの戦士たちが駆けつけてきた。

「人族です!  武装した人族が南門から侵入してきました」
「なにっ!?」

 この場にいる人々らが次々と動揺をし始める。
 人先早く駆けつけてきたゴブも同じく、慌てた様子で僕に訴えてきた。

「アルフォンスさん、俺らじゃどうすれば良いのかが分からない!  お願いだ、手伝ってください!」
「イタタタ!?  わかったら、分かったから肩から手を離して痛い!」

 肩を掴まれ、ゴブのあまりの腕力で握り潰されそうになってしまう。

 しかし、どうしてゴブリン達がここまで動揺するか。
 人間慣れしていないのが原因なのか、それとも侵入してきた輩が強靭でタフな人族なのだからか?  分からない。
 とりあえず悪い予感しかしない。

 自分の目で確かめてみるか、とゴブリン戦士の案内で南門へと駆けつける。
 そこには、僕のアイデアである三メートルの高さ柵が建てらてれいた。
 建物などの再構築という作業があるので、まだ村周辺を全て柵で囲っているわけではない。

 余裕があれば住民全員で村を囲むための柵作りを予定している。
 それはさておき、現場にたどり着くわ目を疑ってしまう自分がいた。

 なんと、目の前には全身鎧と兜を被った小柄な少女が剣を構えていたのだからだ。
 今にでも此処から逃げ出したいのか、少女は涙目である。

「あっあっ、悪しきゴブリンの連中どもめ……!  わっわ、私が貴方がたを綺麗に浄化いたしましょっ……あ、噛んじゃった」

 少女は兜から見える顔で微かに頰を染めながら、緊迫な場面を台無しするかのように台詞をあっけなく噛んでしまう。
 鞘から抜いた剣がガタガタと震えている、とてもじゃないが戦えるようには見えない。

 と、油断してみたら結構な上級剣士だったりして?

「私が華麗に非人道的な貴方がたを、完膚なきまで制裁してみせますっ!」
「ーーは?  え、ちょっと待って!?」

 僕の知る限りウチのゴブリンはここ最近、人族となんらかのトラブルを引き起こした話は聞いていないし、そのところを管理しているニコラスから報告もない。

 まだ正確には判断できないが、この子は何かしらの誤解をしているのでは?  ぐらいだ。

 なら話合おう、と思った矢先に少女の剣が僕の耳のすぐ近くを横切る。
 みると、どうやら僕にめがけて剣を躊躇いもなく振り下ろしたらしい。

 だけど危うく外したらしい、横で少女の剣が地面に突き刺さっている。

「うぅ……どうして肝心な場面で私は……はっ!  感傷に浸っている場合じゃなかった!」

 一人で何かをブツブツと呟きながら、少女は重々しそうに地面に突き刺さった剣を抜こうとする。

「……うぅぅん!!」
「お手伝いしましょうか?」
「ハァハァ……お願いします」

 と、一応手をかす。
 少女は申し訳なさそうに頭を下げながら承諾する。
 地面に突き刺さってしまった剣を少女と僕でなんとか抜くことに成功した。

「あ、ありがっ……ありがとうございます(噛んじゃった)」
「いえいえ、容易いごようだよ」

「って!!  違うーーー!!  どうして魔族に手伝ってもらったのよ私ぃーー!」

 ん? やり取りからしててっきり少女がボケのかと思ったが、天然にも程があるよコレ。

「覚悟ぉぉぉ!!」

 少女が再び剣を振り下ろしてきたが、すぐさま反応して両手で挟むように受け止める。
 そのまま少女の剣を奪い取り、ローキック。
 少女は派手に地面へと顔面から倒れてしまう。

 小柄なためか、蹴る時にかなり軽い感覚がした。

「大丈夫なのかアルフォンスさん!?」

 呆気にとられ観戦していたゴブが訪ねてきた。

「大丈夫などころか斬られるところだったんだよ!?  てか、どうして女の子一人相手にこんな人数集まるの!」

 と、南門に集まってきた十人もの戦士たちの方を指差す。

「相手がいくら人族の雌だとしても、舐めるなと生前……」
「ボケた小さな子供なんて、別に戦わなくても追い出せばいいだけだから!」

 遠い目で何処かを見つめるゴブがなにかを語り始めたが、それを遮るように彼らに注意する。

「相手が弱い場合、多勢に無勢は禁止!  これからそれをルール項目に追加するからね、分かった?」
「はぁい、アルフォンスさんが言うなら……」

 つまらなさそうな返事をするゴブに少しだけ不安のようなものを抱いてしまうが、規則に背くことがあったら夕食抜きにすればいい。

「うぅん!  なんて非道なゴブリンなのでしょうか……」

 頭を撫でながら、少女は立ち上がる。

「「「……ぷっ!!」」」

 彼女がこちらの方を向き直ると、うっかり僕ではないゴブリン戦士たちが吹きだしてしまう。

「あ、あれ?  視界が、真っ暗にっ?  ここ、貴方がたは何処にっ!」

 少女はブンブンと首を振りながら、慌てた声で周囲を確認する。
 なにも見えないらしい、それもそうだろう。

「こ、これはどういう事なんですか!?  まさか、私の視界を遮断する妨害魔術をっ!!」

 と、アホなのか誤ったことを言い放つ天然少女。

 違う、兜がひっくり返っている。
 そう指摘したいところだが、まったく聞く耳すら持たずに少女は剣を闇雲に振っていた。

「私の鉄槌によってその身を浄化っ!  浄化っ!  ふぁぁ……!!」

 怒っているのか動揺しているのか怖いのか、感情が全然読み取れない。

 暴れる少女を尻目に、ゴブと目を合わせる。

「どうするんですかアルフォンスさん?  なんか、やべーような?」
「うん、かなり危ないよねアレ」

 少女が南門の前で剣を適当に振りまくっているせいか、狩猟をし終えて帰ってきた食料調達班が暴れる少女を見て逃げていってしまっている。

「とりあえず捕まえて大人しくさせよう」
「そんじゃ、どうやらコイツの役目のようだな!」

 と、何処から現れたのかも分からない巨大な棍棒をとりだすゴブ。
 人を一発だけでも簡単に殺せるヤツだ。

「それは論外!  誰が人を殺してもいいと言った?」

 と、強引にゴブの棍棒を下ろさせる。

「仕方ないなぁ~アルフォンスさんが言うなら」


 いやいや、仕方なくないでしょ。
 そんなもので殴ってみろ、臓物や骨を拾う羽目になるぞ。
 あ、ゴブリンなら喜んで食ってしまいかねない。

「ひゃっ!?」

 ガコン!!!

 闇雲に剣をふりながら暴れていた少女は予想外にも石に躓き、頭を思いっきり地面に叩きつけてしまう。

「ふぁぁぁ………痛いで……す」

 少女はそのまま空を見上げながら死ーーー

 意識を失ってしまう。
 それを唖然と見下ろすゴブリン達とこの場にいる僕。
 僕たちは一体、ここで何を見せつけられていたのだろうか?

 どうせ真相は一生闇の中だ。
 とりあえず、この訳の分からない少女を村の中へと運んで適当に寝かせておこう。

 それから目を覚ますのを待って、事情を聞くとしよう。
 話さないようなら【絶対無敗】の能力で言いなりにするのも良い手だと思う。

 だがアレは僕の方にも負担がかかってしまうので却下だ。
 話さないのなら仕方がない。

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