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勇者に見捨てられて死んだ大賢者はゴブリンに転生したので、魔王の配下になって魔族の軍勢を率いる大賢者になる

英雄譚

第2話 「ゴブリン兄妹とともに」

 

 エビルゴブリン。
 魔王の手によって生まれた邪悪な黒い肌のゴブリンである。
 目に捉える者すべてを殺め、壊し、そして喰らう。

 そうやって無慈悲な暴力で蹂躙し続けているうちに、その思考が奴らにとっては当然のことになっていた。

 さらに奴らは弱者を最も嫌う。
 特に同種であった緑色の肌のゴブリンをだ。

 同じ血を引きながらもエビルゴブリンに比べて通常のゴブリンは他の種族に劣るほど弱い。
 それがエビルゴブリン達にとっては恥でしかならなかった。
 だからこそ奴らはすべてのゴブリンを排除すべく、戦争をしかけた。

 武装し大軍でゴブリンの拠点である大森、山岳地帯などの洞窟を手当たり次第に潰していき、年寄りも女も子供さえ構わずに殺めていった。

 ゴブリン側も抵抗を試みるが、戦闘も技術も資源もエビルゴブリンに劣ってしまう。
 真っ正面から一匹を数十匹で立ち向かうも圧倒的な力に翻弄され殺されていってしまう、無駄死にだ。

 結果なんて最初から決まっている。
 これは戦争などではない。誰しもが炎に飲まれていく故郷を眺めながらそう思うのだった。


 しかし、そんなある日。
 龍人族、獣人族、エルフ族、吸血族、四種族との同盟の締結により戦況が覆された。
 エビルゴブリンは、五種族の圧倒的な戦力に押され始めたのだ。

 五種族を率いるのは「ゴブリン」の王。
 力はないものの、知識が浅いで有名なゴブリンなのにも関わらず誰よりも彼は賢かった。
 そして知っていたのだ、魔王がどうして奴らエビルゴブリンを生んだのかを。
 だがゴブリンの王は口を閉ざす。

 エビルゴブリンを追い詰め、五種族の勝利で終戦したあとであろうと生涯、老衰しても彼が真相を語ることは一度もなかった。


 それからちょうど千年が過ぎ、ふたたび魔王の手によって悪夢とも言えるゴブリンの変異種『エビルゴブリン』が生まれるのであった。



 ーーー



 早朝。
 ゴブリンの集落があるという『ヴェリル森林』にて。


「ぎゃああああああ!!!」
「逃げろぉぉおリン!!」

 叫び声が木霊する森林のとある場所で、魔物に追われている二匹のゴブリンがいた。
 二匹は兄妹で、兄の名は『ゴブ』妹の名は『リン』だ。

 どういった訳か二匹は巨大なカエルのような赤い魔物に追われていた。
 それを遠くで眺めているこの僕ことアルフォンス。

 彼らとこの森林を移動してから三日が経過する。
 その三日前に自分がゴブリンになってしまったショックは未だ受け入れられていない。
 とうてい認めることができない。

 前まではずっと人間として生きてきた自分が、ドラゴンに殺されて目を覚ましたらなぜか魔族のゴブリンに変身してしまったのだ。
 それを知り三時間も仮死状態になってしまった。

 だけど、現在進行形で魔物に追われているゴブリンの兄妹と一緒に行動をしていくウチに次第に慣れていく自分がいた。

「アルさぁぁん!  ボーッとしていないで助けてくださいよぉぉ!!」

 リンが涙目で助けを乞うってきた。

「あ、そうだった!  ごめん、ぼうっとしてた!」

 いかん、つい思い出すとショックで呆然としてしまう。
 とりあえず助けに行こう。

 彼女の声で我にかえると、カエルの背後を追いかけるように僕は走りだした。
 狙うはカエルの巨大な影だ。

「【影踏み】!」

 カエルの影にめがけて飛び、ありったけの力で踏みしめてみせた。
 途端、カエルはピタリと動きを停止させる。
 まるで誰かに抑えられているのか、カエルは抵抗するも動けなかった。

 その背後には影を踏む僕。
 特異能力【影踏み】を発動させたのだ。
 影を踏むことにより対象の動きを捕縛し、動いたり移動させたりする事を出来なくさせる能力だ。

「……ぐぎぎぎ」

 しかし術者自身の筋力が用いられるため、対象より力が弱かったりしたら影を踏みしめる体が弾かれてしまう。
 自分より巨大なカエルの抵抗に、ありったけの力でふんばりながら僕は奴の頭上にめがけて攻撃魔法を放った。

【爆風刃】!!
 音速の鎌鼬でカエルの首を吹っ飛ばしてみせる。
 だが、エグいことに斬られたカエルの首から大量の血が噴出し、周辺を赤く染めてしまう。

「うわっ……」

 ゴブとリンはそれを見て、少し青ざめた表情で後ずさりした。
 それもそうだろう、衝撃的な光景だもんね。
 大丈夫、いま自分がなぜ他の方法で巨大カエルを撃破しなかったのだろうかと同じく後悔しているから。

 しかし何なのだろうかこの森……妙に巨大な魔物ばかりが飛び出てくるじゃないか。
 魔力も濃いし、魔法を使うのに打ってつけだけど気持ちが悪い。

「ありがとう、アルフォンスさん!」

 ゴブが目を輝かせながらお礼。

「ありがとうございます、アルさん!」

 一方リンは丁寧に頭を下げてお礼を言ってくれた。
 この兄妹が並んでいるのを見ていると、なんだか微笑ましい。
 まるで、旅立っていってしまった妹と僕が並んでいるようにも見える。

 今アイツは何処で何をしているのだろうか?
 心配されるほどヤワな妹ではないにしても、不安になってしまうのが兄というものだ。

「いいよ。案内してくれているし、これぐらいお安い御用さ」

「あのあの!  アルフォンスさん!」

 無邪気な顔でゴブが手をあげる。
 どうしたのか、と尋ねてみると。

「あのさ、あのさ、さっきから魔法をバンバン出しているんだけど、アルフォンスさんはどのぐらいの魔法が使えるんだ?」

 興味津々に聞いてきた。
 まあ、ゴブリンは魔術に無縁といったイメージがあるし、ゴブも魔法が珍しくて仕方がないんだろう。

 よぉし、ちょっと驚かしてみせようかな。

「ん〜?  どのぐらいだろうか……ねっ!」

 兄妹を前にして僕は手の平から白い鳥を何もない空間から出現させてみせる。

「「えええええ!!?」」

 魔術というより、手品を見て腰抜ける兄妹ゴブリン。
 ふふふ、だけどこの程度ではまだ幕引きはしない。

 手の平に乗せている白い鳥にウィンクして合図を出すと、白い鳥は理解したように頷いて空を舞った。
 上空三十メートルへと到達すると、白い鳥は踊るように回転する。

 パチン。

 同時に僕は右指を鳴らした。

 ドォォォォォォォン!!!

 途端、訳もわからず回転していた白い鳥は色とりどりな光を放ちならが爆散。
 まるで花のような形状が空に大きく広がり、次第にその形を消滅させた。

 そして一礼。

「うぉぉお!  カッケー!」

「花火だ!  花火!」

 ん、魔族も花火を知っているんだ。
 てっきり王都などの祝いごとでしか打ち上げないので、人族しか堪能できない代物だと思ったけど……。

 まあ、喜んでくれたら嬉しい限りだ。
 ゴブリンの姿じゃ格好付かないけどね。
 だけど、どうやら二匹の目には僕がカッコ良く映っているらしい。

 同種の形をしている相手には嫌悪感はまず抱かないだろう。
 仮に僕があの『ドラゴン』だったら、間違いなく泣き叫んで逃げていってしまうだろうけどね。

 ん?  そういえば、花火を放った直前に何かを感じたのだけれど。

 前世より魔力が大きくなったような、扱いが簡単で単純になったような……。
 あのドラゴンの放つ死を連想させられる威圧も、洞窟で目を覚ましてからずっと感じているようなぁ……?

 まあ、気のせいか。
 終わったものをいちいち悔やんでも取り戻すことなんて出来ない、現に僕はゴブリンだ。
 ゴブリンとして生きていかなければならないのだ。
 だからこそ、この瞬間に認めなければならない。

 僕が正真正銘のゴブリンだってことを……!

(だめだぁぁぁ)




「着きましたよ」

「……えっ」

 道をまっすぐ進んで数時間後にゴブリン村に到着した。
 だけど辿り着いてすぐ、ゴブとリンが大量の汗を垂らしながら顔を青ざめていた。

 僕も同じように見開いた目を、村へと向けていた。
 あまりの貧相さに驚きを隠しきれない!  といったリアクションではない。


 ゴォォォォォォォ。

 翼を生やした蝙蝠こうもりのような魔族に囲まれながら、村すべてが燃えあがる炎に呑まれていたのだ。

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