君の行く末を、私は見たい

モブタツ

10&エピローグ

  先輩は脇目も振らずに前へ進み続ける。
  疲れ果てた私のことなんて全く気にしていない。
「せんぱぁいぃ…早いですよぉ…」
  私の精一杯の声も、先輩には届かなかった。
「そろそろ!そろそろだから。てか、旅館からそんなに離れてないでしょ?ほんっとうに情けないね。あんたは」
「旅館に来るまでが長かったじゃないですか…」
「あんたは私が運転する車に乗ってただけでしょうが!」
  呆れたようにため息をつくと、もう一度前を見て、歩みが止まった。
「…着いた」
  目の前には、大きな神社が広がっていた。
「ここ、なんですね」
「ええ。さぁ、お賽銭を」
  先輩がいつも首から下げていた石が、今は手に握られていた。
「手を合わせてから、これを触って。後ろを振り向いて」
  普段は真面目で仕事ばかりしているイメージがあった先輩が、優しく微笑んだ。
「分かりました」
  何も疑わず、賽銭箱にお金を入れ、手を合わせる。
  風が吹く。静かに、木々を揺らしている。周りに人気はなく、私と先輩以外何も存在しないような世界にいるようだ。
「…後ろを。」
  先輩に言われた通り、ゆっくりと振り向く。
  先輩が握っている石を触る。
  ……目の前には、少女が立っていた。
  落ち着いた色合いの着物を着た、神秘的な少女だ。
「なに…この子…?」
  少女は、ふふっと笑って、先輩に向けて頭を下げた。

「…待ってたよ。恵ちゃん。」

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