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竜神に転生失敗されて女体化して不死身にされた件

一葵

イシュワッドギルド

 イシュワッド。
 大陸北部の山岳地帯に位置する国。年間を通し厳しい寒さに覆われ、かつては人口の少ない小国だった。しかし周囲の山々から鉱山資源が見つかり、更に他国同士の流通経路の整備、魔法技術の向上なども合わさり国の規模、人口も増加。一時期は鉱山都市と呼ばれる程に発展した。

「……というのも今は昔。どこを掘っても資源が出たとはいえ、それでも有限の資源だからね。それらを使った技術発展はあったけれど、それでも主要産業は鉱石の輸出に頼っていた時期が長かったから、今はご覧の通りだよ」

 そういって馬車のカーテンを少し開けるユリーン。俺は窓から外の様子をのぞき見た。

 石畳に整備された道に堅牢さを感じさせる石造りの建物が建ち並ぶ。客観的な事実だけをみれば、アルガーンよりも進歩した国だろうが、ユリーンの言うとおりそれは過去の栄光と言うことが感じ取れた。

 目に入る人々は覇気無く俯き、時折目に入る路地には汚れた風貌の人も見えた。感じた寂寥感は灰色の景色だけが原因ではないだろう。

「アリアさん、寒くはない? 正直僕も急な話だったから、予備のコートが大きいものしか無くてね。ギルドの中は暖かいから、馬車の中はそれで我慢してね」
「ああいえ、全然大丈夫です」
「よかった。ギルドに着いたらまた今回の任務について詳しい事を話すけど、一つだけ再度注意事項。ご覧の通りイシュワッドは治安がお世辞にも良いとは言えなくてね。これでもギルドが出来てからかなり改善はされたんだけど、それでもまだまだ足りない。君みたいな子供が出歩くにはあまりに不向きだ。いくら強いからと言ってね」
「そうみたいですね。でも……あの内容だと、ギルド内に籠もってる訳にはいかないですよね?」
「まあそうだね。だからアリアさんには事件解決まではガルシオと一緒に行動して貰うね」

 その言葉を聞いて、直ぐにいつもの文句の声が響くかと構えたが、しかし帰ってきたのは「ああ」という短いものだけだった。不思議に思い隣に座るガルシオを見ると、窓枠で頬杖をつき外の景色を眺めていた。

「ん。アリアさん、ガルシオって柄が悪いし言動も知っての通り悪いけど、根はいい子だから怖がらずに仲良くしてやってね」
「勝手なこと言ってんじゃねぇぶっ飛ばすぞ」
「とてもそうとは思えないんですが……」

 そうして馬車に暫く揺られ、着いたのは周囲よりもやや大きい、それでもアルガーンと比べれば小さな建物だった。

「ようこそイシュワッドギルドへ。寒いからさっさと中に入っちゃお」

 ユリーンに促され室内に入ると、外観とは反面暖かな雰囲気に迎えられた。
 灰色の石を隠すように布や植物を配置し、照明も暖かな光が照らしている。暖炉の中でパチパチと爆ぜる音も心地よく、外とのギャップもあるからかとても心地よく感じられた。

「凄いでしょ。結構頑張ったんだよ?」
「さっきから思ってたんですけど、ユリーンさんがギルドマスターになったのって最近なんですか?」

 自信満々に紹介してくるユリーンに素朴な疑問を投げると、少し考えるようにして返事を返した。

「まあ就任したのは確かに最近……というか一年前なんだけど、正確に言えばイシュワッドにギルドが出来たのが一年前なんだよね」
「ということは……」
「そう! 僕こそイシュワッドギルドの初代ギルドマスターなんだ!」
「おー」
「おい馬鹿二人。さっさと行くぞ」

 胸を張って高らかに言うユリーンに取り合えず拍手していると、呆れたようにガルシオが奥へ行ってしまい俺達も後を追いかけた。

 イシュワッドギルドは入って直ぐは依頼者用の受付のある小部屋。横にある冒険者、職員用の通路を抜けると冒険者用の受付に依頼書の貼り付けられた掲示板、休憩用の椅子やテーブルが並ぶ。更に奥の職員用の通路を通り受付の奥にある階段を上がり、二階を無視し最上階の三階に上がると、目的のユリーンの部屋に辿り着いた。

「どう? アルガーンに比べるとずっと小さいでしょ?」
「そうですね。訓練室とかも見当たりませんし……」
「一応近くに別の建物があってね。そっちに訓練室と冒険者用宿舎を……とはいってもようやく最近買えたくらいだから、まだ内装まで手が回ってないんだよね」

 苦笑いを浮かべ肩をすくめるユリーン。二階にいくつか部屋があるように見えたけど、あれはまた別なのだろう。
設立も一年前ってくらいだからまだまだこれからなのだろう……あれ?

「ちょっと待てください。ここのギルドの設立は一年前で、まだ訓練室も宿舎もないんですよね?」
「うん。そうだね」
「だったら職員も冒険者もこの国の人に限られる……職員はともかく、冒険者は成り立ったんですか? 馬車の中で国の治安はギルドが出来てからかなり改善したって言ってましたけど……」

 途中このギルドの冒険者を何人か見かけたけど、お世辞にもそれほど強いとは言いがたい人しかいなかった気がする。
 俺の疑問にユリーンは驚いた顔を浮かべた。

「いや凄いね。アルプロンタでも思ったけれど、まだまだ若いのに良く考えが回ってる。アリアさんの言う通り、うちは設立からずっと人材に悩んでいてね、職員はなんとかなったし最悪僕が頑張れば良いだけの話だけど、冒険者はそうはいかないからね。確かに職にあぶれている人はいたけれど、冒険者になろうという物好きはいなくてね。危険を伴う依頼をして金を得るくらいなら、そこらの奴を襲った方が効率が良いぜげっへっへ……って人ばっかときたもんだ」

 眉間にしわを寄せて渾身の悪い顔……をしているであろう変顔に苦笑いを浮かべると、一度咳払いをして続けた。

「他のギルドから一時的に冒険者を移籍して貰うことも出来るけど、そもそも住むところもないからね……そもそもまともな依頼が来るかも不確かな状態だ。安易には呼ぶことは出来ない。さてどうしようか……って言うときに出会ったのがこのガルシオだったんだ」

 話しながらガルシオの後ろに回りぽんと肩に手を置く。

「じゃあガルシオさんがここの最初の冒険者だったんですね」
「そうそう最初の……というか半年間での唯一の冒険者だったんだけどね」
「そうなんですか!?」
「そうだよー。その間一人でどんな任務も受けてくれて今の冒険者の人材確保にも協力してくれてイテテテテ! ちょ、痛いってガルシオ!」

 顔面を鷲づかみされ悲鳴を上げるユリーン。他のギルマスと冒険者に比べ二人はどこか緩い雰囲気があったけれど、そういう事情があったのか。

「くだんねぇ話でどんだけ時間潰す気だ。さっさと本題に入れ」

 半泣き無言の抗議を無視されると、やれやれとユリーンは席に戻り書類の束を取り出すと俺達に渡した。

「これが……そうなんですね」

 俺の言葉に、ユリーンは無言で頷く。

 そこに書かれているのは人名、年齢、性別、日時。それらの情報が何枚にも渡って書かれていた。

「そこに書かれているのがここ一ヶ月で失踪した人達だ。今回の僕たちの任務はこの事件の原因究明と解決。じゃあ作戦会議を始めようか」

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