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竜神に転生失敗されて女体化して不死身にされた件

一葵

会議は廻り

「さて、一晩経ち各々考えも整理できたろう。まずは戦った者から聞こうか」

 統合武道祭典コンバートル・フェスティバルが終了し翌朝。白亜の塔の円卓の間でユリウスが口を開いた。

「では私から。あの一戦でどれだけ信用できるかを行ってしまえばきりが無いが、彼女と邪竜の関係は私達が危惧しているものでは無いと感じられた。少なくとも言いなりでは無く、ともすれば対等とも言えるかもしれない」
「ほう。その根拠は?」

 シーナの言葉にユリウスが興味深げに返した。

「一瞬ではあったが、二人のやりとりが聞こえた。……やりとりとは行っても彼女の言葉しか聞こえなかったが、”黙ってろ”と言っていたよ。あの邪竜にそんな口をきけるのは、それなりの関係を築いていないと厳しいだろう。……それに彼女の魔法だ」 

 思い返すように目を閉じ背もたれに身を預けると、再び口を開く。

「初手の身を纏う黒炎、あれは確かに邪竜の炎だ。内包された魔力の禍々しさが物語っていた。しかし次の刀に纏った白炎、そしてガルシオとの戦いで見せた新たな炎。あれは彼女が編み出した邪竜の炎を利用した新たな魔法だろうが、内包された魔力はとても邪竜の炎が元になっているとは思えなかった」
「ハッ、邪竜嫌い様が丸くなったもんだぜ」

 ガルシオの軽口にシーナはチラリと視線を移し、しかし何も言うことも無く再び目を閉じた。

「ふむ。シーナの魔力を見る目は他のエルフよりも確か。一考の余地はあろう。ガヴァール、彼女の仲間と戦った貴様の意見はどうだ」

 意見を求められたガヴァールは腕を組み思い出すように唸った。

「……そうさな。仮に、彼女は邪竜に言いなりになっている、もしくはそもそも彼女の人格など無く邪竜が芝居を打っているとしよう。そうした場合、あいつらの演技力は相当なもんだ。それほどにエリシアっつう娘からは邪気を感じなかったよ。心から友人を思いやってるただの娘だ」
「つまり貴様もシーナと同意見か」
「ま、そういうこったな」
「分かった。ではガルシオ、貴様はどうだ」
「あ? ……つうかよ、こんな最初っから答えが出てるような話し合いになんの意味があんだよ」

 気怠げに言うガルシオにユリウスが目を細める。

「……何が言いたい?」

 ユリウスの低い声にガルシオは足を円卓に音を立てて乗せ、尊大な態度で答えた。

「頭のかってぇテメェらは、あのガキ自身がどうであれ内包しているのは邪竜そのものに違いねぇ。そしてかつての災害みてぇな力が出せない今、ガキのことを無視してとっとと殺すのが良いとでも思ってんだろ?」

 ガルシオの苛立ちを感じさせる言葉を、ユリウスは静かに返した。

「ガルシオ、勘違いをするな。我等の目的は世界の秩序の維持だ。その為であれば一を捨て十を救う判断をせねばならん。そして此度の問題はあの邪竜だ。どれだけ議論を重ね、安全性を確かめようが到底足りぬであろう」

 その言葉にガルシオは笑い声を上げた。

「何がおかしい」
「いや、お前等があんまりにも可哀想でよ……なあおいニナ。お前なら分かるだろ?」

 いきなり話を振られた治癒術士──ニナは狼狽しながら答えた。

「えっ、えっと、はいっ。彼女……アリアさんは戦闘中、傷の治癒は私の魔法が反応してましたが、その……ガルシオさんの最後の一撃、あれは、私の魔法だけではありませんでした……」
「相変わらずテメェはいまいち確信突かねぇな、もっとはっきり言ってやったらいいんだ。俺の最後の一撃は確かにあいつを殺す一撃だ、何せ自分の腕を破壊するレベルの威力を相手の体内で爆発させっからな。見た目は変わんねぇが中身はぐちゃぐちゃ、ニナの魔法も間に合わねぇ即死だ」
「貴様、そんなことをしていたのか!」
「黙ってろよジジイ。けれどあいつは気絶こそしたが死んでねぇ。ニナの魔法も効果が無いほどに確実に死んだのにだ。それは何故か……なんて簡単だよな、あのガキは俺の上位互換。不死身のスキルでも持ってるんだろうよ」

 その言葉に部屋中に動揺が走る。

「貴様、本気で言っているのか?」
「ああ、本人に聞くのが確実だが、その線が一番だろうよ。ハハッ、傑作だよな。ガキの中にいる化物を殺そうとしたら、そのガキの方がよっぽど化物ときたもんだ。ウケなおい!」

 おかしそうに笑い声を上げるガルシオだったが、不意にその声を止め背後から襲う刀を受け止めた。

「これ以上化物呼ばわりは許さない」
「おうレイ。むしろ俺はあのガキ擁護派だぜ。首切り落とすなら頭のかってぇギルマス共にしな」
「擁護派ならいい」

 あっさりと引き下がり何も無かった様に座り直すレイとガルシオ。ユリウスは一度咳払いをすると仕切り直した。

「確かに結果として私は彼女諸共邪竜を滅する方向で考えていた。しかしガルシオの言うとおり彼女が不死であるならば話は変わってくる。私の知る限り、不死者を殺す方法など知らぬからな。そもそも不死という存在自体を知らぬ。なれば出た意見を参考に彼女の精神性を信じ引き入れる方が良いと判断できようが……どう思う」

 ユリウスの言葉に他のギルドマスターは唸る。誰からも反対の意見は出ないが、それは賛成では無く反対したくともその方法が出ない故の無言だった。
 短い静寂。それを終わらせたのはラウドだった。

「……私見ですが、彼女は優秀な冒険者です。己の境遇を嘆かず、鍛錬を怠らず、仲間との研鑽も素晴らしいものだ。多少無茶な所もあるが、受けるものが少ない危険な任務も受けている。以前、安全な任務ばかり受ける冒険者もいる中、何故進んで危険な任務も受けるのか聞いたこともあるんだが、”困っている人がいつから任務として出てるんですよね? なら出来る人がやってあげないと”だそうだ。勿論本来その為のランク制だが、誰だって死ぬのは怖いものだ。今までの話を総合すれば、彼女は並の冒険者とは一線を画した力を有し、死ぬことすらない。だからといって同じ境遇の者が彼女と同じ行動をとるかと言えば、答えは否でしょう。私は彼女を支持しますよ」
「ほう。貴様がそれ程までに買うか」
「えぇ、判断材料として私の言葉だけでは足りないようでしたら目も差し出しましょうか」
「ははは! 貴様の目を失うのは惜しいな。よかろう、彼女を我等の仲間とし、引き入れることにする。皆異存ないな?」

 異を唱えるものも無く、会議は終わりを告げた。

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