竜神に転生失敗されて女体化して不死身にされた件
鍛冶師の心
「何その男、ひっどい!」
その日の晩。俺はケーデ達といつものように酒場で夕食をとっている時に武具街での出来事を話すと、ケーデが机を叩きながら怒りを露わにした。
「武具街の路地でシート広げて商売してる赤毛の男……もしかしてクラガか?」
「クラガ?」
俺から聞いた特徴の男に心当たりがるのか、ロイが一人の男の名前を上げた。
「ああ。めんどくさいハイ・ドワーフでな。そんなに有名じゃないけど知ってるやつは知ってるって感じだな」
「ハイ・ドワーフ?」
なんだそれ、聞いたことないな。ドワーフの上位種みたいなことなのか? 俺が見た感じ普通の人間だったけど……。
「ハイ・ドワーフっていうのはね、魔具を作るのに長けたドワーフのことなの。普通のドワーフとの違いはその魔具の制作能力と、後は背が他の人族みたいに高いってことね」
「その分筋力は落ちてるし普通の武器の作成練度は低いから、通常武具ならドワーフ、魔具ならハイ・ドワーフってな感じに住み分けが出来てるんだよ」
なるほど。ハイは上位ってよりもそのまま伸長的な意味で高いって考えるほうが近いな。……あれ?
「でもその人の売ってた武器、全部普通の武器だったよ?」
しっかりとは見ていないが、魔具の類は売っていなかったような気がする。
「そう。そこがあいつがめんどくさいって言われる所以だ。あいつもハイ・ドワーフだから魔具を作る才能はあるんだ。むしろそこいらのハイ・ドワーフよりいいものを作れるくらいのな。それは間違いなくあいつの才能と努力の結果なんだけど、周囲の反応はハイ・ドワーフだからってのが多くてな。あいつはそれを許せなかった。だから自分の領分でない普通の武器で最高のものを作って認めさせようとしてるんだ」
分からなくはない。自分の努力の結果を生まれのお陰と思われることほど嫌なことはないだろう。それにしても……。
「めんどくさい人ですね」
「だろ?」
俺は苦笑いを浮かべ、ロイも同じよな表情で返した。
「実は俺の剣もそのクラガから買ったやつなんだ。まだまだ駆け出しで金もないから大通りの店のはとても手が出なくてな。その点クラガの武器はまだ安い方だし、何よりものがいい。実際普通の武器も魔具も、あいつには両方の才能があるんだよ」
***
「……って、ロイさん言ってましたよ?」
翌日。俺は再びクラガの店に赴いていた。
「ふーん。誰だか知らねーけどそんなこと言ってたのか。あーあいつかな、前にきた如何にも駆け出しってやつ。そっかーあいつがねー。まあどうでもいいけどー。そっかーふーん」
分かりやすく嬉しいのを胡麻化してるな。
「っていうかお前ほんとに冒険者だったのな」
「そう言ってるじゃないですか! 今日は証拠もあるんですからね!」
そう言って俺は一枚のカードを突き出した。
どうでもいいけど女の子演技のレベル上がってない俺?
「あー? アルガーンギルド認定冒険者『アリア』……ランクF? ハッ、いっちばん下じゃねぇか」
「入ってから二週間はみんなF固定なんですよ!」
俺がクラガに見せたのはギルドから発行される冒険者証明カード。そこに書かれているのは名前とランク、それと一人一人に振り分けられる番号だけ。ギルドの任務にはランクが設定されていて、自分のランク以上の任務は受けられないようになっている。任務をこなしていけばいづれランクが上がり、番号はその情報を管理、整理するためのものだ。
駆け出しの冒険者はその身の安全、それと調子に乗らないようにとの保険の意味で冒険者として慣れるまでは最低ランクで固定され、その期間が過ぎるとランクアップできるようになる。二週間の任務によっては数ランクアップする場合もあるらしいが、たいていはそのままか、よくてEに昇給くらいなもののようだ。
ちなみにケーデ達は全員Dだ。実質的にではないがオーガを退けたという結果がランクアップにつながったらしい。
「まあだからって売ってやるとは言ってねぇんだけどな」
「何でですか!?」
「ロイに俺のこと聞いたんなら知ってるだろ。魔具を作らねぇハイ・ドワーフなんざ意味ねぇって。俺のを買うよりちゃんとしたドワーフのを買いな」
「嫌です。クラガさんのとこの刀が欲しいんです」
「なんで俺のなんだよ。こんなんよりよっぽどいいの売ってるだろ」
「これ以上の刀なんて売ってないですよ!」
「……っ!」
俺の言葉にクラガは面食らい、直ぐ両手で頬を抑えた。
あ、これにやけてるの誤魔化そうとしてるな。バレバレすぎる誤魔化し方だけど。
「……だ、大体っ、なんでお前みたいなガキが冒険者やってんだよ。危ねぇだろうが!」
うわ露骨に話題逸らしてきたなこの人……まあ、よく考えたら子供が傭兵やってるようなもんだよな。そりゃ不審に思うわ。
「まあそれはその……色々事情が……とにかく! 売ってくださいよ! お金なら払いますから!」
「こんの……そうだ」
クラガはこれ以上なく鬱陶しそうな顔をしたが、何か思いついたかのように手を叩くとにやりと笑った。
「俺今欲しい素材があってな。今度ギルドに依頼出そうとしてたんだよ。ただ見ての通り文無しの身でな。報酬の金が出せねぇ。だから代わりにその素材で作った武器を出そうとしてるんだが……どうだ?」
報酬で金の代わりに武器の出る任務……つまりそれはこの人の武器がただで手に入るということだ。まあ任務のための準備費用は掛かるけど、まともに買うよりは絶対安い!
「よし! じゃあその任務私が受ける! 他の人に取られないように依頼日だけ教えて!」
「そうだな、俺も準備があるから……五日後だ。五日後の朝一番に依頼出してやるよ」
「分かった! 忘れないでよね!」
俺はそう言い残すと、足早にギルドに向かって走り去った。にやにやとしたクラガの笑みを背に受けながら。そして同じような笑みを俺も浮かべながら。
その日の晩。俺はケーデ達といつものように酒場で夕食をとっている時に武具街での出来事を話すと、ケーデが机を叩きながら怒りを露わにした。
「武具街の路地でシート広げて商売してる赤毛の男……もしかしてクラガか?」
「クラガ?」
俺から聞いた特徴の男に心当たりがるのか、ロイが一人の男の名前を上げた。
「ああ。めんどくさいハイ・ドワーフでな。そんなに有名じゃないけど知ってるやつは知ってるって感じだな」
「ハイ・ドワーフ?」
なんだそれ、聞いたことないな。ドワーフの上位種みたいなことなのか? 俺が見た感じ普通の人間だったけど……。
「ハイ・ドワーフっていうのはね、魔具を作るのに長けたドワーフのことなの。普通のドワーフとの違いはその魔具の制作能力と、後は背が他の人族みたいに高いってことね」
「その分筋力は落ちてるし普通の武器の作成練度は低いから、通常武具ならドワーフ、魔具ならハイ・ドワーフってな感じに住み分けが出来てるんだよ」
なるほど。ハイは上位ってよりもそのまま伸長的な意味で高いって考えるほうが近いな。……あれ?
「でもその人の売ってた武器、全部普通の武器だったよ?」
しっかりとは見ていないが、魔具の類は売っていなかったような気がする。
「そう。そこがあいつがめんどくさいって言われる所以だ。あいつもハイ・ドワーフだから魔具を作る才能はあるんだ。むしろそこいらのハイ・ドワーフよりいいものを作れるくらいのな。それは間違いなくあいつの才能と努力の結果なんだけど、周囲の反応はハイ・ドワーフだからってのが多くてな。あいつはそれを許せなかった。だから自分の領分でない普通の武器で最高のものを作って認めさせようとしてるんだ」
分からなくはない。自分の努力の結果を生まれのお陰と思われることほど嫌なことはないだろう。それにしても……。
「めんどくさい人ですね」
「だろ?」
俺は苦笑いを浮かべ、ロイも同じよな表情で返した。
「実は俺の剣もそのクラガから買ったやつなんだ。まだまだ駆け出しで金もないから大通りの店のはとても手が出なくてな。その点クラガの武器はまだ安い方だし、何よりものがいい。実際普通の武器も魔具も、あいつには両方の才能があるんだよ」
***
「……って、ロイさん言ってましたよ?」
翌日。俺は再びクラガの店に赴いていた。
「ふーん。誰だか知らねーけどそんなこと言ってたのか。あーあいつかな、前にきた如何にも駆け出しってやつ。そっかーあいつがねー。まあどうでもいいけどー。そっかーふーん」
分かりやすく嬉しいのを胡麻化してるな。
「っていうかお前ほんとに冒険者だったのな」
「そう言ってるじゃないですか! 今日は証拠もあるんですからね!」
そう言って俺は一枚のカードを突き出した。
どうでもいいけど女の子演技のレベル上がってない俺?
「あー? アルガーンギルド認定冒険者『アリア』……ランクF? ハッ、いっちばん下じゃねぇか」
「入ってから二週間はみんなF固定なんですよ!」
俺がクラガに見せたのはギルドから発行される冒険者証明カード。そこに書かれているのは名前とランク、それと一人一人に振り分けられる番号だけ。ギルドの任務にはランクが設定されていて、自分のランク以上の任務は受けられないようになっている。任務をこなしていけばいづれランクが上がり、番号はその情報を管理、整理するためのものだ。
駆け出しの冒険者はその身の安全、それと調子に乗らないようにとの保険の意味で冒険者として慣れるまでは最低ランクで固定され、その期間が過ぎるとランクアップできるようになる。二週間の任務によっては数ランクアップする場合もあるらしいが、たいていはそのままか、よくてEに昇給くらいなもののようだ。
ちなみにケーデ達は全員Dだ。実質的にではないがオーガを退けたという結果がランクアップにつながったらしい。
「まあだからって売ってやるとは言ってねぇんだけどな」
「何でですか!?」
「ロイに俺のこと聞いたんなら知ってるだろ。魔具を作らねぇハイ・ドワーフなんざ意味ねぇって。俺のを買うよりちゃんとしたドワーフのを買いな」
「嫌です。クラガさんのとこの刀が欲しいんです」
「なんで俺のなんだよ。こんなんよりよっぽどいいの売ってるだろ」
「これ以上の刀なんて売ってないですよ!」
「……っ!」
俺の言葉にクラガは面食らい、直ぐ両手で頬を抑えた。
あ、これにやけてるの誤魔化そうとしてるな。バレバレすぎる誤魔化し方だけど。
「……だ、大体っ、なんでお前みたいなガキが冒険者やってんだよ。危ねぇだろうが!」
うわ露骨に話題逸らしてきたなこの人……まあ、よく考えたら子供が傭兵やってるようなもんだよな。そりゃ不審に思うわ。
「まあそれはその……色々事情が……とにかく! 売ってくださいよ! お金なら払いますから!」
「こんの……そうだ」
クラガはこれ以上なく鬱陶しそうな顔をしたが、何か思いついたかのように手を叩くとにやりと笑った。
「俺今欲しい素材があってな。今度ギルドに依頼出そうとしてたんだよ。ただ見ての通り文無しの身でな。報酬の金が出せねぇ。だから代わりにその素材で作った武器を出そうとしてるんだが……どうだ?」
報酬で金の代わりに武器の出る任務……つまりそれはこの人の武器がただで手に入るということだ。まあ任務のための準備費用は掛かるけど、まともに買うよりは絶対安い!
「よし! じゃあその任務私が受ける! 他の人に取られないように依頼日だけ教えて!」
「そうだな、俺も準備があるから……五日後だ。五日後の朝一番に依頼出してやるよ」
「分かった! 忘れないでよね!」
俺はそう言い残すと、足早にギルドに向かって走り去った。にやにやとしたクラガの笑みを背に受けながら。そして同じような笑みを俺も浮かべながら。
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