オタク気質が災いしてお妃候補になりました
4-10 前日
「はい、ここまで。アリーシアさん、よくがんばりました」
「マダム、ありがとうございました。どうにか形になってよかったです」
アリーシアは社交界前の最後のダンスのレッスンを終えた。ステップを覚えるのが大変で、頭で考えてしまうと体が動かないので、余計足がもつれてしまう。姿勢もダンスをするには大切で、姿勢が崩れてしまってはステップもぶれてしまうのだ。見た目が美しいかどうかがダンスでは重要である。小さい頃から最低限のダンスは学んだが、本格的に学んだのはこの1年半の出来事である。ゆったりとした曲ではステップが小刻みではない分、姿勢が重要になる。動きがはやい曲では、ステップが早く、動きもたくさんパターンがあるので体が慣れるまではとても大変だった。ステップを覚えてからも、相手の呼吸に合わせるのも大変だとわかった。単に踊れればいいというわけではなく、相手の力に合わせて体を動かし、さらに相手が動きやすいように手の添え方から気を遣う点は多かった。マダムはダンスに関してはまったく容赦がないので、何度もくじけそうになった。ただ、一回覚えてしまえば楽になるからというマダムの言葉を信じがんばった。これだけやれば、当日は失敗しなくて済みそうだ。
「アリーシア、とてもよかったよ」
「お兄様! 」
兄の声が聞こえた。兄はまだ屋敷に滞在中で、今日は家にいたことを思い出した。兄に見られていたことは知らなく、少し気恥ずかしい。ダンスを始めたばかりの状態をみられなくてよかった。褒められたことが嬉しい。
「お兄様からみて大丈夫そう? 」
「大丈夫、立派なレディだよ。そうだ、僕と踊ってみるかい? 」
「お兄様と?! 」
今までマダムとしか踊っていないので、ほかに踊ってくれる人がいれば、当日ももっと楽になりそうだ。兄だったらスムーズにエスコートしてくれるだろうし、当日も兄にパートナーになってもらうことにしたので、兄の呼吸を知るにはいいだろう。
「アランさん、ダンスは練習していますか? 」
そこへマダムが兄へ声をかけた。マダムは兄にもダンスを教えたようだ。
「はい、そういう機会があることもありますので」
「ではアランさんのダンスもみてみましょう。ではお二人で踊ってみて」
マダムは手を叩いてテンポを刻んだ。
アリーシアとアランは向かい合い、片手を合わせ、もう片方を体に手を添えた。ゆっくりとしたステップで回っていく。兄の手に力が入ったかと思えば、軽やかにステップが踏み出せる。マダムは体の力を入れていないで舞うように踊っていたようだが、兄の呼吸は軽やかでありながら力強かった。兄に導かれて足をすすめれば、オレンジの香りがふわりとよぎる。兄は昔からオレンジのトワレをつけている。祖父母が兄をかわいがって、貴重なトワレを定期的に贈ってくるのだ。アリーシアはいつもつけないが、兄は毎日つけている。兄に視線を向ければ、アリーシアと同じ金色の髪の毛に、同じ青い瞳が目に入る。ふっとアリーシアに笑いかけてくれるのを見て、兄が大人の男性になってしまったように感じた。離れているうちに遠くに感じてしまったようにも感じる。兄は華奢なはずが、とても力強く、実は筋肉質だったのもわかった。長いようにも短いようにも感じたダンスの時間が過ぎ、そっと離れていく。
「アリーシアさん、アランさん。よかったです。とても心がこもっていました」
「アリーシアと踊れて楽しかったよ」
「わたしもです、お兄様」
お互い笑みを浮かべてマダムの前に行く。マダムは実は兄はダンスが下手になったか心配していたという。実は兄はダンスがとても苦手だったらしいのだ。スポーツ万能で、剣舞も得意な兄だからそんな弱点があったのは驚きだった。最初はリズムに全然乗れなく、上達までアリーシアの何倍も時間がかかったことが明かされた。実はアリーシアと踊っているときも、マダムにだめ出しをされるのではないかと内心恐れていたという。アリーシアはマダム以外でこうやって踊ったのはアリーシアにとって兄が初めてだ。社交界当日は見知らぬ人とも踊るので、少し心配な点もあるが、兄やマダムからは褒められたので自信をもとうと思った。
夕飯になれば兄と踊ったことを父と母とアポロに自慢した。アポロはアリーシアと踊りたいと騒ぎ出した。アポロにダンスの過酷さを教えたら、やっぱりやりたくないと言い始めた。それを聞いた父と母と兄は笑って、夕食の時間が終わった。
アリーシアはローランが届けてくれたドレスがかけてある自室へ戻り、祖父母からもらったプレゼントから髪飾り、靴などを最終的に確認した。細かいことは当日メイドたちがしてくれるだろうが、せっかくの社交界デビューだから、大きな失敗はしないようにしたい。
そうして社交界デビュー当日が訪れる。大人としての階段をのぼる一日に、アリーシアは緊張してしまったが、前日はぐっすり眠ることができた。
「マダム、ありがとうございました。どうにか形になってよかったです」
アリーシアは社交界前の最後のダンスのレッスンを終えた。ステップを覚えるのが大変で、頭で考えてしまうと体が動かないので、余計足がもつれてしまう。姿勢もダンスをするには大切で、姿勢が崩れてしまってはステップもぶれてしまうのだ。見た目が美しいかどうかがダンスでは重要である。小さい頃から最低限のダンスは学んだが、本格的に学んだのはこの1年半の出来事である。ゆったりとした曲ではステップが小刻みではない分、姿勢が重要になる。動きがはやい曲では、ステップが早く、動きもたくさんパターンがあるので体が慣れるまではとても大変だった。ステップを覚えてからも、相手の呼吸に合わせるのも大変だとわかった。単に踊れればいいというわけではなく、相手の力に合わせて体を動かし、さらに相手が動きやすいように手の添え方から気を遣う点は多かった。マダムはダンスに関してはまったく容赦がないので、何度もくじけそうになった。ただ、一回覚えてしまえば楽になるからというマダムの言葉を信じがんばった。これだけやれば、当日は失敗しなくて済みそうだ。
「アリーシア、とてもよかったよ」
「お兄様! 」
兄の声が聞こえた。兄はまだ屋敷に滞在中で、今日は家にいたことを思い出した。兄に見られていたことは知らなく、少し気恥ずかしい。ダンスを始めたばかりの状態をみられなくてよかった。褒められたことが嬉しい。
「お兄様からみて大丈夫そう? 」
「大丈夫、立派なレディだよ。そうだ、僕と踊ってみるかい? 」
「お兄様と?! 」
今までマダムとしか踊っていないので、ほかに踊ってくれる人がいれば、当日ももっと楽になりそうだ。兄だったらスムーズにエスコートしてくれるだろうし、当日も兄にパートナーになってもらうことにしたので、兄の呼吸を知るにはいいだろう。
「アランさん、ダンスは練習していますか? 」
そこへマダムが兄へ声をかけた。マダムは兄にもダンスを教えたようだ。
「はい、そういう機会があることもありますので」
「ではアランさんのダンスもみてみましょう。ではお二人で踊ってみて」
マダムは手を叩いてテンポを刻んだ。
アリーシアとアランは向かい合い、片手を合わせ、もう片方を体に手を添えた。ゆっくりとしたステップで回っていく。兄の手に力が入ったかと思えば、軽やかにステップが踏み出せる。マダムは体の力を入れていないで舞うように踊っていたようだが、兄の呼吸は軽やかでありながら力強かった。兄に導かれて足をすすめれば、オレンジの香りがふわりとよぎる。兄は昔からオレンジのトワレをつけている。祖父母が兄をかわいがって、貴重なトワレを定期的に贈ってくるのだ。アリーシアはいつもつけないが、兄は毎日つけている。兄に視線を向ければ、アリーシアと同じ金色の髪の毛に、同じ青い瞳が目に入る。ふっとアリーシアに笑いかけてくれるのを見て、兄が大人の男性になってしまったように感じた。離れているうちに遠くに感じてしまったようにも感じる。兄は華奢なはずが、とても力強く、実は筋肉質だったのもわかった。長いようにも短いようにも感じたダンスの時間が過ぎ、そっと離れていく。
「アリーシアさん、アランさん。よかったです。とても心がこもっていました」
「アリーシアと踊れて楽しかったよ」
「わたしもです、お兄様」
お互い笑みを浮かべてマダムの前に行く。マダムは実は兄はダンスが下手になったか心配していたという。実は兄はダンスがとても苦手だったらしいのだ。スポーツ万能で、剣舞も得意な兄だからそんな弱点があったのは驚きだった。最初はリズムに全然乗れなく、上達までアリーシアの何倍も時間がかかったことが明かされた。実はアリーシアと踊っているときも、マダムにだめ出しをされるのではないかと内心恐れていたという。アリーシアはマダム以外でこうやって踊ったのはアリーシアにとって兄が初めてだ。社交界当日は見知らぬ人とも踊るので、少し心配な点もあるが、兄やマダムからは褒められたので自信をもとうと思った。
夕飯になれば兄と踊ったことを父と母とアポロに自慢した。アポロはアリーシアと踊りたいと騒ぎ出した。アポロにダンスの過酷さを教えたら、やっぱりやりたくないと言い始めた。それを聞いた父と母と兄は笑って、夕食の時間が終わった。
アリーシアはローランが届けてくれたドレスがかけてある自室へ戻り、祖父母からもらったプレゼントから髪飾り、靴などを最終的に確認した。細かいことは当日メイドたちがしてくれるだろうが、せっかくの社交界デビューだから、大きな失敗はしないようにしたい。
そうして社交界デビュー当日が訪れる。大人としての階段をのぼる一日に、アリーシアは緊張してしまったが、前日はぐっすり眠ることができた。
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