オタク気質が災いしてお妃候補になりました
1-12 ガーデンパーティー4
破れた袖を手でおさえて隠しても、端から見れば破損したドレスとわかる。とにかく人目のつかないよう屋敷に戻った。あまりに慌てていたので、祖父母からもらって髪飾りがなくなっていた。ドレスは破れ、髪飾りは落とす。散々である。さすがのアリーシアも泣き出したくなってきて、目頭に涙がたまってきた。
屋敷へ戻ると、メイドに気がつかれた。破れたドレスを着た姿にひどく驚いたようだが、本人が泣くのを必死にこらえている様子を察すると、まずは大事にはしないようにしてくれた。もうこういう状態だと、パーティーへは出られないだろう。メイドから話を聞いた執事が、父に報告したようだ。
さすがにパーティーのホストとして、すぐには駆けつけられない。その代わり兄が慌てて戻ってきた。
そのときにはドレスを新しいものへ着替えて、髪の毛もいつもの通り楽なものに戻していた。メイドが淹れてくれたお茶を飲んで、一息ついていた。
「アリーシア! 」
いつもならノックをして入ってくる紳士な兄が、ノックもないまま扉を開けた。
「大変なことがあったみたいだけれど……大丈夫? 」
先ほどまで素敵なドレスを着ていた妹が、今目を赤くして着替えている。そして傍らにまだ置いてあったドレスをみると、目を見開いて絶句する兄。兄は綺麗な顔立ちをしているが、表情を失うととても冷たかった。
「こんなことする、野蛮なやつは誰? 」
一瞬誰の声かわからなかった。兄が心底怒っているのを察して、お茶の入ったカップをソーサに置いた。兄はしばらく無言でいたが、アリーシアが黙って兄を見つめているのに気がついた。怖がらせてしまったらしいと察した兄は、自分の怒りの感情がアリーシアを傷つけたのではないかと不安がった。
「ごめん、アリーシア。自分が情けなくなった。お父様にくれぐれもアリーシアを頼むと言われたのに。僕が居たのに守れなかったこと。本当にごめん」
心底悲しそうに顔をうつむかせて謝る兄に、慌ててアリーシアは首を振った。
「お兄様に黙って、移動した私も悪かったのです」
「いや、気が緩んでいたのは確かだよ。アリーシアの初めての席なんだ。近くにいるべきだった。お父様にもこの件は僕の責任だと言ってある。アリーシアは悪くない」
「でも………」
「いいんだ、アリーシア。怖い思いをしたんじゃないか?今日はもうパーティーへは出なくていいからゆっくり休むんだよ。これから僕はお客様を見送ってくるから。また来るから」
「はい、わかりました」
アランはどうにかアリーシアの前では平静に保っているつもりだが、顔はこわばっていた。自分はこれ以上何かをして事態を大きくはしたくなかった。ゲストにはアリーシアが体調を崩したとのことで、うまく話してくれたようだ。
アリーシアはドレスも破れたことも、髪飾りをなくしたこともよりも。その上ショックだったのは、誰かを殴ったことだ。前世でもあんな風に誰かを殴ったことなどない。故意ではないとはいえ、かなりまっすぐパンチが顔に入ってしまった。あんな美形の顔を殴るなど、自分にそんな力があったのだろうかとびっくりした。しかも相手は王位継承者。これからだってつきあいがある人だろう。
これからのことを思うとアリーシアはひどく憂鬱になってきた。恨みを買うかもしれないし、まして年下の女の子に思いっきり殴られるなんて、あの少年のプライドに触ったかもしれない。父や兄へ嫌がらせするかもしれない…と考えれば考えるほど、悲しくなってきてしまった。
すると扉が開いた。お母様だった。何もいわずそっとアリーシアの隣に座ると、頭をなでてくれた。ぶわっと涙が出る。緊張の糸が切れたのだ。それから百合の香りがする母は、アリーシアを抱きしめてくれた。そして背中をさすってくれて、そのままアリーシアは眠ってしまった。
屋敷へ戻ると、メイドに気がつかれた。破れたドレスを着た姿にひどく驚いたようだが、本人が泣くのを必死にこらえている様子を察すると、まずは大事にはしないようにしてくれた。もうこういう状態だと、パーティーへは出られないだろう。メイドから話を聞いた執事が、父に報告したようだ。
さすがにパーティーのホストとして、すぐには駆けつけられない。その代わり兄が慌てて戻ってきた。
そのときにはドレスを新しいものへ着替えて、髪の毛もいつもの通り楽なものに戻していた。メイドが淹れてくれたお茶を飲んで、一息ついていた。
「アリーシア! 」
いつもならノックをして入ってくる紳士な兄が、ノックもないまま扉を開けた。
「大変なことがあったみたいだけれど……大丈夫? 」
先ほどまで素敵なドレスを着ていた妹が、今目を赤くして着替えている。そして傍らにまだ置いてあったドレスをみると、目を見開いて絶句する兄。兄は綺麗な顔立ちをしているが、表情を失うととても冷たかった。
「こんなことする、野蛮なやつは誰? 」
一瞬誰の声かわからなかった。兄が心底怒っているのを察して、お茶の入ったカップをソーサに置いた。兄はしばらく無言でいたが、アリーシアが黙って兄を見つめているのに気がついた。怖がらせてしまったらしいと察した兄は、自分の怒りの感情がアリーシアを傷つけたのではないかと不安がった。
「ごめん、アリーシア。自分が情けなくなった。お父様にくれぐれもアリーシアを頼むと言われたのに。僕が居たのに守れなかったこと。本当にごめん」
心底悲しそうに顔をうつむかせて謝る兄に、慌ててアリーシアは首を振った。
「お兄様に黙って、移動した私も悪かったのです」
「いや、気が緩んでいたのは確かだよ。アリーシアの初めての席なんだ。近くにいるべきだった。お父様にもこの件は僕の責任だと言ってある。アリーシアは悪くない」
「でも………」
「いいんだ、アリーシア。怖い思いをしたんじゃないか?今日はもうパーティーへは出なくていいからゆっくり休むんだよ。これから僕はお客様を見送ってくるから。また来るから」
「はい、わかりました」
アランはどうにかアリーシアの前では平静に保っているつもりだが、顔はこわばっていた。自分はこれ以上何かをして事態を大きくはしたくなかった。ゲストにはアリーシアが体調を崩したとのことで、うまく話してくれたようだ。
アリーシアはドレスも破れたことも、髪飾りをなくしたこともよりも。その上ショックだったのは、誰かを殴ったことだ。前世でもあんな風に誰かを殴ったことなどない。故意ではないとはいえ、かなりまっすぐパンチが顔に入ってしまった。あんな美形の顔を殴るなど、自分にそんな力があったのだろうかとびっくりした。しかも相手は王位継承者。これからだってつきあいがある人だろう。
これからのことを思うとアリーシアはひどく憂鬱になってきた。恨みを買うかもしれないし、まして年下の女の子に思いっきり殴られるなんて、あの少年のプライドに触ったかもしれない。父や兄へ嫌がらせするかもしれない…と考えれば考えるほど、悲しくなってきてしまった。
すると扉が開いた。お母様だった。何もいわずそっとアリーシアの隣に座ると、頭をなでてくれた。ぶわっと涙が出る。緊張の糸が切れたのだ。それから百合の香りがする母は、アリーシアを抱きしめてくれた。そして背中をさすってくれて、そのままアリーシアは眠ってしまった。
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