オタク気質が災いしてお妃候補になりました
1-7 マリアンナからの贈り物
部屋に戻っても胸がドキドキする。前世のように、幼なじみに似た人に出会ってしまったからだ。(その前に出会った赤髪の男の記憶は自動的に消去)
何度生まれ変わっても、同じような人が気になるなんて、やはり恋愛はろくなものではない気がする。
でも……可愛かったな!同じくらいの年なのかもしれないけれど、くりっとしたドングリみたいな瞳。チョコレートのような髪色。健康的なのだろう、髪にはキューティクル万歳、天使の輪っかがあった気がする。(もちろん赤髪の男の記憶は消去)
一目会っただけでこれほど気になるのだから、正直関わりたくはなかった。20年の片思いは、何かあれば感情に振り乱され、素っ気なくされれば泣きたくなる。反対に笑ってくれれば、嬉しくなる。相手の行動に一喜一憂し、心の平穏がなくなるのだから。それが報われるなら、きっとこんな経験も楽しかったよね!みたいにハッピーエンドなんだと思う。
結果的に前世と同じ間違いを犯さないよう、さらに引きこもり生活を充実しようと思った。前世では寂しさから盲目的に幼なじみに恋してしまった。
でも今回は違う!私にはかっこよくて、優しくて。英雄サンパウロのお話が上手な兄がいるのだから!
それにマリアンナが具合がよくなってからも、話し相手として屋敷に来てくれている。
マリアンナは話好きで、現役の女医ではあるものの、本業としての病院経営に関しては息子が継いでいて、時間がとれるようだ。父に母の容体が安定するまで、アリーシアが寂しくないように、話し相手を頼んだ気がする。
本当に見た目は優しい野獣みたいなパパだけれど。優しくてたくさんの愛情をかけてくれているのだなと、今の自分だから思える。前世のときは父も不器用なりに愛情をかけてくれた。でも自分のことで手いっぱいで、それを気が付くことすらできなかった。
失ったからこそ、改めてすべてのことがありがたく感じた。転生する人生も意外に悪くないかもしれない。
「今日は、アリーシア様に渡したいものがあるのです」
自室のソファでゆっくりくつろぎながら、メイドが出してくれるお茶をのむ。ほっと一息いれているところに、マリアンナは大きな箱を持ってきた。
「なに?マリアンナ」
渡したいものというと、プレゼントなのだろうか。ラッピングは特になく、色が少し抜けた年代物の衣装箱をマリアンナは開ける。
「実はこの中身はドレスです。私が隣国にいたとき、父が私にくださったものです。父が医療の研究で、ある国へ行ったときに、その国の王様からいただきました」
マリアンナの父は研究者として、医学に貢献した功績で男爵の爵位をもらった秀才である。その父はいろいろな薬草や治療方法を探しに、隣国へ旅へ行ったこともあったそうだ。そこでマリアンナの父は困った人を助け、感謝されたことも一度だけないらしい。
「王様が父に、娘がいるなら似合うだろうとくださったものです。質がよいもので、今着ても問題ないものです。私も幼いころに着ていました。父が爵位をいただくときにこのドレスを着ていった記憶があります」
「それって、マリアンナの大切なものでしょう? 」
「大切なものです。でも、私には娘はできませんでしたし、孫も女の子がいないのです。それにアリーシア様たちご家族も、私にとっては差し出がましい思いですが……家族のように思っています。アリーシア様が生まれたとき、渡したいと思いましたが、なかなか機会がとれなくて。ただこの前、苦しそうなアリーシア様と見ていて、もっと早く渡しておけばよかったと後悔しました」
マリアンナの髪の毛は根元から毛先まで真っ白であり、いい人生をおくっているように刻まれる顔の皺はとてもチャーミングだった。話すときに目じりに皺がより、コロコロと笑い声もだすのも、とてもかわいらしい。瞳の色はエメラルドグリーンで、上品さが伝わってくる。
「こちらです。全部が総レースでできた一点もののドレスらしいです」
衣装ケースから出したのは細かい刺繡がほどこされた、総レースのドレスであった。確かに形は古いものである。マリアンナが着ていた時代から時間は経ってはいるが、衣装の質は損なわれていない。
「わあ、とってもきれい。青い色なのね」
「はい、アリーシア様の青い目と同じきれいなお色です。ドレスの形は直しても、生地は今でも使える品だと思います」
マリアンナの大切な思い出も一緒にもらうような気がして、申し訳ない気持ちとうれしい気持ちがあった。でもそういうことも含め、受け取りたいと思った。アンティークのドレスなんて、前世でも使う人も多かったし、これだけの品を頂けるなんてうれしい。
「ありがとう、マリアンナ。あとでお母様にお伝えしておくわ」
「いえいえ、奥様はご承知ですから。マリアンナもアリーシア様に着ていただけることがうれしいです」
「大切にする! 」
マリアンナが渡してくれたドレスを眺めながら、この品だったらもっと後の世代でも着られるかもしれない。だったらちゃんと保護しておいて、大切なときに着たいと思った。
何度生まれ変わっても、同じような人が気になるなんて、やはり恋愛はろくなものではない気がする。
でも……可愛かったな!同じくらいの年なのかもしれないけれど、くりっとしたドングリみたいな瞳。チョコレートのような髪色。健康的なのだろう、髪にはキューティクル万歳、天使の輪っかがあった気がする。(もちろん赤髪の男の記憶は消去)
一目会っただけでこれほど気になるのだから、正直関わりたくはなかった。20年の片思いは、何かあれば感情に振り乱され、素っ気なくされれば泣きたくなる。反対に笑ってくれれば、嬉しくなる。相手の行動に一喜一憂し、心の平穏がなくなるのだから。それが報われるなら、きっとこんな経験も楽しかったよね!みたいにハッピーエンドなんだと思う。
結果的に前世と同じ間違いを犯さないよう、さらに引きこもり生活を充実しようと思った。前世では寂しさから盲目的に幼なじみに恋してしまった。
でも今回は違う!私にはかっこよくて、優しくて。英雄サンパウロのお話が上手な兄がいるのだから!
それにマリアンナが具合がよくなってからも、話し相手として屋敷に来てくれている。
マリアンナは話好きで、現役の女医ではあるものの、本業としての病院経営に関しては息子が継いでいて、時間がとれるようだ。父に母の容体が安定するまで、アリーシアが寂しくないように、話し相手を頼んだ気がする。
本当に見た目は優しい野獣みたいなパパだけれど。優しくてたくさんの愛情をかけてくれているのだなと、今の自分だから思える。前世のときは父も不器用なりに愛情をかけてくれた。でも自分のことで手いっぱいで、それを気が付くことすらできなかった。
失ったからこそ、改めてすべてのことがありがたく感じた。転生する人生も意外に悪くないかもしれない。
「今日は、アリーシア様に渡したいものがあるのです」
自室のソファでゆっくりくつろぎながら、メイドが出してくれるお茶をのむ。ほっと一息いれているところに、マリアンナは大きな箱を持ってきた。
「なに?マリアンナ」
渡したいものというと、プレゼントなのだろうか。ラッピングは特になく、色が少し抜けた年代物の衣装箱をマリアンナは開ける。
「実はこの中身はドレスです。私が隣国にいたとき、父が私にくださったものです。父が医療の研究で、ある国へ行ったときに、その国の王様からいただきました」
マリアンナの父は研究者として、医学に貢献した功績で男爵の爵位をもらった秀才である。その父はいろいろな薬草や治療方法を探しに、隣国へ旅へ行ったこともあったそうだ。そこでマリアンナの父は困った人を助け、感謝されたことも一度だけないらしい。
「王様が父に、娘がいるなら似合うだろうとくださったものです。質がよいもので、今着ても問題ないものです。私も幼いころに着ていました。父が爵位をいただくときにこのドレスを着ていった記憶があります」
「それって、マリアンナの大切なものでしょう? 」
「大切なものです。でも、私には娘はできませんでしたし、孫も女の子がいないのです。それにアリーシア様たちご家族も、私にとっては差し出がましい思いですが……家族のように思っています。アリーシア様が生まれたとき、渡したいと思いましたが、なかなか機会がとれなくて。ただこの前、苦しそうなアリーシア様と見ていて、もっと早く渡しておけばよかったと後悔しました」
マリアンナの髪の毛は根元から毛先まで真っ白であり、いい人生をおくっているように刻まれる顔の皺はとてもチャーミングだった。話すときに目じりに皺がより、コロコロと笑い声もだすのも、とてもかわいらしい。瞳の色はエメラルドグリーンで、上品さが伝わってくる。
「こちらです。全部が総レースでできた一点もののドレスらしいです」
衣装ケースから出したのは細かい刺繡がほどこされた、総レースのドレスであった。確かに形は古いものである。マリアンナが着ていた時代から時間は経ってはいるが、衣装の質は損なわれていない。
「わあ、とってもきれい。青い色なのね」
「はい、アリーシア様の青い目と同じきれいなお色です。ドレスの形は直しても、生地は今でも使える品だと思います」
マリアンナの大切な思い出も一緒にもらうような気がして、申し訳ない気持ちとうれしい気持ちがあった。でもそういうことも含め、受け取りたいと思った。アンティークのドレスなんて、前世でも使う人も多かったし、これだけの品を頂けるなんてうれしい。
「ありがとう、マリアンナ。あとでお母様にお伝えしておくわ」
「いえいえ、奥様はご承知ですから。マリアンナもアリーシア様に着ていただけることがうれしいです」
「大切にする! 」
マリアンナが渡してくれたドレスを眺めながら、この品だったらもっと後の世代でも着られるかもしれない。だったらちゃんと保護しておいて、大切なときに着たいと思った。
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