政略結婚で仮面夫婦の予定だったが、破滅フラグを回避するため鬼嫁になります
第十八話 来訪者 Sideアルフレッド
Sideアルフレッド
その日は朝から雷が鳴り響く日だった。比較的穏やかな気候の土地柄だが、今日は珍しく大雨が振り、風が吹き、荒れている天気である。アルフレッドは日課である散歩を断念した。家の中でもできる運動をローズから指示されていたので、それを部屋の中で黙々とこなしていた。ローズも今日は本を読むといって、朝食を二人でとったが、そのあとはそれぞれの部屋に戻った。
ぴかっと閃光が走ったかと思うと、地鳴りのような轟音が響いた。雷が近くに落ちたのではないだろうか。幸い雨が降っているので、落ちたといっても大きな被害はないだろうとは思うが、火災など起こらなければいい。アルフレッドは窓の外を眺める。
思い出すのは、両親が事故にあった日だ。その日も前日からこのような天気だった。そのため地盤が緩んでしまい、通っていた道に土砂崩れが起こってしまった。だから、こういう日は嫌な記憶を思い出す。
「アルフレッド様」
ルボワが扉の前にいるようで、ノックして声をかけてきた。声色から察するに何かあったようである。嫌な予感がしたが、努めて平静を装って答える。
「何かあった? 」
「ええ、このお天気ですので。雨宿りをしたいという方がいらっしゃいまして。先の道が落石でふさがってしまったとうかがっております」
「わかった。客室に通してあげて」
「はい。この天気が数日続くようですし、道を直すのに時間がかかるようです。滞在が少しかかるようですが。いかがいたしますか? 」
「困っているだろう、温かい食事を。困らないようにしてあげて」
「かしこまりました」
ここは領主として挨拶をした方がいいのかもしれない。でもアルフレッドは見知らぬ人に顔を合わせるのは抵抗がある。ルボワならうまく客人をもてなしてくれるだろう。アルフレッドは部屋にいることにした。
そして昼食の時間になって、ルボワに食堂へ通されると、アルフレッドは目を見開いた。
そこには談笑をしている男性と、ローズの姿があったのだ。彼は誰なのだろうか。
「アルフレッド、お天気がよくないわね。体調は大丈夫? 」
アルフレッドの気配に気がつき、ローズがアルフレッドを迎えた。そうして男性もこちらに視線を向ける。高貴なオーラがあり、彼は明らかに身分が高いだろう人である。金髪はローズのように輝き、そして緑色の瞳。誰もが彼を見れば魅了されるに違いない。そして背も高く、ハンサムである。
「うん」
ローズはアルフレッドを席に連れて行った。そしてローズは親しげに男を見た。
「実は彼、魔術学院での知り合いだったの。偶然で驚いてしまったわ」
その声色は明るく、その二人の距離から仲がいいように思えた。男はローズを一瞥し、それからアルフレッドを見やり、にっこりと微笑む。金髪男が席を立ち上がり、それから華麗な所作でアルフレッドに頭を下げた。
「すみません、雨宿りを急に頼みまして。この先の道が通れなくなってしまいました。街の人にうかがい、こちらに参りました。ロバートと申します」
席を立ち、頭を下げるロバートという男性。動きもスマートで、そつがない。アルフレッドはもやもやする気持ちを初めて感じた。
「アレフレッドです」
「アルフレッド様は本当に幸運な方だ、ローズを妻に迎えることができるなんて。うらやましい限りだ」
「まあ、ロバートは昔から口がうまいわね。彼は隣国の王弟なの」
「ははは、末席だけれどね。自由に旅をして回っているさ」
アルフレッドはローズとロバートの会話に入ることができなかった。とても惨めな気持ちである。ロバートは背が高い。そして顔もよく、感じる魔力は大きい。それにローズと同じ王族の出身。ここにいるので劣っている人物といったら、自分しかいなかった。場違いなのは自分だ。アルフレッドは昼食を食べる気持ちにならなかった。
「ロバートさん、申し訳ないですが、少し気分がすぐれないので失礼します。ローズ、お客さまをもてなしてあげて」
「アルフレッド、顔色がよくないわ。今日は休みましょう? 」
「うん、僕は大丈夫だから。せっかく友達がきたのだから、積もる話もあるでしょう? 」
「でも……心配だわ」
「いいから、ルボワ!ロバートさんを頼むよ」
ローズを振り切って足早に部屋に戻ってきた。こんな惨めな気持ちは久しぶりだ。自分がいかに劣った人間で、自分がだめな人間であるのかを思い出してきた。最近はそういう後ろ暗い気持ちになることはなく、穏やかな気持ちであることが多かった。
自分でもこんな気持ちになるのが、なぜかわからない。天気がこんなだから、自分もこんなに嫌な気分になるのだろうか。ローズはあの男性と並ぶととてもお似合いだ。自分なんかとは全然比べものにならない。いつかローズも、あのような人が出てきて、こんな田舎の領主なんて飽きてどこかへ行ってしまう日がくるのかもしれない。そう思ってきたら、怖くなってきた。
アルフレッドは泣きたい気分になって、ベッドに倒れ込んだ。
それからアルフレッドは数日雨を言い訳に、部屋の外には出なかった。外にでるのが怖くなってきたのだ。またローズとロバートが楽しそうに話している姿をみたら、苦しくなるに決まっている。自分がみじめになるに決まっている。そういう汚い心を知りたくなかった。なんでこんな気持ちになるのかアルフレッドはよくわからなく、ただただベッドの中にもぐりこんで怠惰に一日が過ぎていった。
その日は朝から雷が鳴り響く日だった。比較的穏やかな気候の土地柄だが、今日は珍しく大雨が振り、風が吹き、荒れている天気である。アルフレッドは日課である散歩を断念した。家の中でもできる運動をローズから指示されていたので、それを部屋の中で黙々とこなしていた。ローズも今日は本を読むといって、朝食を二人でとったが、そのあとはそれぞれの部屋に戻った。
ぴかっと閃光が走ったかと思うと、地鳴りのような轟音が響いた。雷が近くに落ちたのではないだろうか。幸い雨が降っているので、落ちたといっても大きな被害はないだろうとは思うが、火災など起こらなければいい。アルフレッドは窓の外を眺める。
思い出すのは、両親が事故にあった日だ。その日も前日からこのような天気だった。そのため地盤が緩んでしまい、通っていた道に土砂崩れが起こってしまった。だから、こういう日は嫌な記憶を思い出す。
「アルフレッド様」
ルボワが扉の前にいるようで、ノックして声をかけてきた。声色から察するに何かあったようである。嫌な予感がしたが、努めて平静を装って答える。
「何かあった? 」
「ええ、このお天気ですので。雨宿りをしたいという方がいらっしゃいまして。先の道が落石でふさがってしまったとうかがっております」
「わかった。客室に通してあげて」
「はい。この天気が数日続くようですし、道を直すのに時間がかかるようです。滞在が少しかかるようですが。いかがいたしますか? 」
「困っているだろう、温かい食事を。困らないようにしてあげて」
「かしこまりました」
ここは領主として挨拶をした方がいいのかもしれない。でもアルフレッドは見知らぬ人に顔を合わせるのは抵抗がある。ルボワならうまく客人をもてなしてくれるだろう。アルフレッドは部屋にいることにした。
そして昼食の時間になって、ルボワに食堂へ通されると、アルフレッドは目を見開いた。
そこには談笑をしている男性と、ローズの姿があったのだ。彼は誰なのだろうか。
「アルフレッド、お天気がよくないわね。体調は大丈夫? 」
アルフレッドの気配に気がつき、ローズがアルフレッドを迎えた。そうして男性もこちらに視線を向ける。高貴なオーラがあり、彼は明らかに身分が高いだろう人である。金髪はローズのように輝き、そして緑色の瞳。誰もが彼を見れば魅了されるに違いない。そして背も高く、ハンサムである。
「うん」
ローズはアルフレッドを席に連れて行った。そしてローズは親しげに男を見た。
「実は彼、魔術学院での知り合いだったの。偶然で驚いてしまったわ」
その声色は明るく、その二人の距離から仲がいいように思えた。男はローズを一瞥し、それからアルフレッドを見やり、にっこりと微笑む。金髪男が席を立ち上がり、それから華麗な所作でアルフレッドに頭を下げた。
「すみません、雨宿りを急に頼みまして。この先の道が通れなくなってしまいました。街の人にうかがい、こちらに参りました。ロバートと申します」
席を立ち、頭を下げるロバートという男性。動きもスマートで、そつがない。アルフレッドはもやもやする気持ちを初めて感じた。
「アレフレッドです」
「アルフレッド様は本当に幸運な方だ、ローズを妻に迎えることができるなんて。うらやましい限りだ」
「まあ、ロバートは昔から口がうまいわね。彼は隣国の王弟なの」
「ははは、末席だけれどね。自由に旅をして回っているさ」
アルフレッドはローズとロバートの会話に入ることができなかった。とても惨めな気持ちである。ロバートは背が高い。そして顔もよく、感じる魔力は大きい。それにローズと同じ王族の出身。ここにいるので劣っている人物といったら、自分しかいなかった。場違いなのは自分だ。アルフレッドは昼食を食べる気持ちにならなかった。
「ロバートさん、申し訳ないですが、少し気分がすぐれないので失礼します。ローズ、お客さまをもてなしてあげて」
「アルフレッド、顔色がよくないわ。今日は休みましょう? 」
「うん、僕は大丈夫だから。せっかく友達がきたのだから、積もる話もあるでしょう? 」
「でも……心配だわ」
「いいから、ルボワ!ロバートさんを頼むよ」
ローズを振り切って足早に部屋に戻ってきた。こんな惨めな気持ちは久しぶりだ。自分がいかに劣った人間で、自分がだめな人間であるのかを思い出してきた。最近はそういう後ろ暗い気持ちになることはなく、穏やかな気持ちであることが多かった。
自分でもこんな気持ちになるのが、なぜかわからない。天気がこんなだから、自分もこんなに嫌な気分になるのだろうか。ローズはあの男性と並ぶととてもお似合いだ。自分なんかとは全然比べものにならない。いつかローズも、あのような人が出てきて、こんな田舎の領主なんて飽きてどこかへ行ってしまう日がくるのかもしれない。そう思ってきたら、怖くなってきた。
アルフレッドは泣きたい気分になって、ベッドに倒れ込んだ。
それからアルフレッドは数日雨を言い訳に、部屋の外には出なかった。外にでるのが怖くなってきたのだ。またローズとロバートが楽しそうに話している姿をみたら、苦しくなるに決まっている。自分がみじめになるに決まっている。そういう汚い心を知りたくなかった。なんでこんな気持ちになるのかアルフレッドはよくわからなく、ただただベッドの中にもぐりこんで怠惰に一日が過ぎていった。
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