乙女ゲーム迷宮~隠れゲーマーの優等生は、ゲーム脳を駆使して転移を繰り返す先輩を攻略する!~

森の木

第32話 終 女子高生、ハッピーエンド

「アラキ大丈夫か? 」


 先輩とヒカリは、公園のベンチに座っていた。ヒカリが泣いてしまったので、ベンチに座って落ち着くまで先輩が傍にいてくれた。ヒカリはようやく涙がとまってきた。


「すみません」


「アラキはどこまで記憶がある? 」


「全部だと思います。あの不思議な世界に行って、先輩を助けなければならないって言われて。それで、魔女に出会って」


「俺と同じだ。やっぱりあのことは夢じゃなかったのか」


「でも、先輩とわたししか覚えてないみたいで」


「アラキは、あのエリって子は魔女だと思うか? 」


「エレノアですよね、エリって。あとアキラって人は、リシュアンに似ていると思いました」


「やっぱり。俺も初めて見たとき、そうじゃないかって思った。もしかしてエレノアの力で、彼らは転生したのか? 」


「そうかもしれません。エレノアとリシュアンが、もう一度やり直すために。エレノアの力がそうさせたのかもしれません」


「そっか…………、でもリシュアンってなんでエレノアから姿を消したんだろうな。特に言い訳してなかったし」


「確かに。軽薄そうだから他に好きな人でもできたのかなと思ったんですけれど」


「実は目が覚める前に、リシュアンの記憶みたいなのが頭に流れてきたんだ」


 先輩は話してくれた。意識を失う前に、見えたリシュアンの記憶。
 リシュアンは長い間、エレノアと一緒にいて力の均衡が崩れてきたことに気がついたらしい。エレノアとリシュアンは世界を作ったころから存在していた。世界が広がりをみせたときに、その大きな力二つが傍ににいることは世界のバランスを崩すことになったそうだ。それを察知したリシュアンは、エレノアから離れるしかなかったということだ。エレノアには理由を告げず、彼女を遠くから見守っていたという。


「リシュアンは、エレノアを好きだったのでしょうか」


「長い間の話だから、恋愛感情だけで片付けられないことかもしれないな。でもリシュアンはエレノアの存在を気にしていたのだから、憎らしくは思っていないかも」


「でも、人間になることによって。今度は一緒になれるとしたら、エレノアとリシュアンは幸せになれるかもしれないってことですもんね」


「新しい命として生まれたのだから、過去にとらわれないで、エレノアはエリとして。リシュアンはアキラとして生きればいいと思うよ」


「そうですよね、自分でハッピーエンドにならないと」


 お互い笑顔になって頷いた。そして今度、先輩とデートをしてみようと約束した。先輩は部活が休みで、ヒカリもアルバイトがない日に。まだお互い知らないことが多い。たくさん時を重ねていって、お互いを知っていって。たくさん思い出を増やしていきたい。いつか、自分が選んだことが、ハッピーエンドだったと言えるように。


「どこか行きたい場所はあるか? 」


 先輩が少し緊張したように尋ねてきた。もちろん答えは決まっている。
 だがヒカリは、少し困ったように首を傾げた。


「うーん、迷います。行きたいところがたくさんあって」


「そうだな、候補はいくつかあるけれど。じゃあ、とりあえずおいしいものを食べに行こうか」


「喜んで! 」


 二人は笑い合った。
 ヒカリは、先輩と手を繋いで公園をあとにした。










『ワンダーラビリンス。乙女ゲームの迷宮。
 いくつもの選択肢を選んで、迷宮から脱出したふたり。
 ヒカリと先輩は運命に導かれ、いつまでもいつまでも仲良く暮らしました。』




「そうなるといいヤン!ヤンも……僕もこの人生を楽しもうかな」


 公園には男が一人いて、二人が遠ざかっていくのを見守る。片手にはタヌキの模様があるケースに覆われたスマートフォンがある。
 二人以外に、記憶がある人物。今世の瞬く人生を楽しむように、遠い宇宙にまたぐ星空を眺めると、彼も公園を後にした。



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