乙女ゲーム迷宮~隠れゲーマーの優等生は、ゲーム脳を駆使して転移を繰り返す先輩を攻略する!~

森の木

第3話 序・女子高生、転移された世界を見てみる

『ようこそ、ワンダー・ラビリンスへ。
 ここはピュアな乙女が訪れる楽園。あなたは女神へ選ばれ招待されました。
 ミッションはいたってシンプル。これから4つのゲームをクリアすることになります。
 大切な人と出会えれば、あなたと大切と結ばれます。今手にあるこのスマートフォンは、あなたをサポートします。まずはあなたに知恵と勇気と希望をくれる3人を選びました。
 ひとりは、知恵の天使。ひとりは勇気の天使。ひとりは希望の天使。彼女らの助けを借りて、この世界から大切な人を助けてください。』




 そしてスタートの画面になった。電話帳らしきノートアイコンに、知恵の天使と勇気の天使と希望の天使が登録されている。通話ボタンを押せば、どうやら誰かにつながるようだ。
 天使とは大げさな、とも思ったがタヌキからせしめたアイテム。有効活用しなくては損である。もし不良品なら、またタヌキ相手に、無理難題を突きつけて、アイテムをもらおうかとも算段をつける。 
 いくらタヌキに、この世界から出たいといっても、現時点では難しそうだ。それに確証をもてないでいるが、先輩を巻き込んでいるようだ。


 ただ、タヌキが妄言を吐いているだけで、先輩はこの不可思議な事態に巻き込まれていない可能性もある。がそれを確かめる術が今はない。手元にあるのは、このスマートフォンだけ。ほかのもっていた鞄などは、どこかへ行ってしまった。まさに自分の身一つと、このアイテムが頼りである。今はタヌキの言うとおりに従うのがいいだろうと判断した。


 「ほかに機能は……、ロックされている」


 電話帳に登録されている天使3人、それ意外には現在の位置を示す地図。地図アプリを起動しても、時空のゆがみという場所に、点二つ。つまり自分とタヌキがいるらしいことがアプリからわかった。ほかにはメール機能などもあるが、まだ使えないようだ。


 「これからやることはわかったヤン? 」


 「乙女ゲームを4つクリアすればいいのでしょう?どういう系統かわからないけれど、やったことあるジャンルのゲームだから、なんとなくはわかるけれど」


 「じゃあ、この先に進むヤン!まっすぐ行くと、扉が見えてくるヤン!そこをくぐれば、ゲームが始まるヤン! 」


 「扉? 」


 タヌキがピョンピョンと跳ねていった。後ろからみていると、ウサギのような飛び方だ。ただ短い毛がワサワサ動いて、ユニークな動きをしている。ただ見ている分にはゆるキャラで人畜無害そうに見えるのだが、なんせこんなことをしでかしたタヌキに、優しい心をもてはしない。


 タヌキとフロアを歩いて行くと、大きな扉が見えてきた。扉は大きなクローバーのマークがついている。ゲーム脳のヒカリは、この順序でいけば、トランプのようにハートやダイヤがスペードの扉があるだろうと予想した。面白そうだから、ネタバレをタヌキにしてやろうかと意地悪く思った。反応をみてみたい。


 「また、悪いことを考えている顔ヤン。もうアイテムはあげないヤン! 」


 「いやいや、違うことよ」


 「ヤーン…………、まあいいヤン。この扉を通れば、最初のゲームがスタートヤン」


 「そう、ゲーム内でもこのスマートフォンは使えるの? 」


 「入ってもらえば、操作方法はわかるヤン。とにかく扉の前に立つヤン。君は知恵が回るから、下手なことをして魔女が怒ったらさらにハードモードになるヤン」


 「魔女?女神じゃないの?魔女は怖いの? 」


 「こわいヤン、まあ僕と魔女のことはいいヤン。行くヤン! 」


 「はーい」


 少し疲れを見せているタヌキに、仕方ないとばかりにスマートフォンを制服のジャケットのサイドポケットにいれて、扉の前にたつ。そして扉がゆっくり音をたてて開いた。


 まばゆい光が目に差し込む。先は見えない。光が周囲を覆い尽くすと、意識が白く遠くなっていくのが分った。いけない、このままだったら体が崩れる。意識を失いそうになる自分を奮い立たせるが、急激な眠気に勝てることはできなかった。白い光につつまれ、そのあと押し寄せる黒い闇。意識が遠ざかった。







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