神眼の転生者

ノベルバユーザー290685

第19話「ダンジョン潜入、ユニークモンスター?」

 兵士が浅い階層の雑魚モンスターを切り捨てながらダンジョンの奥へ進み、その後ろを勇者達が着いていき、更にその後ろを俺がストーキングしていた。
 訓練担当の兵だけあり、雑魚モンスターを鎧袖一触といった感じに蹴散らしていく様子から相当な手練だろうと思い、ステータスを覗き見る。


 アスラ・アンティ Lv.72
 種族:人間 性別:男
 年齢:53


 HP:22,270/22,300 MP:2,060/2,250
 筋力:2,700
 体力:1,300
 魔力:500
 精神力:2,460
 敏捷力:1,690


 指導役という事もあるのかかなりの実力者のようだ。年齢の割に若々しいが、レベルを上げるとそういう事もあるのだろうか?ウィズに聞いてみたが、やはりレベルとステータスが上がると身体が活性化するようだ。


「これより実戦訓練を始めるぞ、準備はいいか?」


 どうやら、この先にモンスターが一体づつのみポップする部屋があるらしく(ボス部屋?)そこでパーティ毎の訓練を行うらしい。
 これも連日行われているらしく、勇者たちは5人1組のパーティを組み、慣れた様子でモンスターを相手に戦闘を行っていた。
 どのパーティも危なげなくボスを狩り、8組のパーティがそれぞれ戦い終わったところで今日の訓練を終了するようだ。








「……こっちも少し調べてみるか」


 ダンジョンから出て、拠点に戻った勇者達を見届けて俺は再びダンジョンに向かった。


「さ、ボス部屋まで行くぞ」


 道中のモンスターは隠密状態でスルーしボス部屋まで最速で突き進む、気分はRTA走者だ。地球にいた頃も動画を見はしたが、自分でやろうとは思わなかったな。


「到着だ。俺もちょっと腕試しがしたかったし相手になって貰うぜ」


 そう呟きながらボス部屋に足を踏み入れる。
 さっき見た時と同じく、侵入者を感知したのか部屋の中央にボスが出現したのだが……


「なんかさっきのと違うな……?」


 現れたモンスターは種族、体色、体躯、そして纏う魔力の質までもが変質していた。


 その姿は豚から鬼、色は緑から赤に、肥大していた脂肪も無くなり、引き締まった筋肉に覆われた肉体に、魔力はその濃密さ故か常人の目でも揺らぎを見て取れるほどだ。
 そして背中から生えた2本の腕、4つの腕をその怪物は持っていた。


 ついさっき勇者達が戦っていたオークとは似ても似つかぬ『鬼』がそこにはいた。


 こちらを睨めつけたその鬼が炎を宿した拳を構え、腰を引き、空を突く刹那。


「『時破ブレイクタイム』」


 咄嗟に時間を止め、鬼のステータスを覗き見る。




 厭世鬼 Lv.100
 種族:多腕鬼種


 HP:50,000 MP:10,000
 筋力:6,000
 体力:5,000
 魔力:3,000
 精神力:800
 敏捷力:1,650


 スキル 
 拳鬼(Lv-)
 魔闘術(Lv10/10)
 纏魔(Lv10/10)
 虚踏(Lv10/10)
 鬼炎(Lv10/10)








「もしかして、俺ってクジ運悪いのか?」


 停止時間に比例して消費MPの高い『時破』を長時間維持している訳にもいかない。ここは様子を見てみるべきか。


「『円剣』展開、『時破』……解除!」


 時が動き出すのと同時に鬼の拳から放たれる紫炎。
 スキル『鬼炎』による禍々しいその攻撃はしかし、俺の前方へ盾状に展開された8本の魔力剣が高速回転することで、文字通り霧散した。


 火の粉が、いっそ幻想的に揺らめくように見えた。
 もっとも。
 火の粉を更なる拳気で吹き飛ばす鬼が迫っていなければ、気分はより良かっただろうが。


「射出、『幻影』!」


『円剣』を鬼へ発射。同時に太陽の固有スキルである『幻影』を発動し、俺自身の偽物を4人、鬼の周囲に映し出した。
 8本の剣が絶妙な時間差で鬼へと突き向かう、回避は出来ないだろう。


 この攻撃で奴の力を測りたい。


 そんな願いは鬼の身体に触れた剣と同時に砕け散った。いや、力を測るというならこれ以上の結果は無いのだが。
 鬼は身じろぎさえしなかった、この攻撃で傷を負わないと最初から分かっていたのだろう。そこまでこの怪物は強固なのか、眼を見開き見通そうとした。


 《マスター、『拳鬼』です》


「『拳鬼』だって?」


 こちらを睨め付けて拳を構える鬼の持つスキル、その中に『拳鬼』なるものがあるのは一瞬ではあるが確認した。
 そのスキルが授ける力を今一度『神眼』で確認する。


『拳鬼』
 武器に頼らず、己の拳、肉体のみを信じ研鑽し、一種の境地に至ったものが得るスキル。肉体そのもの、または直接装着する武具以外でのダメージを受けない。


「強制的に殴り合いって事かよ。やっぴ武人ってのは自分の押し付けをしたがるもんなのかねえ」


 ともかく、短剣では戦いにすらならないことはよく分かった。新しくスタイルを構築しなくていい分、ステータスが近接戦闘向けなのは幸いだったが。


「いいぜ、そういうことなら付き合ってやる」


 この鬼との戦闘は今までとは一味違ったものになる。そんな予感を抱きながら俺は拳を構えた。

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