英雄は愛しい女神に跪く
この世界の魔法
この世界の魔法は基本属性4つと上位属性4つ、特殊属性2つにその上位属性2つの計12属性存在する。
まず基本属性は『火』『水』『風』『土』の4属性と、その上位属性である『炎』『氷』『雷』『地』の4属性からなっている。
そして、特殊属性は『光』『闇』の2属性で、その上位属性が『聖』『邪』の2属性なのだ。
そして下位属性である『火』『水』『風』『土』『光』『闇』は、レベルはどうであれ、誰しも取得できる属性なのだ。
その理由として、下位属性の下級魔法は、生活一部ともされているため、万人が学べば直ぐに使うことが出来るのだ。
そしてこの12属性は、それぞれ等級ごとに6つの魔法が覚えられる。
さらに、攻撃系魔法と支援系魔法の二種類に分類され、1属性ごとに12の魔法が存在している。
この世界の魔法は、それで停滞してしまった。
その原因は、スキルや魔法レベルの上げずらさだろう。この世界のスキルや魔法レベルは、レベル4以上になると、格段に成長しずらくなる。なので、特出して才能がなければ、レベル5止まりのスキルを多く所有しているものは多い。
俺と優理は例外だがな。
俺達はまず、新しく魔法をいくつか作ってしまった。優理の結界魔法や時空魔法もそうだ。
この世界の魔法も『組み合わせる』と言う概念はあるが、全く別の属性を『産み出す』という概念は存在しないらしい。
伯爵にはオリジナル魔法だと誤魔化したが、全く別物だ。
この世界のオリジナル魔法は、既存の属性を掛け合わせたもののことなのだ。
例をあげるとすれば、教会の神官やシスターが独占している『神聖魔法』。その実態は、『光』と『聖』属性を掛け合わせて作られた『回復魔法』である。
教会は「神が信心深い人間に与えた奇跡の力」などと称して、教会に所属した者のみにしか公開していない。『回復魔法』の優位性をもって、神の名を語りやりたい放題。エレルがキレるわけだ。
勿論この魔法も、優理は使える。
俺と優理の魔法補助のスキルは、他のスキルとは比べ物にならない。俺の『魔導の極』は、全ての属性の攻撃魔法を無詠唱で使用できると言う代物だし、優理の『魔法の極』は、全ての属性の支援魔法を無詠唱で使用できると言うものだ。それは新しく産み出した属性も例外ではない。
ここまで説明すると、やはり俺達の成長速度は異常だ。
やはり、Lv.MAXはだてじゃない。
話を戻すが、さっきの男がいっていた言葉は、俺達以外になら称賛されるべき才能だろう。頭の出来は置いて。
『俺は魔法が使えるんだ!基本属性に加え、上位属性を2属性持っている!どうだ、怖じ気づいたか!』
基本属性は、先ほど説明した通り一般人でも学べば取得できる。だが上位属性は違う。何年も修行し、才能がなければ取得できない。基本属性より格段に取得が難しいのだ。
そんな上位属性を2つも持っているなら、冒険者だけでなく、宮廷魔導師だって目指せるレベルだ。
だが、そんな才能も俺達の前では凡人と何ら変わらない。
「では、模擬戦を始めます。両者準備はいいですか?」
「あぁ!」
「かまわん。始めてくれ」
「では……始め!」
ギルド職員の合図と共に始まった。
「原初の火よ、導きの火よ、ここに集え!火球」
げ、詠唱。恥ずかしくないのだろうか?
男は先手必勝とも言うかのように魔法を放った。しかし、戦闘中に詠唱して、魔法を放つなど、俺にとっては欠伸が出るほど遅い。
動かなかったのは、わざわざ待っててやったのだ。
「……水障壁」
「なっ?!詠唱破棄?!」
勿論無詠唱も使える。だが、他のものには理解できないようなので、俺と優理はあえて詠唱破棄にとどめている。
「もう終わりか?」
「ぐぐっ!なら、これでどうだ!原初の土よ、創造の土よ、ここに集え岩石!!」
頭上に岩石が形成される。詠唱が終わると、岩石は落ちてくるが、遅すぎる。俺は動かないまま紅黒で切り捨てた。
「ま、魔法を斬るだと?!」
「理解できないようならもう一度言ってやろうか?“もう終わりか?”」
売られた喧嘩だ。情けをかけてやる必要はない。
「調子に乗るなよ!」
男は剣を抜いて向かってくる。しかし、素人同然だ。剣先に殺気を感じないし、足運びは無駄が多い、力もないので振りかぶっても剣が丸見え。技術の技の字もない。
俺なら目を瞑ってでも避けられる。
「本気でやってるのか?」
「ハァッハァッ、ッ!な、何故、当たらない?!」
「そんな棒きれを振り回した子供の遊びのような剣、俺が避けられないと?見くびるなよ。剣術とはこう言うことだ」
俺は刀を一度鞘に戻し、低く構える。
いつもやっている居合いの“一閃”。とは別の型だ。俺の剣術は、前世で独学で身に付けたもの。つまり、流派などはない。おれ自身が編み出した技である。
『一閃』や『天斬』と違い、この技は、派手なことこの上ない。まぁ、結果を見ればどれも派手だがな。
相手に分かりやすく見せるなら、これが一番だろう。
「お前に分かりやすく教えてやる───“飛刃”」
いつものように刀を抜き払えば、凡人の目では追えるはずもない。次の瞬間、男の後ろの柱が音をたてて崩れた。つまり、斬り崩されたのだ。
「ば、ばかな?!なんのスキルだ?!卑怯だぞ!!!」
「スキル……ね。言っておくが、お前と戦っているとき、魔法は使ったが、スキルは一つも使ってないぞ。使っていたら、お前などゴミクズ同然だ。これはただの剣術だ」
確かに俺は『武術の極』がある。しかしこれは称号に近い。これを与えたエレルも言っていた。あらゆる武術を身に付けたからこそついたスキルだと。
つまりもともと武術を極めていなかったらつかなかったスキルなのだ。
補正はかかっているが、この戦いにおいて、このスキルは切ってある。俺の実力なら極限まで手加減しても、こいつを重傷にしてしまう。なのでスキルまで切ってやったのだ。
「バカな?!化け物か……!!」
「お前、俺にAランクになったのは金の力だとかなんとか言ったな?それって、お前の方じゃないのか?」
「な、なんだと!!」
俺の言葉に男は反論するが、俺には関係ない。しかし、こんな見てくれだけの冒険者がBランクなど、ほかのBランクの冒険者が可哀想になる。
カザリアなら、この男程度ゴロゴロいる。
「お前程度なら、カザリアじゃDランク。良くてCランクそこそこだろうな」
「ふざけるなッ!!この俺がCやDランクだと?!」
「ふざけてないさ。王都と違って、カザリアは冒険者の最前線。終焉の深森に接してるから、実力が全てだ。でなけりゃ、死ぬ。
ここじゃ危険な討伐依頼なんかはほとんどない。護衛や採取の仕事でBランクなら、とんだお坊っちゃんだ」
「ぐっ!!」
「それとも、お貴族様にでも気に入られたからそのランクか?」
図星を突かれたのか、押し黙ってしまった。
おそらく、この男はどこぞの貴族の護衛をして、その貴族に気に入られた。貴族は冒険者に便宜を図り、襲われたときなどの戦闘の報告をギルドに過剰に報告したのだろう。
なのでたいした実力もないのに、Bランクにまでなったのだと容易に推測できる。
そんなこと、カザリアじゃ通用しない。
「そ、そこまでです!」
職員が終了を宣告したので、俺は刀を鞘に戻した。周りの野次馬冒険者も、あまりのことに呆けている。
しまったな。目をつけられるかもしれん。
「いくぞ優理」
「はーい!」
俺達は颯爽とギルドを後にした。
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