先生転生~魔法の言葉は金平糖~

ぽん

君が代で終止符打てなかったよねって話

体育館の半分は取れると思われる部屋に押し込まれた7人。

誰かが何を言うでもなく、皆一様に適度な距離感を保ちつつ壁に背中を付けて座り込んでいた。

本来ならば馬鹿みたいに騒いでジタバタしてどうにもならない状況に絶望するのだろうか。

生憎とそんな幼稚な行動を取れるほど子どもではなく、またその気力もなかった。

ただただ無言で黄昏るしかなかったのだ。



どれ程の時を過ごしただろうか、不意に部屋の扉が開いた。

「皆様、お父様がお目覚めになりました。ついてきてください」

皇女は険しい目付きで一同を睨むが中里だけには視線を送ることをせず踵を返した。

黙って従いついていくと意外にも簡素な扉の前で皇女が足を止めた。

「こちらです。どうぞお入りください」

先頭にいた朽木がゆっくりノブを回して押すとギィと粗末な音が鳴り扉が開く。

「あぁアリア、救世主を連れてきてくれた……の……か…」

にこやかに微笑んだ天帝はそのまま固まった。

召喚直後に気絶した天帝は知らなかったのだ。

転生してきたのはこんないかにも役立ちそうにもないくたびれたおっさんだということを。

「なぜだ…!若くてパワーのある者を呼び出す術式であったはずだ…!あぁ、なんてことだ…この世界は終わりだ。私も終わりだ……う、うわぁぁぁぁぁぁん!!!」

突如として号泣しだした天帝に誰もが…そう、皇女までもがこう思うた。

即ち─

「は?」

─である。

そしてこのあと、収拾のつかない事件現場(笑)が本物の事件現場となる。


ドサッ

なんの前触れもなく天帝が倒れる。

「…は?」

もう、踏んだり蹴ったりである。



その後のことはわざわざ記すまでもない。

ただひとつお伝えすべきことと言えば、これだ。

【悲報】天帝急逝。

天帝急逝の謎は医師、科学者、幾多の知識人が究明しようと手を尽くしたが、ついぞ分からなかったという。



「ショック死だろ?」

「ショック死よね」

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