デッド ヴァンガード

ザクキャノン

第1章2話 それぞれの自分

   2階の食堂は誰もおらず特殊部隊員と末安、横石は休息をとることにした。
   「それぞれ誰が誰か分からないから自己紹介をしてくれないか。はい小隊長どうぞ!」
   末安はふざけるように言った。
  「俺はこの部隊を指揮する椚原健斗。元海上自衛隊特殊部隊SBSで3尉で事故を機に中途除隊後の再就職で今に至る。」
   小隊長は答えた。
   「俺は中里涼介。笑うなよ。俺は元警察官で暴走族の奴を拳銃で撃ち殺して懲戒免職。始末書書かされてクビにということ。そして今に至る。」
    内気そうな隊員は答える。
    「俺は杉田実。元陸自普通科レンジャー
で半グレをナイトクラブで撲殺して刑務所にいた。釈放条件でこの部隊に加入させられたってとこかな。逮捕時の階級は陸士長。」
   細マッチョな隊員も答えた。
   「俺は石蔵修二。元空自警備小隊。退職時の階級は士長。任期満了で辞めたが生活が苦しくて拾われたとこが今のところ。」
   「俺はマイク金谷。日系アメリカ人で元海兵隊。横須賀の基地周辺で車両事故起こして人殺してから不名誉除隊処分。そして今に至る。」
   「俺はウヨン杉本。日本と韓国のハーフ。元陸自の整備部隊にいたが韓国側に情報を流した容疑で懲戒免職。理不尽な世だよ。」
   「俺は内田諒太。元SATで暴力団事務所を摘発するときに連射で組員と幹部を射殺してクビになってここで仏同然としている。」
   「俺は川内義和。元海上保安の警備隊。俺を見下してた救難隊。俗に言う海猿をぶん殴って膝蹴りで鼻の骨と歯を折って暴行障害で捕まってクビ。そして今に当たる。」
   みんな自己紹介をした。
   「うんうん。それぞれガンダムのスピンオフに出てくる懲罰部隊のキャラみたいに事情があるんだね〜」
    末安は相変わらずふざけていた。
   「あんた安堵すればふざけやがって。あんたの身元は不明なんだし自己紹介しろよ。人に言うだけ言って自分がしないのも示しがつかんだろ。」
   小隊長はナイフを向けて言った。
   「俺は陸自を辞めてフラフラ。そして福岡市照葉や和白のトライアルでスルメイカ万引きして捕まって前科揉み消し免罪条件と高額な報酬と家族の暮らしの保証を条件に特務機関のエージェントになる羽目になった。和白や照葉は美女や美少女が多い。しかも女子高生や女子大生のチアガール達の間では馬鹿すぎるレジェンドという刻印を押されたと刑事と公安捜査官に言われた。博多美人に笑い者になってばかりじゃメンツが台無しだからな。挽回がてらそうしてるってとこ!」
    末安は笑いながら答えた。
   「スルメイカ万引きで捕まった〜?何じゃそりゃ!そりゃ警察も公安も内閣調査室も呆れるしスパイもゲラゲラ笑うわ。しかも博多美人に笑われるって情けないと思わんのか?しかもJK以上のチアガールに馬鹿レジェンドの刻印を押されてからよー」
   椚原小隊長は説教がましく言うが笑いを堪えていた。
    「説教垂れてる割には随分と笑い堪えてるじゃ無いですか?博多美人のJK以上の女子から馬鹿レジェンドの刻印押されたダサ男身分から特務機関のエージェントに格上げなんで今が天職なのかもしれませんね。」
   末安はP9ピストルの弾薬の確認をしながら言った。
   「ところで椚原さん達の部隊は訳ありで集まった感じですけどどんなことでそうなったのですか?」
   末安はやっと真面目な質問をした。
   「俺たちは外資の民間軍事会社「デスライン社」の一部からの生え抜き特殊部隊ってとこやな。危険度の高い任務をつかせるために俺らみたいな訳ありを雇用して利益を上げているのさ。依頼はニューロード社がしてきた。この病院はニューロード社が半分運営してこそ成り立ってるからな。」
   椚原小隊長は落ち着いて答えた。
   「あんたらに依頼せずに警察に通報したら良いのに?」
   末安はポカンとした表情で言った。
   「あんた、本当に馬鹿だな。特務の連中はこのアホを使うなんて神経の無能さを疑うよ。ここではやましいことをしてるから警察に言えずにいるんだろうよ。さっきの地下研究施設を見ただろ。明らかに違法な人体実験をしてたろうに。」
   杉田は末安に説明した。
   「今からここを出てこの階を調べるぞ。」
   椚原小隊長は事後の指示を出した。
   順調に食堂を出て壁沿いを進んでいると前方に血みどろな白衣を着た看護師の凶暴感染者と入院着を着た凶暴感染者の群れが現れた。
   「クソ!ここにも潜伏してたのか!」
   内田がMP5Jサブマシンガンを連射で射撃を開始した。
   凶暴感染者達は倒れていくがまだ湧いてくる。
   「手榴弾ならなんとかなるはず!」
   末安は戦死した堺の装具から回収した手榴弾を下投げで転がすかのように投げた。
   凶暴感染者の群れは粉砕されるように爆発して肉片が壁に飛び散った。
   「吹っ飛ばされたぞ!そりゃすげー。手榴弾、グレネード最高じゃん!」
   末安は凶暴感染者の群れが無残に粉砕される様を見て楽しんだ。
    特殊部隊員は射撃を辞めてホッとため息をついた。しかし安心するにはまだ早い。凶暴感染者の群れの第2波が現れた。その時、川内が噛まれた腕をみんなに見せた。
   「俺の体にガタが来ているようだ。みんなすまん。おい、スルメ!この装備と武器を有効に使え。ゲームじゃないからな。」
   川内は末安に装備と手袋を渡して銃火器も近くに置いた。
   「地獄で会おう!」
   川内は最後にその一言を言って手榴弾を持って群れに突進して最後に自爆した。
   末安はポカンと眺めた。
   「おい、早く装備を身につけてずらかるぞ!」
   中里は末安を小突いた。
   末安はふと我に返って装備を身につけた。そして形見となる大型ナイフとM4A1自動小銃、ベレッタM92ハンドガンを装備した。それでもまだP9ピストルを使って残りの凶暴感染者を射殺している。
    「後ろ先の非常階段を使って下に降りるぞ!」
   全員バタバタ走って非常階段を降りてさっきいた1階に再び向かった。
   2階で爆発した手榴弾の影響で片足を損傷した凶暴感染者は這いずりながら移動して残りの群れに踏まれながら前進している。
   診察室から絶命したはずの堺が白眼を向きながら早歩きで向かってきた。
   「悪く思うな!許せ!」
   横石が猟銃で顔を撃ち抜いた。
   凶暴感染者の仲間入りした堺は鼻の下から上が砕けて頭部も無くなった。血を流しながら膝をついて倒れる。
   「これで仲間が死んだのは3人目だな。明日は我が身だ。気を抜くなよ。脱出するまでが勝負だ!」
   椚原小隊長は全員に言った。
   「早くここから抜け出すにはお互い助け合う事が大事だ!ひとりで行きたいなら止めはしない。死にたくないなら後に続け!」
   椚原小隊長はまだ部下達に助言をする。
   「確かに。生き延びるには手を差し伸べ合うのが最も無難だ。明日も明後日も生き延びる事を考えよう。」
   杉田は言った。
   診察室に入って書類を調べるとカクテル療法の資料の中にウイルス実験のレポートが見つかった。
   実験されたウイルスの名前は新型ラブドウイルスや狂牛病の間の立ち位置となるNMLウイルスだった。症状は筋肉痙攣と強い頭痛が起こり吐き気や無気力感に苛まされて脱水症も起こして意識を失う。そして起き上がった後に凶暴化して暴れ回り非感染者を襲うようになるということだった。
   「奴らはこんな如何わしい研究までしてたのか?その研究は何のためにされてたのか気になるな。」
   杉田は疑問に思ってつい口を開いた。
   「金だろ。その病原菌ウイルスを開発研究して他国の軍事機関やテロ組織、マフィア組織に売って莫大な利益にするんだろうよ。俗に言う生物兵器ってところかな。さっきのやつら見ただろう。あんたらみたいな屈強な戦士を見てもビビリもせずに襲ってくる姿を!そいつらを軍事利用するなら無人兵器や生身の兵隊はいらない。ましてやガンダムのような兵器も使わず効率よく戦争できると言う事だろう。」
   末安は思い当たる事を話した。
   「生物兵器?日本でそんなやばいのを作るはずがないだろ!」
   元SATの内田は半分顔が引きつっていた。
   「いや、分からんよ。実際にとあるカルト教団が東京の地下鉄でサリン事件起こす前の2年前になる1993年6月に皇太子パレードでテロを起こそうと炭疽菌使用未遂事件を起こしているからな。」
   末安は最初とは正反対にまともに話し始めた。
    「末安が真面目になり出した。」
    日韓ハーフのウヨンがからかう。
    「俺は特務機関のエージェントだと先程言ったが実はこの飛鳥山精神病院を内偵するように公安調査庁から特務機関を通して依頼が来た。ほかの要員もその病院に潜入して行方が分からずじまい。調査する根拠は奴らが病院内で非人道的な人体実験をしているんではないかと言う内容だった。」
    末安は自分の与えられた任務の概要を全員に打ち明けた。
   「ゾンビゲームのし過ぎだろ。厨二病みたいな発言が多いしな。」
   杉田までからかいだした。
   「俺も確かにそう思ったよ。バカバカしい。そんなのあるはずないだろうとね。しかし違法行為の証拠を掴むべくして潜入した俺と同類の要員達は行方不明になって今でもどうなったかが分からない。機関らはその病院に疑問を持つようになって俺に内偵するように依頼した。それまでがあんたらと出会う経緯って訳よ。」
   末安は真剣になって話した。
   「さっきは悪ふざけして悪かった。ところでその研究はよくよく考えるとLMLウイルスだったけな?それを開発して事故が起こって俺らがこの場所に送り込まれてた訳だろ?」
    ウヨンは末安に聞いた。
   「俺もふざけてたからお互い様よ。あんたらが送り込まれたのは俺が応援として依頼した訳ではないしな。小隊長が言ってた通りニューロード社がクライアントだからな。」
   末安は特殊部隊が送りこまれた訳を話した。
   「てことはニューロード社は俺らを生贄に現場に送り込んで事態を隠蔽させようとした訳か?しかしこれが公になれば奴らは責任取らされてどうなるかやな。」
   杉田は先の事を推測し始めた。
   「おそらくもし政府とニューロード社の繋がりが出てくれば死の商人と密約してたと世間に疑われてややこしくなるから警察も使えないんだろうね。」
   横石は会社の悪事の隠蔽論を話した。
   「話の趣旨は大体分かった。これからまた移動するぞ。」
   小隊長は強気で言った。
   全員、通路を歩きながら凶暴感染者をナイフで撃退しながら進んでいった。
   末安は突然動きを止めた。
   「どうした?末安!なんか忘れ物でもしたか?」
   石蔵は叫んだ。
   末安は相変わらず放心状態になった。同じ特務機関のエージェントで顔の知ってる男が変わり果てた姿で現れたのだ。
   「嘘だろ…」
   末安はP9ピストルをゆっくりと構えた。
   凶暴感染者と化したエージェントは清掃員の格好でジャンパーの下に防弾チョッキを着ていた。下のトレーナーの上に薄い生地の防弾チョッキがジャンパーのチャック越しから見える。
   「クソ。手柄までもう少しだったように運のついてない奴だ。」
   P9ピストルの引き金を引いた。
   ドン!となる銃声と共にエージェントは頭に風穴開けて後ろに倒れた。
   「おい、どうした?」
   石蔵は聞くが末安は反応しない。
   「末安!返事しろ!無視すんな!」
   小隊長は強気で言った。
   「こいつは梶坂宏人捜査官。女子から見て馬鹿な俺でさえ誇れる優秀な捜査官で唯一犯罪歴の無い男だった…」
   末安はひざまづいた。
   「馬鹿な野郎だ。死んでもいいような俺とは違って自衛官や警官、消防士より男らしくて潔かったのに…こんなところで死にやがって…」
   末安は開いた梶坂捜査官の目を閉じさせてあげた。
   「感傷に浸るのは後にしろ。今を生き延びるのが先だ。」
   椚原小隊長は手を差し伸べて末安を起き上がらせた。
   「彼とらどういう関係だったんだ?」
   ウヨンは末安に質問した。
   「梶坂捜査官は俺が任務を引き受ける前に銃の扱い方や尾行のコツまで教えてくれた先輩。歳は同じだけどね。表向きは病院清掃員として潜入していたがいつのまにか連絡が取れなくなっていた。」
   末安は先輩の内情を話した。
   「ちらっと韓国の友人から聞いたが対日工作をするNIS(国家情報員)の捜査官もこの病院周辺で行方不明になっているらしい。あんたの先輩の二の舞になった可能性も高いな。」
   ウヨンも衝撃の事実を話し始めた。
   「と言うことはニューロード社関連は今のところ日本と韓国に目をつけられている感じか?」
   椚原小隊長は言った。
   「日韓だけじゃないな。アメリカのNSAやDHS(国土安全保障省)もマークしている。多国籍企業にしては胡散臭い部分がたくさん出てきてるらしいからな。会員もいて商品の進め方がマルチ商法まがいで訴えかけた者まで出たからな。」
   末安はニューロード社の悪事を特殊部隊員と横石にぶちまけた。
   いくら危険な橋を渡り歩いて来た特殊部隊員達も流石に実際のニューロード社の裏の話を理解して絶句していた。本当に違法な人体実験をして生物兵器を開発して莫大な利益を得ていたという事実が日本にあるとは誰も思ってもいなかった。
    凶暴感染者はまだ病院内の各部屋におそらく隠れており、いつ襲ってくるかは分からない。
   「だいぶはけたかもしれんが油断はするなよ。」
   椚原小隊長は言った。
   「外に被験体が逃げ出してなければ良いがな。」
   末安は呟いた。
   「一応、事故発生当初には防いだんだから何とかはなってるだろう。」
   ウヨンは全員を安心させるための憶測を言った。
   「万が一、不測の事態で外に出てたらなおさら厄介だからな。」
    椚原小隊長は一呼吸おいて言う。
   背広や作業服を着た凶暴感染者がうめき声を上げながらもたつくように現れた。片手には鉄パイプやパイプ椅子を持っている。
   内田はMP7サブマシンガンを慎重に発砲した。4.6ミリ弾が頭にめり込むと同時に倒れてパイプ椅子を落とした。そこに足を引っ掛けて他の凶暴感染者も転んだ。しかしまた立ち上がり威勢良く襲いかかろうとしてくる。末安はP9ピストルを連発で撃って一歩ずつ引いていた。
   上半身裸の凶暴感染者達が現れる。腕にはバーコードキーのある輪がされており被験体であるのが伺えた。
    「実験体のお出ましってところか…」
   末安はP9ピストルを構えた。
   照準を合わせて顔面を狙う。そして引き金を引いて1体ずつ倒して行くが弾が切れた。末安はP9ピストルを1体の凶暴感染者に投げつけた。
   そしてM4A1自動小銃に取り替えて迫り来る凶暴感染者を撃ち殺す。
   椚原小隊長の懐に凶暴感染者達が入り込み上腕筋を噛みついた。
   「くそ!俺もとうとう噛まれたか…不覚な…」
   椚原小隊長は噛みついて来た凶暴感染者を振りほどいて顔面に銃弾を見舞いした。
   次々に現れる凶暴感染者をハンドガンで駆逐してナイフで頭をぶち割いて首を切り落とし前方にいるのを前蹴りをして突進して行く。群れで襲って来たところをかつての部下がしたようにあるだけの手榴弾のピンを抜いて自爆した。
    「畜生!椚原小隊長が戦死した。」
    ウヨンが叫ぶ。
   「末安!どうする?地下に戻って引き返すか?」
   元海兵隊のマイクが指示を振った。
   「帰来地点がそこなんだしそうしよう。」
   末安は地下に戻ることを承認した。
   「地下までもう少しだ。気を抜くな。」
   内田は仲間達に言った。
   エレベーターまで行き内田がボタンを押した。
   「もうすぐでエレベーターが来る!それまで持ち堪えろ!」
   末安は仲間に粘るように言う。
   M4A1の銃口から飛び出る5.56ミリ弾を凶暴感染者達の顔や頭に浴びせて横石もベレッタM92Fハンドガンで応戦していた。
   エレベーターがようやく来て内田が飛び乗ろうした。
   「嘘だろ!クソ!」
   内田はハンドガンをエレベーターに向けた。
   エレベーターの中には白衣や背広、作業服を着た凶暴感染者達が密集しており内田はあっけなく引きずり込まれてしまった。
   末安は凶暴感染者の群れにM4A1を連射で射撃をするがエレベーターは閉まってしまい内田を救出する事は出来なかった。
   「向こうの階段がある!」
   横石は階段を指差した。  
   「名案だ!」
   石蔵は閃いたように言った。
   全員階段に向かい非常ドアを閉めた。
   階段の場所にも凶暴感染者がおり横石がタクティカルペンで頭や首を何回も刺して撃退する。階段を降りて地下研究施設に向かうと凶暴感染者がいないことを確認した。
   「これまで死んだのは室町、堺、川内、椚原小隊長か…」
   マイクはうなだれた。
   「でもあんたは生き残ったんだからそれだけでも幸運に思うしか無いよ。」
   末安はちょっとした慰めごとを言った。
   「ちょっと隠れろ。」
   ウヨンが手を後ろに振って言った。
   廊下に防護服を着た凶暴感染者がおり背中に火炎放射器用のボンベを背負っていた。周りにも白衣や上半身裸の被験体もおり片腕が無い個体や眼球が飛び出ている個体までいた。
   「あのボンベを撃てば周りにいる奴らも道連れに出来るがどうする?」
   末安は横石に聞いた。
   「ボンベを撃ってみよう!」
   横石は即答で答えた。
   「ならアメリカで鍛えた射撃の腕を信じて一か八かでやってみよう。」
   末安は横石にお願いした。
   横石は末安からM4A1自動小銃を受け取
ってボンベを狙撃した。
   防護服の凶暴感染者はボンベに穴が開いて宙に舞うように浮き上がって飛び天井や周りの凶暴感染者にぶつかったりしながら最後は爆発して一網打尽に凶暴感染者達は粉砕された。
   「すっげ〜!めっちゃ面白い!あそこまで行くとは想像もつかんやったわ!」
   末安は防護服の凶暴感染者が木っ端微塵になる姿を見て興奮した。
   防護服の凶暴感染者の肉片や周囲の奴らの眼球や手、明日、指などが散らばっており台車には臓器まで絡まっていた。ボンベの破片が遮蔽物を刺すように張り付いて下手すれば特殊部隊員を含め末安や横石も死ぬところだった。
   「奴を撃退してのご感想は?」
  末安は手をマイクにして横石の口に近づけて言った。
   「アクションゲームのようなスペクタクルで楽しい。もう2度としたくない!」
   横石は笑いながら言った。
   「ほとんど上の階に登ってしまったのか奴らの姿が見当たらないな。」 
   中里は少し安堵していた。
   「ようやく一息つけるな。正直、デジカメに証拠の写真を抑えること出来たしこの違法実験の証拠はバッチリ。データはコピーしてこのSDカードに詰まっている。末安は特務機関に報告せなな。」
   杉田は末安にSDカードを渡した。
  「ところであんたらは傭兵から選ばれた特殊部隊だろうけど仮にこの施設から生き延びて生還出来たところでどうなるのかな気になるな。」
   横石は今後との事を聞いた。
   「おそらく使い捨てだしニューロード社の悪事に立ち向かう者として命は狙われてる可能性は高いからな。そこは上手いことやり過ごすしか無いのかもね。」
    杉田は自分なりの今後の事を話した。
    この事件で分かったことはニューロード社は秘密裏で精神病患者を実験台にして違法な人体実験、捕獲した外来生物などを使って新薬、遺伝子改造実験を繰り返ししている事が特殊部隊の調査の過程で判明した。以前から特務機関はこれらの実態について気になっていたようだが確実な根拠のある証拠として見つけることが出来なかった為に捜査もする事が出来ず潜入捜査を送っていた。
   しかし潜入捜査官も行方不明になり難航しておりたまたま調査している1人であった末安貴文が特殊部隊の動きに巻き込まれていく中でお互い対立しながら助け合ったことで生き延びる事が出来た。横石も狩猟帰りに巻き込まれたが無事今のところ生きている。
    末安と横石、その他特殊部隊員らは監視カメラを破壊して来た当初のパスコードを入力して先まで進み地上に這い上がるかのようにして脱出した。
    
   ニューロード社 不正行為 違法行為 表

   2018年  7月
仏法系カルト教団顕不会と共に試験段階でない抗がん剤を癌患者の信者に不法に売りつけている。販売員を薬事法違反で逮捕。
   2018年  9月
  ダイエットサプリに含まれる大豆が遺伝子改造種であるにも関わらず天然品だと偽りマルチ商法で売りつけているニューロード会員を特定商取引法で逮捕。過去にもマルチ商法をブラインド勧誘した前科があったことが判明。
2018年 10月
再びLSDを顕不会と共謀して精神病患者に飲ませていた。
2018年  11月
北の工作員に化学兵器殺人バクテリアガスを不正に提供。
2019年  2月
ニューロード社に潜入捜査していた韓国国家情報員の特命捜査官が行方不明になる。
2019年4月
中東のイスラーム過激派組織からコロナウイルス系生物兵器を高額な資金で購入。目的は過呼吸を起こさせる生物兵器の開発のため。
2020年 1月
アフリカ大陸の小国ザンゲアに医師団の派遣を名目に実験段階の新薬を子供を使って実験。表向きはエイズ治療目的で行っていたが実は新薬効果を確かめる人体実験だった。
 2020年 2月
太平洋に浮かぶ孤島「山奈島」の旧日本軍施設跡を利用して新薬実験施設を展開。
2020年 3月
ニューロード社の山奈島新薬実験施設長に防衛大学主席卒の若き元1等陸佐の真壁武丸氏が就任。
2020年5月
山奈島に外界の文明に囚われない島民が生活していることが分かり島の支配者と真壁氏が生活支援を条件に島の一部を譲渡してもらう事を交渉。
2020年6月
北海道のロシアンマフィアに生物兵器の材料となる炭疽菌のデータを転売。
2020年7月
民間軍事会社デスライン社と提携。その前までは独自で警備安全部門を作っており不正に中ロ韓の3カ国のマフィアから不正に武器を売買していた。
2020年11月
違法人体実験で丸儲けした多額の金銭を中国共産党と北朝鮮国家安全保衛部に横流し。
2021年4月
太平洋南方のドアン島で発見された未知のラブドウイルス科の遺伝子とBSEやDNA、RNAウイルスなど様々な性質を組み込んでNMLウイルスの研究に着手する。それまでの最初のウイルスを「始祖ラブドウイルス」と呼んでいる。
2021年5月
世界進出をして手にしたノウハウを元に韓国支部の感染症対策研究所地区で死刑囚を実験台に人体実験を開始するも失敗。
2021年5月
ハワイから離れた位置の島「プラカ島」で米軍からの依頼で死を恐れない兵士を造る実験に参加。実験体は暴走して射殺され試験は中止。
2021年5月
飛鳥精神病院に潜入中の特務機関エージェントが行方不明。
2021年5月
飛鳥精神病院にて研究実験事故発生。

                                           以下末安貴文

   末安は過去の要員から申しうけされたメモ帳をあらかじめポケットに入れており隊員も拿捕した際に敢えて没収しなかった。
   外には防護シートが被せられた建物が多くあり防護服を着た人達が数人いた。
    末安は自動小銃で防護服の人達を射殺した。
   「ここで別れよう。また何かあった時、この番号に電話してくれ!」
   生き残りの特殊部隊員や横石に電話番号の書いた紙切れを渡す。
   最初に乗ったバンに乗りエンジンをかけて特殊部隊員や横石を乗せて見送った。
    「石蔵要員。運転頼んだ。」
   末安はそう言ってその場を去った。
  

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く