crew to o'linthart (VRMMO作品)

ノベルバユーザー290341

8話. クロノス学園 / 004. 東雲ここあ



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ユイナさんの話によれば、クルーやギルドへの勧誘はこれまでに何回かされた事があったが全て断ってきたらしい

少人数より大人数でプレイしたほうが断然効率がいいし、クヲーレのプレイヤー達の大半はほとんど大型ギルドや仲間内でのクルーに所属している。

ソロでプレイしてるプレイヤーは、ひと握りしかいないのは事実。

それなのに今まで加入しなかったのは、言い方は失礼かもしれないけど居心地が良さそうなギルドやクルーに巡り会えなかったかららしい。
友達とのんびりプレイしながら、クヲーレ内の美しい景色を楽しむのが好きなユイナさんにとって、最近のギルドの方針が合わないのも無理はないと俺は思う。

ここ最近のギルドやクルーの主な目的はダンジョンの攻略や未到達地点へのマッピングで、そういったプレイヤー達で作られた団体はゲームの『攻略』を第一に考えているので、景色を楽しんだり、のんびりとプレイするユイナさん達の様なプレイヤーとは意向が合わないのだ。


だからって、そういうプレイヤー達は悪いとは言えない。なぜなら一人一人の楽しみ方ってものがあるからだ。それに最前線で頑張ってくれている攻略派のプレイヤー達がいるおかげで新しい絶景スポットや新しい都市、フィールドが見つかったりもするからだ。プレイヤー達は全員生身の人間なのだからプレイの仕方はみんなバラバラでそれぞれ楽しめればそれで良いはずだ


俺たちは現実世界での身内でやってるからこそ、攻略の為にフィールド開拓に出かけたり、時にはティアの機嫌を直すために景色が綺麗なフィールドや可愛いモンスターがいるフィールドに出かけたりもするし、好きな時にお互いのやりたい事に合わせてゲームを楽しめる。

そんなところにユイナさんは、魅力を感じたのかもしれない。


「こんなに仲良しなパーティーを見たのは初めてです。」

「いやあ、それほどでも~」

くねくねするなイナト、気持ち悪い。

「ユイナさんももう仲良しですよ?これからもっと仲良しになりますっ」

ティアがそう言うと、ユイナさんは満面の笑みを見せてくれた。


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「あの、条件とかって訳じゃないんですけど・・あたしの友達も、その・・誘ってもよろしいでしょうか・・?」

心配そうに俺たちを伺うエルフの少女に、俺たち4人は、一度目を合わせてから、4人全員ほぼ同時に答えた。

もちろんです。

「嬉しいです!一度ログアウトしたみたいなので、連絡してみます、しばらくすればここまで来てくれると思います」

その後、ユイナさんのフレンドが来るまで、俺たちはこれからどうするかを決めることにしたのだが、結局方向は決まらずに15分が経とうとしていた。

せっかく人数が増えたことだし、クルー設立のタイミングは今しかないと言うソラだが、それじゃあ、クルーズ・ベースをどうしよっか?という問題点にひっかかり、話が逆戻りになる。

「ん~、困ったなあ」

「ですねえ」

「せめて新しい領土発見の目途がついてれば動きやすいんだけどなあ」

「情報が出たのはここ最近だし、まだかかると思うよ?」

ソラに返事をしながら、俺の方をチラチラ見るイナト。言いたいことは分からなくはないが、ほんとにそれだけは出来れば避けたい・・・、だけどせっかくユイナさんがパーティーに加入してくれるって言ってくれてるのに、このままクルー設立を先延ばしにするのは申し訳ない。

「仕方ないな、それじゃあ」

決心して、立ち上がった俺を見る一同。イナトはおっ?お?と言いながら囃し立ててくる。




「ダスト砂漠に・・行きますか」

「そうこなくちゃ!」

「俺たちでマップ開拓か!?」

「砂漠・・暑いけど頑張る」

「私も頑張りますっ!」

ついに言ってしまった。
まあ、流れ的にとはいえ俺から言い出したことだし、頑張るつもりではあるが。

「ああ、どうせならクルー設立記念は新しい領でやろうぜ」

と、柄にもなく格好の良いセリフを吐いてみたのだが、そう簡単には行かない事くらい俺が一番よく知っている。

「言ってくれるじゃんか」

「新しい領土、楽しみですっ!」

メンバーはまだ全員揃っていないが、俺はこいつらとなら出来るという淡い期待を抱いていた。



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「よし、シズルにVM送っといたからパーヴェルに着き次第、出発出来ると思うよ」

宙をタップしながら、ソラがメンバー全員に向かって言った。

「あの、シズルさんとは?」

「俺たちのパーティーメンバーでソラの妹なんだ。合流したら紹介しますよ」

一応家族というのは個人情報に入るがユイナさんなら平気だろう。ユイナさんが個人情報を流す人とは思えないし

「妹さんとゲームだなんて、兄妹仲良いんですね!」

目をキラキラさせて言うユイナさんにソラは少々照れながらもそうでもないですよ、と短く答えた。

「21時かあ、これから合流して出発しても今日はせいぜい2時間くらいが限界かな」

「そうだね」

「あの、現実世界での事を聞くのはマナー違反だと思うのですが…みなさんはもしかして学生さんなんですか?」

「はい、全員学生なんでそんな遅くまでゲームできないんです」

隠す必要もなかったし、苦笑い混じりにそう言うとユイナさんは驚きに似た表情を見せたあと、ほっとしたように胸に手を当てた後に続けた

「何故かはわかりませんが、みなさんには凄く親近感が湧きますっ!」

にこっと笑うと、わたしも今学生なんですと彼女は言った。

「そうなんだ!あっ、そうなんですか」

「敬語じゃなくても、私は気にしませんよ?それにもしかしたらみなさんの方が歳上かもしれませんしね」

「そうですか?じゃあ、おれは遠慮なく!よろしくユイナ」

「ありがとうございます、イナトくん」

イナトとそういったやりとりをしてると、ユイナさんはおかしそうに口に手を当ててくすっと笑った。

「いきなり呼び捨てかよ」

「え?なに?ソラ羨ましいのー?」

「そういう事じゃねーよ!まあ、いいや」

「ユイナさん?」

コントを始めたイナトとソラの横で、静かにしていたティアがユイナさんが自分を見てるのに気づき首を小さく傾げた

「ティアちゃんは不思議と歳下な感じがします」

「そう感じても仕方ないですよ、姫はみんなの妹ですから!」

腕を組んでなぜか偉そうにしているイナト。

「イナト先輩には妹って言われたくないです」

「なんでだよーひめー?」

「なんでもです 」

そんなやりとりをしてる二人のそばに、見覚えのある女の子が近づいてきたのが見えた。


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「ユイナ・・・お待たせ・・こんばんは・・挨拶する」

その女の子は、昨日ユイナさんを迎えに来た女性プレイヤーだ。見違えようがない。可愛らしいフリルの付いた黒のゴシック風なフードに、バルーンスカートとブーツを履いている。

フードで顔は見えないが、このひときわ目立つ装備はなんとなく覚えている。

いや、そんなのは別にどうでもいいんだ。この喋り方どこかで・・・そういう設定なのか?

クヲーレのプレイヤーには、何かになりきってプレイする人は少なからずいる。例えば忍者風の装備をして、語尾に「ござる」とつけたり、キトゥン族(猫族)の女性プレイヤーの中には語尾に「にゃん」をつけたりする人がいる。
だけど、この目の前のフードの女の子からはそう言った「設定」を感じない。話し方が多少普通とは異なるが『普段』からそうしているのか分からないが、喋り方に違和感がない

普段?

「アルナちゃん 」

「ユイナ・・ただいま・・アルナ・・・呼ばれたから・・アルナ来た」

「えっと・・ん?・・・こちらが、アルナ・・さん?」

おい、
喋り方伝染ってるぞイナト。

「はいっ、こちらが私のフレンドのアルナちゃんです」

「よろしくアルナさん、ソラです。そんでこっちが右から」

ソラが俺たちの事を順番にアルナさんに紹介していき、最後に全員でよろしくと言った。

「よろしく・・アルナ嬉しい・・みんな・仲間?」

「ああ、仲間だ。改めてよろしく。それじゃあ、PT結成と行こうか!」

「ねえ?私のこと忘れてない?」

澄んだ声でソラにツッコミを入れたのは、たった今到着したシズル(長谷川 美麗)だった。

ティアの隣に移動したシズルはキトゥン族(猫族)の証である愛らしい二つの白い猫耳と、先端に赤いリボンが付いている同じく真っ白なシッポをふわふわと揺らしていた

「お疲れシズル、こちらが新メンバーのユイナさんとアルナさんだ」

「大体のことはVMで聞いたよ! シズルです。ユイナさん、アルナさんよろしくお願いします」

淡々と言うシズルだが、どうやら内心はメンバーが増えて嬉しそうだ。本人は表情を隠そうとしているようだが、後ろでご機嫌そうにふわふわ揺れている真っ白なシッポまでは、隠せないらしい。


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「それじゃ、全員揃ったし今度こそPT結成するか!」

そう言うとシステムタブを出したのか、宙を忙しなく指でタップしたり、スライドさせたりするソラ。


ピピピッ♪

脳内にSE音が流れ、目の前にPT勧誘のウィンドウがポップした。

ソラさんがあなたをパーティーに誘っています。申請を許可しますか?

【YES/NO】

イエスボタンを押し、パーティー再結成の申請を受託した。


――――――――――――――――――

【パーティメンバー欄】

・ソラ  LV41:双剣士
・crown LV47:変幻自在士
・イナト LV44:騎士
・Tiara LV39:妖術師
・yuina LV31:メイジ
・shizuru LV33:魔剣士
・アルナ LV33:アーチャー

――――――――――――――――――


左上に新しく現れたPTメンバー欄を見た。いつも3人か多くて5人だったが随分と賑やかになったもんだ。

「おお!なんかいいな、これ」

俺と同じ事を考えていたのか、イナトがやっぱPTはこうだな!と続けた

「そうだね、あとはクルー設立だな」

「はいっ、楽しみです」

「ユイナ・・楽しみ?・・アルナも楽しみ・・」

「ソラ先輩、編成どうするんですか?」

珍しくティアが自分から編成についてソラに問う。ユイナさんが入ったことで回復役が増えたので自分はどうすればいいのかが気になったのだろう。

「そうだな。いままでみんなの回復役をやってくれてありがとねティア。それじゃ、編成を決めるか」

ソラがそう言うと、
脳内にもう一度SE音が流れ、パーティー通話の許可申請と個人タブの可視モード許可のウィンドウが同時に現れた。メンバー全員が受託して、ソラを中心に円陣を組む

「前衛は――」

ソラの目の前に大きめのウィンドウが現れる。
縦、横30センチくらいのウィンドウは、システムタブの一種だ。普段は個人でしか見れないのだが、許可さえすれば他人のを見ることや自分のを他人に見せる事が出来る。


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ポン、とソラのウィンドウの上部に『イナト』『シズル』『ソラ』の名前が現れる

「まあ、PK達に会うことはそう多くないはずだけど、もしものためにね。まあ気軽に聞いてくれればと思うよ」

ユイナさんとアルナさんの方を見ながらソラは説明を続けた。

「前衛は、イナトとシズルのコンビでいつも通り。俺は様子を見ながら機動力で二人のカバーをする」

了解!と無駄に大きい声を出すイナトと耳をピョコっと一度動かしてから分かったと答えるシズル

「クラウンには、偵察と味方の援護を戦況によって臨機応変に動いてもらう」

「了解」

「後衛は、ティアとアルナさん。ティアは前衛へのバフと隙があれば敵へのデバフを頼みたい」

「わかりましたっ」

「アルナさんにはアーチャーの攻撃範囲の広さを生かしてもらって、前衛と後衛の両方のカバーしてもらいつつ基本的にはユイナさんの周辺を任せることになる」

「わかった・・アルナ・・ユイナ守る・・みんな守る・・ソラ・・言うこと聞く」

なんだかイマイチ理解してくれているのか分からないが、ソラはよろしくねと納得しているようなので流すとしよう

「そしてユイナさんは……」

「は、はいっ!」

「ユイナさんにはメンバー全員の回復と自分の安全の確保をお願いしますね」

「わかりました、頑張りますっ 」

メンバー全員の名前がウィンドウに出現したことを確認し、ソラは以上だと説明を終えた。

「まあ、これはPKに襲われたり、ダンジョンのBOSS戦の時に使う編成だから普段はみんなで楽しくワイワイ行こうや」

そう言う俺たちのリーダーはとても頼もしく見えた。みんなも納得して誰ひとり異論はないようだ。

「堅苦しい説明は、終わり。まあ、基本楽しく出来ればそれが一番だね」

自分のウィンドウを閉じながらソラは笑顔でそう言った。みんなもそれに答え、全員それぞれの返し方で了解した。


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「疲れたあ~、

「何言ってんだクラウン!これから砂漠だぜ?砂漠!!」

「わかってるって、うるさいなあ。脳が糖分を必要としてるんだよ。出発する前に何か甘い物食いたいわー」

「商店街を出れば、食堂とかあるから無くはないけど…」

ティアもそう言ってくれているが、今日はもう残り時間少ないのでここは我慢だな

「我慢だクラウン!アルナさんとシズルの準備ができ次第出発するからな?」

「現実に帰れば、トロピカルパンがあるんだけどなあ…先に食っとけば良かったかなあ」

糖分を欲する脳のせいで、今日の昼に食べた異様な色をしたパンを思い出す

「あれ2個も買ったのかよ!?」

爆笑するイナトをうるせえと一蹴して、でも美味かったんだから結果オーライだろ?と反論した。

「確かに変な色してますが、美味しいですよねっ」

ふふっと口に手を当てながら可笑しそうに笑うユイナさん

「え?」

「は、はいっ  なんでしょうか  」

「いや・・え、ええっ!?」

「私、何か変なこと言いましたか?クラウンさんっ?」




昼間のやっさんのとの会話が頭にフラッシュバックする――



「美味そうだろう?まだお試し段階でなあ、市場にまだ出回ってないんだよ。」

「んで、今日は売れたのか?」

「今さっき、可愛いお嬢ちゃんが一個買ってったんだよ。やっぱりもっと仕入れとくんだったかなあ~」



――― えっと…つまり、そうだよな?



「三個のうちの一つを買ったのお前か!!」

「え?、えっと・・え?」

「どうしたクラウン!?頭ん中がトロピカルになったのか?」

俺らしくない大きな声を急に出したもんなのでイナトだけでなくソラとティアも何事?とこっちを見ている。

ユイナさんはびっくりして、オドオドしている。というか、ユイナさん改め・・・

「ユイナ・・どうしたの・・?」

アイテム屋から帰ってきたアルナがユイナに駆け寄る。


「南国のトロピカルパンはまだコンビニ・ヤツカでしか売ってないはず。そのアバター名…その喋り方………」

深いため息を一つ吐いた。


「こんばんは、端本さん…それに東雲さん」


そう俺が言うとアルナこと東雲さんは「こんばんは・・藤ヶ谷・・友達・・クラウン・・藤ヶ谷?」と首を傾げフードで表情を隠したまま言った。


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「ふ、藤ヶ谷くんっ!!?」

「ほんと、今日はいろんなとこで会いますね」

苦笑い混じりに俺が返すとエルフの少女改め、端本 結名は、え?うそ?え?とまだ状況をちゃんと飲み込めずにあたふたしていた

「なになにー?」

戻ってきたシズルも騒ぎに気づいて、急ぎ足で俺達のところにやってきた。

「とりあえず、場所を変えようか?」


ソラがそう言うと俺とユイナは
はい、お願いしますと同時に答えた。




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「えっと、つまりユイナさんとアルナさんは現実世界でもクラウンと知り合いって事でいいんだよな?」

人通りの少ない場所で話をするためにメ商店街を出たパーティー一同は、パーヴェル領の市街区にある酒場にいた。

「すごいですよね!びっくりしましたっ」

エルフの証である二つの特徴的な耳をピョンと動かしながら、ユイナは嬉しそうに言った。

「というか、みんな驚いてるけどな」

「一応いろいろ話したいし、聞きたい事もそれぞれにあるだろうからPT会話にしてくれ」

ソラがそう言うと同時に目の前にPT会話の申請許可画面がポップした。イエスを選択してパーティーのメンバーだけが会話の内容を聞くことができるPT会話モードに切り替えた

「じゃあ、改めて紹介するわ」

ソラがジッと俺に視線を送ったので二人を紹介しろよという合図なのだろうと気づいた

「えっと、ユイナさんは俺らと一緒の学園に通ってる同学年の端本さんだ。俺より同じクラスにいる美麗のが詳しいはずだ」

「えっ  結名なのっ! 」

「美麗ちゃんもクヲーレやってたんだぁ!」

シッポをピンと立たせて驚いている美麗ことシズルの横に移動した端本さんことユイナさんは、シズルの手を掴んでピョンピョンと子供のように跳ねた。同学年のしかも同じクラスの女の子とクヲーレ内で会えたのがよほど嬉しいのだろう

「それで…だ」

ゴホンとわざとらしく咳払いをし、話を戻した俺はアルナさんを指して紹介を続けた。

「同じくアルナさんも俺達と同学年で同じ学校に通う、東雲ここあさんだ」

イナトが頭を掻きながらどこかで聞いた名前だなーと言い、となりのソラもうん~と考える素振りを見せた

「うちの学年主席よっ 」

ユイナさんの正体を知ってから、なんとなく感づいたのか、シズルはもう驚く事もなく平然と東雲さんの紹介の補足をつけてくれた。それには、ソラとイナトもああ~と納得した様子だった。そんなに有名なのか、学年主席って


「ここあ・・同じクラス・・美麗・・ユイナも・・」


「ああ、そういえばそうだったっけかあ」



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「すっげえ偶然だなあ、それにしても」

「本当ですねっ   えっとイナトさんとソラさんも…その…」

「ああ、俺もイナトもクロノスに通ってるよ。さっき悠太が言ったとおりだ」

「端本さん・・えっと、結名でいいかな?美麗と同じC組だよね?俺は小野坂 瑛司。A組でサッカー部に所属してるよ」

「はいっ!大丈夫ですよ。じゃあ、私は瑛司くんて呼んでいいですか?」

「もちろん」

「俺は、悠太と同じD組。多分だけど今日何回かすれ違ってるよね?長谷川 耀太。よろしくね、端本さん」

「耀太さんのことは、知っていますよっ!美麗ちゃんのお兄さんで、瑛司くんと同じサッカー部ですよね?クヲーレで会えるなんて、すごいですっ 」

どうやら同年組だけあって、さっそく意気投合してるみたいだ。嬉しそうにソラ達と話すユイナさんの横ではフードで表情は見えないが、アルナも嬉しそうだった

というか、ユイナさんって呼ぶのもいい加減歯がゆいなあ、

「どうした?ティア」

「ううん、なんでもない」

みんなが楽しそうに話してるのを大人しく見ていたティアは俺の問いに淋しそうな表情を一瞬見せ、にこっと笑ってみせた

「ティアちゃん 」

「は、はいっ 」

「ティアちゃんは何組なの?」

ふいに呼ばれ、驚くティアとわくわくするような目でティアに質問をするエルフの少女。

「ティアは学年が一つ下なんだ。俺達の後輩で、クロノスの中等部にいる」

「あ、綾瀬みゆ……です…」

「みゆちゃんかあ~  可愛い名前だね!そっかあ、やっぱり歳下だったんだー!」

「みゆ・・・後輩・・ここあ・・・先輩・・」

エルフの少女はご機嫌だ。東雲さんはなんていうか・・・相変わらずよく分からない人だな

「どうせ学校で会うだろうし、細かい事はその時にだな」

「そうだな。綾瀬も端本さんに会いたいだろうし、みんなの都合さえ良ければ、今度みんなで集まろうよ」

ソラの言葉に全員が賛成し、早ければ明日の放課後にみんなでオフ会をすることになった。


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「結局このあと、どうするの?」

明日のオフ会の話などで盛り上がっていると、シッポをふわふわと揺らしながら、話に参加していたシズルが全員忘れかけていたこのあとやるはずだった予定を思い出す。

目の前のテーブルに置かれたグラスのジュースを一つ手に取って、ぐいっと飲み干してから酒場の壁に飾られたシステムクロックを見た。

時刻は22時を過ぎようとしていた。

話が盛り上がりすぎて いつの間にか1時間ほど経っていたらしい

「しまった、もうこんな時間かあ」

「今日はパーティー結成と、自己紹介しか出来てないね」

「まあ、状況が状況だったしな。」

確かに、と全員苦笑いをした。アルナだけはシズルのシッポが気になっているのか、さっきからずっとふわふわと揺れるシッポを追うようにして見つめて顔を左右に動かしていた。

「俺はあと2時間は余裕だけど、みんなは?」

「2時間くらいなら、大丈夫だと思います」

「あたしも平気」

「俺も平気だけど、明日の朝練が心配だ」

ソラの問いに俺は大丈夫と答え、ユイナさんの横にいるティアに視線を送ると、ティアはコクンとちいさく頷いた。

「じゃあ、フィールドの探索だけして今日は解さ・・・ん」

「きゃああっ!!?」

悲鳴をあげたのシズルだった。普段クールなシズルにしては、可愛い反応だと思ったのは俺だけじゃないはず、いやそんなのはどうでもいいか――、

「どした!?」

急な悲鳴に驚いたメンバー全員の視線がテーブルに顔を突っ伏しているシズルに向く。

「だ・・めっ・・くすぐっ・・・やめ・・っ」

妙に艶かしい声をあげるキトゥン族の女の子が何かを訴えようと、机に顔を突っ伏したまま懸命に自分の指で後ろを指そうとしている。


ん?と首を傾げる一同が指の指す方を向くと、アルナがシズルの真っ白な可愛いらしいシッポを両手で握っていた。

「・・・ん・・・?・・・」

いやいや…お前は、ん?じゃねーよ。心の中でツッコミながらアルナを抱えてシズルから離した。

はあ~、と自由になったシズルが息を漏らしていると。その横でイナトとソラは体を捩りながら爆笑していた。こいつら、あとで怒られるだろうなと思いながらシズルにつられる様にして俺はため息を吐いた。


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