誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち

3-7 Eランク依頼

 いい感じに薬草の採取を終えた俺は、森を出て街へ帰ることにした。
 森を出て少し歩いたところで、またもやデルフィーヌさんを見かける。
 向こうが気付かなければスルーしようと思っていたが、今回は気付かれたみたいなので、軽く会釈。
 すると、デルフィーヌさんが、こっちに向かってきた。

「あなた、いま森から出てこなかった?」
「ええ、まあ」

 あれれ、また怒ってるのかな、この人?
 うーん、やっぱり嫌われちゃってんのかな……。

「森は危険だから近づくなって、注意されてたでしょ?  忘れたの!?」

 これは、心配してくれてるのかな?
 いやいや、うぬぼれるな。
 たぶん、ガンドルフォさんたちの言いつけ破って、森に入ってると思われてるんだろう。
 高ランク冒険者のありがたい忠告を、無視するなってことかな。
 ここはしっかり説明しておかないと。

「あの、俺、基礎戦闘訓練受けて、Eランク程度なら余裕って、教官からお墨付きもらってるんですよ」

 俺の返答に、デルフィーヌさんは目を見開いた。

「そ、そうなの?」
「はい、ホーンラビットとジャイアントボアの討伐依頼も、正式に受けてますから」

 ホーンラビットは草原に出ることもあるけど、ジャイアントボアは森の外に出ることがほとんどないからな。
 つまり、俺はギルド公認で森にいるってわけだから、決してイキがってるわけじゃないってことが、おわかりいただけただろうか。

「え……、じゃあもう薬草採取はやめたの?」

 ん? 薬草採取やってるって話、この彼女にしたっけ?
 ……ああ、そういや俺『薬草名人』て呼ばれてたんだったな。

「いやいや、薬草採取は継続してますよ。割がいいですからね」
「そ、そう……。ならいいわ」

 ……なにがいいんだろう?

「とにかく、無理してギルドに迷惑かけちゃダメよ!!」
「あはは、気をつけます」

 そのセリフはそっくり返したいところだけど、愛想笑いでごまかしておく。

「じゃあ、俺は納品があるのでこのへんで……」

 もっとお話ししたいけど、また下手なことを言って怒らせるのもつまらない。

「あら、そうなの? 私はもう少しこのあたりで、薬草を探そうかと思ってるんだけど……」

 ぐ……、できれば一緒に薬草採取したい……!
 でも、焦っちゃダメだ!
  彼女との距離は、慎重に詰めていかないと……。


「そうですか。この辺なら強い魔物もいないし安心ですね。では、頑張ってください」
「えーと、あの……」

 デルフィーヌさんが困ったような表情を浮かべている。
 ちょっと早口すぎたかな?

「その……帰り道、気をつけて……」
「あ、はい。お気遣いありがとうございます」

 ほっ……。
 ちょっとぎこちないしゃべりだったけど、どうやら今日は、怒らせずに済んだようだ……。

**********

「おかえりなさい。今日はEランクの討伐依頼を受けたみたいだけど、どうだった?」

 ギルドに戻ると、遅番のエレナさんが受付にいた。

「ええ。成果は上々ですよ」

 彼女とはこうやって依頼の報告で話しているうちに、ずいぶん打ち解けたと思う。
 エレナさん相手だと普通にしゃべれるのに、デルフィーヌさんが相手だと、なんでうまくいかないかなぁ……。

「ホーンラビットにジャイアントボア……あら、グレイウルフ?」
「あー、1匹だけのはぐれがいたんで」

 ギルドの受付では、討伐した魔物の数と、納品できる素材の申告だけをおこなう。
 ここで申告したものについては、収納庫から解体場へダイレクトに転送が可能だ。
 そして解体場で査定が終わると、報酬が支払われるってわけ。
 薬草と違って、魔物の素材ってのは査定が難しいし、なによりかさばるからね。
 ジャイアントボアの肉だけで、相当な量になるわけだし。

 それにしても、森での活動は、草原での活動に比べると、危険なぶん割がいいな。
 サナンの葉を始めとした、森で効率よく取れる薬草に、ホーンラビットとジャイアントボア、そして保管していたグレイウルフの骨と皮を一部納品して、この日の成果は1,000Gを超えたぜ!

 なんでも、Fランク冒険者って数は多いけど、Eランクの魔物を狩れる人はほとんどいないんだとか。
 なので、Fランクの魔物はすげー安いけど、Eランクになると一気に価値が上がるのだ。
 ホーンラビットで80G前後、群れだとDランクになるグレイウルフなんて、単独行動してる個体が少ないから討伐はさらに難しく、骨と皮だけで200G程度になる。
 とはいえ、このあたりにいるEランクで一番おいしいのは、なんといってもジャイアントボアだな。
 肉が多くとれるぶん、買い取り価格も高く、肉だけで500Gを超える。
 それに骨やら牙やら皮やらを合わせると、700~800Gになるって寸法だ。
 堂々と森に入れるようになったし、基礎戦闘訓練受けて、やっぱ正解だったな。

 あとなにげに、《魔刃》と《魔槍》が心強い。
 救出のために苦労はしたけど、デルフィーヌさんに感謝だな。

 とりあえずその日から、俺は数日のあいだ、同じようなペースで仕事を続け、ある程度の生活費を確保しつつも、各ギルドへの借金を完済できた。

 あと、寝る前の魔力操作練習は相変わらず続けていて、ようやく手に魔力をまとうことができるようになったよ。
 そしたら〈魔力操作〉と〈無魔法〉のレベル上がった。
 今度は全身に魔力を纏えるよう、練習しよう。

 それから何回かデルフィーヌさんにあったけど、やっぱり会うたびになんか小言を言われてしまう。
 それで結局、おたおたとしてしまって、はいさようならーみたいなのが続いた。
 仲良くしたいんだけど、どう接していいかわからないよ……。

「誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く