誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち

2-17 魔力操作の練習

「あら、ショウスケちゃんフラフラね。魔力酔いかしら?」

 初の魔物討伐を終えた日、俺は、魔術師ギルドの寝台で寝ることに決めた。
 ここなら短時間でMP回復できるし、夜の内に〈魔力操作〉の練習もできるかもしれないし。
 お金は惜しいが、赤字になるわけじゃないし、明日は薬草集めもがんばれば、ここの宿泊費くらいはまかなえる。
 借金返済や貯金は、先延ばしにしよう。
 まずは強くならないと。

「いやぁ……、初めての魔物討伐で、はりきりすぎちゃって」
「魔物討伐で魔力を消費したの? ショウスケちゃん、攻撃魔術使えたかしら?」
「あー、なんか敵に気づかれないように潜んでたら、それで魔力消費しちゃったみたいで……」

 照れたように申告すると、ハリエットさんが真剣な表情を浮かべた。

「……魔術なしで魔力消費なんて、アナタ見かけによらず、高度なことしてるのねぇ」
「え、これって高度なことなんですか?」
「そりゃそうよ。魔術なしで魔力を使うってことは、魔法に近い行為なんだから」

 魔法……なるほどねぇ。

「そうねぇ、武術なんかを鍛えていくと、自然と魔力で技や攻撃を補強することもあるらしいから、それに近いのかもねぇ。にしてもやっぱり高度よぉ」
「はは……、そりゃどうも」
「……ほんとフラフラね。じゃ、寝台の方へどうぞ」
「助かります……」

 今日は、ハリエットさんの胸元見る余裕もねぇ……。

**********

 3時間ほどで目が覚めた。
 ステータスを確認したら……MPが500超えてたよ。
 最後の死に戻りの段階でも、200ちょっとだったんだけどな……。
 一応これが、いまの最大値の目安ってことにしとこう。

 時計を見ると九刻ちょい過ぎ。
 えーっと、2かけて18時だから、夕方6時くらいか。
 よし、夜中まで、まだまだ時間があるな。
 ここならぶっ倒れても、ちょっと寝たらMPは回復するし、せっかく10G払ったんだから、大いに活用させてもらおう。
 
 さて、今回〈気配隠匿〉を習得するときに気付いたんだが、俺の魔力が、身体から微妙に漏れてんだよね。
 っていうか、みんな漏れてるんだと思うけど……、これを意図的に放出したらどうなるんだろう?
 すっかり忘れてたが、最初に〈魔力操作〉を習得するとき、魔力を体から出したり、空気中の魔素を体に取り入れたりを意識しろって、ハリエットさんが言ってたんだよな。

 よし、まずは体の中の魔力を練って、動かしやすい状態にする。
 いい感じにほぐれてきたので、手のひらを上にむけて、その上に球体の魔力が集まるようにイメージする。
 いままで、身体全体からじわーっと漏れ出てた魔力を、手のひらに集中する。
 ……………。

《スキルレベルアップ》
〈魔力操作〉

 ふぅ……、できた。
 目には見えないけど、なんかそこに球体の塊があるのがわかる。
 しかし一気に疲れたな……って、MP半分近く持っていかれてんじゃん!!

 あ……魔力酔い……。
 頭クラクラしてきたけど、頑張って今度はこれを体内に取り込んでみよう。
 …………よし、できた。
 できたけど、これもやっぱ疲れる。
 MPを100近く持っていかれたな。
 残り200弱あるとはいえ、一気に6割も消費したら、魔力酔い確定だわ。

 でもさすがMP回復効果のある寝台だ。
 ちょっと横になって休憩したら100くらいはすぐに回復したし、魔力酔いなんて、10秒ほど深呼吸したら治ったよ。

 よしよし、この調子で今夜はもう少し頑張ろう。

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