天馬行空、狂った戯曲。

泪鴉

あの日の風をまだ感じている。

「死にたい」って口に出して言うと
「そんな気ないだろ」そう返ってくる
小さな女の子
毎日学校の立ち入り禁止の屋上に登って
遠くを眺めては
今日もうつむいて家へ帰っていった
小さな女の子
本当は解っていた
自分は家で愛されいて
温かいご飯もあって
特に不満はないんだけど
なんとなく寂しい
「死にたい」と思って
屋上に登る子、一つ結びの子
死んだら誰かが泣いてくれると思ってる子
自分の上を通る風に
いつも通りあいさつをして
真っ直ぐ見た先、知っている子がいた
「死にたい」と思ってた、二つ結びの子
自分は死んでもいい、そう思ったのに
なんだかあの子は死んじゃいけない気がした
「馬鹿なこと考えないで」
どうしてだろう、どうしてこんなに
必死になっているんだろう
わかんないや、なんでこんなに
悲しくて、寂しい気持ちになるんだろう
記憶が
あたたかい記憶が
こんなに自分の中にあったなんて知らなかった
もう、どうしよう
………………………………
「死にたい」って言葉に出した子
「それじゃ、一緒に行こうか」
20歳の少女は言った
頼れる仲間と失わなかった家族
死にたい子も大切な家族だった
まっすぐ見つめて真剣な眼差しで
「一緒に行ってあげる」
死にたい子は泣きながら
少女に「ごめんなさい」と言った
愛している側と愛されている側
すれ違うこともある
でも、それでもいいんだ
一つ結びの子、二つ結びの子
お互い見合って笑う子たち
あの時と変わらない、大切な家族
私は、あの日の風をまだ感じている。

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