最強技能は少女と共に

黒狐

8話 生死の交差点

.........ここは...どこだ...?
真っ黒...だが真っ暗ではない...?
荷物も全部あるし格好も戦闘時のまま...
俺は...死んだはずでは...


「ようやく目覚めましたか。やはり即死は復元に時間がかかりますね」


こいつ...誰だ?古ぼけた黒い燕尾服に山高帽...葉巻にラム酒...


「おっとこれは失敬。私の名前はゲーデ
死と愛の精霊にしてギネーへの永遠の交差点に立つ者です」


ゲーデ...ブードゥー教のあいつか。って言うか心読めんのかよ


「読めますよ、それとブードゥーの私です
ゲーデは種族名で"真の名"ではありませんが」


なんでブードゥー教の神なんだよ


「あなたが願ったからですよ。薄々気づている通りここは生死の境
死者の思いが強く出る場所ですから」


そんなん願った覚えはないぞ


「無意識的にじゃないですかね。たまにそういうこともあります」


言われてみれば閻魔とかテミスに決められたくないとか考えていた気がする


「では、たぶんそれですね。知ってる神に決められたくない
だからあまり知られていない私が出てきた」


そういうことか。それはそうと真の名ってなんだ


「"真の名"っていうのは特別な名前の事ですよ」


さすがに分かるわ。特別じゃないなら区別の必要性ないだろ
具体的な内容を聞いてんだよ


「それもそうですね。"真の名"で誓約すると拘束力が死後にまで及んだり
効果が増したり様々です
"真の名"で縛ると日常生活までもが自由に行えなくなります
まぁ一般人がするのは契約の方ですが」


説明に新しい単語を使うなよ。全く...OKゲーデ、誓約と契約の違いを調べて


「私はAIじゃないのですが、まあいいでしょう。
簡単に言えば、誓約は主従の様に立場がハッキリしていると多く使われます
逆に契約は立場が等しい時に多く使われますね
契約は両者の合意が必要ですが誓約は与える側だけで可能です
どちらも専用のスキルが必要になりますが、法律なんか比べ物にならない拘束力です」


ふむ。またスキルか


「ゲームチックですよね」


ですよねとか他人事すぎだろ


「実際そうですから。作ったのも私じゃありませんし」


そんなもんか。それはそうと気になってた事を言っていいか?


「?別に構いませんが...」


その口調どうした


「口調...と言われましても...」


お前の本性は知ってるからな?陽気で下品な性愛の神様よ


「ハハハッ知られたか。じゃあもう敬語はいらねーな」


一般常識の範疇だ


「ハッそんな一般常識があるかよ。で質問は終わりか?」


最後に一つ。


「さっきも言った通りここは生死の境界。
生きながら死ぬ者か、死にながら生きる者しか来られない場所だ
だが、お前は確実に死んだ。にも拘らずここにいるその理由は...」


その理由は...?


「わからん。俺もこんなこと初めてだ」


えーと弓曳童子ゆみひきどうじはどこだ


「そんなもんじゃ俺にダメージは通らないが、まぁ待て落ち着け
理由が分からねぇのは確かだが、それでも理由は絶対にある
これだけは断言してやる」


はぁ結局俺はどうすれば良いんだ?


「理由が分からない以上全ての決定権は俺にある。だから、試練だ」


試練?


「ああ。これでも俺は頭がいいほうだ。お役目柄、色んな人間に会ってるんでな」


それがなんだよ?


「多くの人間は死を拒むが、お前はどうしたい?
このまま死にたいか?もしそうなら試練は必要ねぇ」


...死んだ先には何がある?


「何でもあるし、何にもない」


俺がそんなところに行きたいとでも?


「ハハッだろうな。そんなわけで試練だ。
勝利報酬は命と力、挑戦料金はお前の全てだ」


上等。軽く勝ってやるよ


「じゃあ神の試練第一問だ。俺が今から魔物を召喚する、そいつを全部消せ」


はぁ!?


「スキル発動【Portam malum Spiritus】」


何語だよ!


「そんなことを言っている暇はあるのか?」


チッ落ち着いて考えなければ...召喚された魔物...魔物?


「厳密には魔物じゃなくて精霊だ。まぁ頑張ってくれ」


大違いだがやるしかない。
黒い小人が五人...か。五人とも一部だけ色や形がついているな
一人は服が赤い、一人は顔が青白くふくれている、一人は形が美人っぽい
また別の一人は恐ろしい顔をしているし最後の一人?にいたってはイカの形をしている。
とある夏目さんが頭をよぎったが多分気のせいだ
俺だけで勝てる相手ではないのは目に見えている。と、言うわけで弓曳童子さんだ
召喚されきる前に人形4体を出して


「スキル発動【操り糸】」


俺の手に合わせて人形の手が動く。
今の俺のSTRが26、操る力はLv×STRの半分だから10×13で130
力だけで言えば不知火とかと同じ攻撃力だが、俺には矢と魔力が必要で
矢を一本飛ばすのに魔力を3も持っていかれる。
少ないように見えるが俺のMPは52しかない
なんと十三本しか打てないのだ。なにこれMP少なすぎ


まずは弓を引いた状態で待機して人形が召喚され切ったところで矢を離す。
イカの形をした奴は倒せた。あいつは詐欺師だから心は痛まない


次に狙うのは赤服だ。弓を引き、矢を離す。一本は避けられたが残りは当たった
こちらへ突進してきた美人と青白顔はサイドステップで避けつつ、赤服を殴る
手が痛いな、剣ぐらい買っておけばよかったか
まぁ因縁の赤服も倒せたし別に良いか
とか思ってたら恐ろしい顔の小人から少なくないダメージを受ける
割と痛いしHPも三割ほど削れているな。


とりあえず距離を取って...弓曳童子で美人を狙う
のはずが青白顔が盾になってしまった。
今俺の眼前では黒い小人二人が茶番を続けているが構わず美人も倒す。
青白顔は赤服に取られないように頑張ってくれ
美人も青白顔と添い遂げて欲しい物だ


さて、問題はここからだ
俺は全部で十六本撃ったから残りは4、正真正銘ラスト一発だ
俺は人形の矢を数十本まとめて持つ


「スキル発動【工作】」


途端に矢が木刀に変わる。消費MP1だけなので大変使いやすい
木刀を構えたところで恐ろしい顔が突進してきた
正義感の強いやつめ、無論正義感が関係あるかは知らん
って力強すぎだろッ小人の癖にやりおる
魔力回復あるから耐久だな


「そいつはつまらんな。おし、ルール変更あと5分」


デスヨネー。いや、まてよいっそのこと矢を全部集めて一本の矢にして打つか
そのためには全力ダッシュで駆け抜ける。某兄貴も速さが足りないと言っていた
兄貴のおかげかは分からんが比較的ダメージを受けずに回収できた
そしたらこれを


「スキル発動【工作】」


できたのは太さ5センチ、長さ15センチの巨大な矢
このままでは引けないから同時に人形の方も引く手だけ改造した
あとはタイミングを合わせて...


「スキル発動【操り糸】」


鈍い音が響く、その後矢は砕け、小人も同時に消滅した


「ハッハッハさすがだねえ。いいぜ、まずは第一問合格だ。回復してやるよ」


おっ回復した


「じゃあ早速二問目だ」


少しは休ませろよ


「戦わねえから安心しな」


なら、いいか


「じゃあ問題だ。あっちの世界で起こってる最大の問題は?」


戦争か?もっと言えば異種族間の不和だな


「正解だ。じゃあそれは良い事か、悪い事か」


良いか悪いかは知らんが不便ではあるな


「そうだな。じゃあお前はそれを変えたいと思うか?」


思ったところで俺一人でどうにかなる問題じゃない


「お前ひとりで変えられるとしたら?」


そんなもんを変える気はないな。時間の無駄だ


「お前ひとりで変えられるとしたら?」


だから時間の無駄だといっただろ


「お前ひとりで変えられるとしたら?」


いい加減しつこいぞ


「お前ひとりで変えられるとしたら?」


...おい


「お前ひとりで変えられるとしたら?」


某竜の冒険か


「お前ひとりで変えられるとしたら?」


わかったよ変えたいよ


「そうかそうか変えたいか。それはよかった」


白々しいにもほどがあるわ


「...さて。お前は、坊ちゃnじゃない邪悪な精霊を倒し、力を示した
今の問答で善良な意思の持ち主だと示した。さらにお前は、この死によって勇気を示した」


この死によって?


「ああ。お前の直接的な死因はあのベヒモスだが、そもそもは柊とか言う小娘だ。
本来はあの小娘が死んでいたはずだし、事実お前が居なければそうなっていた
だが現実としてはただ一人お前だけが安全圏からあの魔法陣の中に入った」


けど、あれは俺の意思じゃない


「無意識的に代わりになれる奴はもっと少ないさ。
ましてやあの状況だからな
朱雀大路にある門の梯子はしごの上じゃなくてよかった」


夏目の次は芥川かよ


「さっきも言ったが、割と頭は良いほうなんでな」


そんなもんか


「話を戻そう。お前は力と、意志と、勇気を示した
そんなお前に偉大なるロアからのご褒美だ
お前に"真の名"とスキルを与えよう。ステータス画面で確認してみな」


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カロ ジュンセイ Lv10
HP83/83  MP120/120
STR58 DEF55+30
INT98  AGI57
DEX56


スキル
工作Ⅹ 操り糸Ⅹ
速読Ⅵ 暗記Ⅴ
受け身Ⅳ 苦痛耐性Ⅴ
負傷耐性Ⅳ 恐怖耐性Ⅱ
自己治癒Ⅴ 魔力回復Ⅲ
英雄の導きⅤ 魂魄魔法Ⅰ
精霊の祝福Ⅹ 精霊の叡智Ⅹ 
言語翻訳Ⅹ 洞察Ⅴ


魂魄魔法 魂を操る魔法
精霊の祝福 保持者に〈精霊の祝福〉を永続付与。レベルはスキルに依存
精霊の叡智 スキル入手率にLv×5%の補正。スキルの派生、進化にLv×5%の補正。
      全スキル効果にLv×2%の補正。全スキルの消費MPにLv×-2%の補正


装備
深海のローブ
深海の腰布
透徹のモノクル
マジックポーチⅠ
マジックポーチⅠ
加護の指輪


状態
隠密Ⅰ
加護Ⅲ
精霊の祝福Ⅹ 入手経験値がLv×15%増加。HPが一撃では0にならなくなる
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...勝った(確信)。これは勝ちですわ、入手経験値が合計で200%増加。すなわち三倍
スキルだけなら不知火すら抜いているな。素晴らしい


「"真の名"はお前の名前そのまんまだ。これからは基本偽名を使いな。
お前が心から信頼できる奴には"真の名"を告げれば良い」


考えるの面倒くさいな


「まぁ頑張ってくれや」


へいへい。それよりこんなに強いスキルもらっていいのか?


「与えられるスキルの数と質は、示した力と意志と勇気で決まる
俺は勝手に十段階評価で決めているが
お前の場合は力が七、意志が三、勇気が二十だ」


ツッコミ所が多すぎるが、勇気の評価がおかしいのは指摘させてもらおうか


「あれは本当にすごい事なんだよ。
テミスも閻魔もあの行動だけなら聖人だって言ってた」


閻魔は聖人とは言わないだろ。第一宗教どうなってんだよ


「まぁまぁ細かいことは無しにしようぜ。そろそろお別れだしな」


む?俺の体が透けてきている?


「転送先がランダムだとまた死ぬからこっちで選んでやるよ
俺のもう一つの権能もスキルに入れられなかったしな」


お前のもう一つの権能?...今すぐやめろ!転送先をランダムに戻せ!


「じゃあいい旅をしてくれよな」


おい!人の話をッ


「無事に飛んだか。...さて、いい加減帰ってくれ、ここは俺の場所だ。
元々はお前の設定ミスが原因なんだ。俺を睨むのはお門違いってやつだぜ」


「偉そうな口をきくなよ、創造主に向かってさ
まぁいいや今回は僕も非を認めて帰ってあげるよ
でも、これ以上言うことを聞かないなら...消すよ?」


「おーおー怖い怖い。新参ルーキーは恐れがなくていいねぇ」


「僕はもう帰るよ。じゃあね時代遅れの古参ロートル


「やっと帰ったか。...酒を飲む気分でもねぇし、寝るか」

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