好きになったらいけない恋

ホットコーヒー

第69話二者面談

夏休み前にクラス全員担任と二者面談を行う。


『サトシ、進路は決めたのか?
他の奴らはみんな就職か進学か決めて、進路活動始めてるぞ』


『俺は、就職も進学もしません』


担任が呆気にとられた顔をしている。


『...じゃあどうするんだ?』


『俺、世界を旅したいんです。
たくさんの国を旅して、本を描きたいんです。』


『そっか...』


担任がそう言うと深いため息をついた。


『いい夢だと思うが金はどうする?
資金は?言葉は?二十歳になってない子供が1人で世界を回っても危ないだけじゃないか』


『1人じゃありませんから...』


『じゃあ、だれと?』


『先生知ってるか分かりませんけど、
2年3組の渋谷和也...
あいつと一緒に世界を見て周ります』


『......一緒に行くにしても、1つ下じゃないか。 お前が卒業したら、和也が学校辞めて一緒に行くのか?
1年間何もしないで、卒業するのを待つのか?』


『俺が先に1人で行ってもいいですけど
あいつが卒業するまでは待ってようかと思います。その方が資金貯める時間が増えるので』


『その1年間は、バイトしてフリーターするのか? 他のみんなは大学行ったり就職してる中、遊んでるのか?』


『別に遊んでるわけじゃ...』


『厳しい事言いたくは無いけど、
もう高校3年生なんだから、現実を見たほうがいいぞ。 夢は何言ってもいいが、俺を困らせ...
いや...お前の為に言ってるんだから』


(結局、自分の評価か...
そりゃ、自分のクラスで就職も進学もしない奴がいたら評価は下がるか)


『ご両親はなんて言ってるんだ?』


『...応援してくれてます。』


『そっか...なら1年間はバイトする生活なら、どこかで就職していい金もらった方がいいだろう』


俺の目を凝視して話してくる。


(どうにかして就職させたいんだな)


『どうせ辞めるなら就職しても無駄ですよ。資金集めるだけなら、むしろバイト掛け持ちして働いた方がお金は溜まります。』


『少しは現実見ろ!』


どれだけ説得しても折れない俺に嫌気がさして、等々声を荒げてきた。


『今時就職も進学もしない奴なんて、ただのダ社会不適合者だ!
俺だって校長に何を言われるか...』


『先生、1つ質問させて下さい。』


『なんだ...』


『なんで進路って就職と進学の2択なんですかね? ずっと不思議で』


『それは...みんながそうしてるからだろう』


『なら俺は...
俺とカズヤは、そのみんなとは違う。
先生の言うみんなとは違う道を行きます。』


『そっか... わかったよ。
お前がそこまで折れないのなら本当にやりたい事なんだろう。
...お前の好きなようにやれ
応援するから。』


いきなり担任が折れてくれてホッとした。


(なんとか説得できた...なんで急に折れたんだ?)


『サトシ、俺は恥ずかしくなった...』


(自分のクラスで俺みたいな奴いたら恥ずかしいだろうな...)


『俺のことですか?...』


『違う。 お前の質問に答えられなかった事だ。進路が2択だなんて、確かに誰が決めたんだろな。
みんなはなんの疑問も思わずに、その2択からしか選ばないし、俺もその1人だ。
サトシ、お前の考え方かっこいいよ。
....学校の先生がこんな事言ったらダメだけどな』


『ありがとうございます。』


こうして担任との二者面談が終わった。



面談が終わるとすぐにカズヤに電話をかけた。


プルルルル...


『先輩!面談どーでした?』


『いきなりその話かよ...』


『...てことは、上手くいかなかったんですか?...』


『いや...説得できたよ。
最後には応援もしてくれるって言われた。』


『なんだよ! 心配したじゃないですか』


『とりあえずそーゆー事だ。
カズヤはお母さんに話したの?』


『はい!即答でOKでした!』


『そっか!よかった。
じゃあ、切るね...』


『えっ!?もう? 忙しいんですか?』


『べつに...』


『なんか元気ないですか?』


『大丈夫だよ。』


『...そーですか。 じゃ切りますね
何かあったら相談してください。』


『うん。 ありがとう』


プー プー


(元気ないか...あいつにはすぐ気づかれるな)


将来の事を考えると、日に日に楽しみになる反面、不安がその2倍くらいで押し寄せてくる。


担任に言われた現実を見ろって言葉も
痛いほどわかる。


今でもまだ、このままでいいのかと思っている自分がいる。


そんな事を考えると元気もなくなる。


ピコーン


【先輩!夏休みですね!
思いっきり楽しみましょう(^^)】


カズヤからメールがきた。


(こいつはお気楽でいいな)


メールを見ると自然に笑顔になった。

          

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