好きになったらいけない恋

ホットコーヒー

第56話気持ちの整理

母親にカズヤを夕飯に招待したいと言われたのを思い出した。


まだ合わせたくはなかったが取り敢えずカズヤに聞いてみることにした。


県大会も無事終わり引退までの時間が伸びたので心に余裕もできた帰り道カズヤに聞いてみた。


『今日うち来て夜飯食べない?』


『えっ!?』


カズヤ驚いた声を出す。


『母さんがこの前の事謝りたいって..』


『.....』


カズヤが目をつぶり考えている。


『嫌ならいいよ!まだ時間もそんなにたってないし...』


『...大丈夫ですよ。行きます』


顔が無理をしているような気がする。


『わかった...連絡しとく』


母親に連絡をして家に向かう。


帰り道カズヤは浮かない顔をしている


『無理するなよ...?』


『うん...先輩のお母さん僕のこと嫌ってたから...』


『その事はこの前謝ってきたし...
色々調べて自分の知識不足だったって言ってたから...』


『僕みたいな人はそう簡単に理解なんかされませんよ...』


悲しげな目をしてそう話す。


『逆に偏見ない人は、その人も僕と同じタイプの人間か、変な人です』


『なら俺は変な人か?』


『ちがいますよ』


『え?』


『先輩は僕と...  なんでもないです
やっぱり変な人です。』


『なんだよそれ』


カズヤは俺も同じ人間だと言いたかったのだろうが言わなかった。


実際俺はどうなのだろう。


カズヤの事は好きでも、やっぱり男は好きになれないと思う。


その気持ちも理解して言わなかったのだろうか。



家に着くと母さんが夕飯の準備をしていた。


『お、おじゃまします!』


ど緊張しているのがバレバレなカズヤの背中をさする。


『落ち着け...』


料理をする音が止まり母親が玄関に向かってくる。


『いらっしゃい カズヤ君。
ゆっくりしていってね』


母親が笑顔で挨拶をしてくる。


『おじゃまします...』


頭を下げてお辞儀する。


『...この前はごめんなさい。
私の勉強不足で酷いことを...
本当にごめんなさい』


『いえ、気にしてませんから
僕みたいな人間はああいうのは慣れてますから』


皮肉が混ざってるように聞こえたが、本人にその気はないだろう。


『過ぎた話はもうやめようよ。
俺らみたいな人を理解しようとしてくれるって気持ちだけで俺もカズヤも嬉しいよ』


カズヤが何かを言いたそうにこちらを見てきた。


『もうちょっとで料理出来るから...
何か飲む?』


『うん..部屋に持ってくから大丈夫自分でやるよ』


冷蔵庫から飲み物取り出し部屋に持っていってくつろぐ。



『先輩..? さっき俺らみたいな人たちって...』


『ん?...言葉の綾だよ...』


『そーですか...』


もう自分の中で気持ちが固まっていると思う。


俺はカズヤが好き。ただそれだけでいい。


そして俺はカズヤと付き合いたい。


俺も同性愛者として生きていこうと


少しずつ葛藤しながら、戸惑いながらようやく俺の中で決心がついた気がした。


母さんに同性愛者の批判をされて、カズヤを傷つけたのに腹が立ったのもあるが、
俺自身ものすごく傷ついた。


俺の全てを否定された気がした。


俺みたいな人間は生きていてはいけないのだろうかと、カズヤの気持ちが痛いほど理解できた。


『先輩?また泣いてますよ?』


『え?』


『先輩は突然泣き出しますね。情緒不安定ですか』


『うるせーな』


『そんな事言わないで、
泣きたいなら僕がいますよ』


無言でカズヤに抱きついて肩を借りて泣いた。


頭をカズヤにさすられるのがとても気持ちよく
心が落ち着いた。


『先輩は可愛いですね』


『....おまえもな。 大好きだよ』


聞こえるか聞こえないくらいの声でそう伝えた。


しばらくすると母親の声が一階から飛んできた。


『ご飯できたわよ!!』






          

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