なんだかこの部活はおかしい

みじんこ(みじみじ)

なんだかこの回想はおかしい

5月9日 昼 晴れ 

まだまだ話は続くぜ by猫

◇◇◇

彼女の左手は腐ってしまっていた。左手に巻かれた包帯。中学生女子なんて理由をつけて人をいじめるものだ。彼女は左手が理由でいじめられた。人間じゃない。汚い。近くにくるな、うつる。酷い言葉ばかりを浴びせられ彼女は精神的にきつくなっていたのだろう。それ自体は持って帰ってきた教材の落書きなどで分かった。あの日起きたのはさらなる悪質なものかもしれない。彼女は引っ越しの日の前夜、希望ではなく絶望だった。

◇◇◇

「本日、動物園で新しいパンダの赤ちゃんが公開されました。とても賢いパンダで、注目を集めています。名前は...」

彼女はテレビをつけながらコンビニで買った食事を食べていた。

「つまらないなぁ...。チャンネル変えよ。」

そうやって1からチャンネルボタンを順に押していく。

「博物館で今、土偶展が行われてます。興味がある人はぜひ...」

「鉄道の唐突な事故により交通のアクセスが...」

「今日は流星の美しい日ですね。」

流星か。ちょうど窓から見える。彼女は興味を持ったのだろう。

流星は町に落ちた。唐突な出来事だった。建築中のビルが倒れた。ものすごい小さい隕石でも被害規模はとんでもないものとなった。

「研究対象...研究対象...みぃつけた。」

小さな石はものすごい速度で移動を開始した。その先は彼女の部屋だった。

石はまるで魚の群れのように集団で都市を破壊していった。しかし、彼女の目の前の石は建物の近くにくると速度を落として移動をし窓の中に入ってきた。

彼女はわかっていた。逃げなければならないこと。原因は自分の中のもう一人の人格であること。そして。逃げようがないこと。

「助けて...」

「俺がやってもいいけど。俺が手を出すと君は...」

いつの間にか彼女は脳内の彼との会話が行えるようになっていた。なんで俺がそれを聞き取れたかは謎だ。この世界に来た際に魔法が使えなくなり、言葉もしゃべれなくなったのにそれが聞こえたのはなぜかは俺自身にもわからん」

その石は彼女たちを待ってくれることもなく、話始めた。

「用があるのは君ではない。コードゼロ。私たちは彼のことをそう呼ぶ。髪の色で判断は容易だ。」

やはり、目的は彼のようだと理解した彼女は言うことを聞くしかできなかった。

髪の色は徐々に青色に変化していった。

「なんの話だ。俺はお前との面識はない。」

「当たり前だ。研究に使用させてもらいたいのだ。転生の際に通常とは違い既存の生物に転生したこと、それの代償かはわからないが記憶が一部途絶えているということ。我々は青い舌という名を名乗っている。協力の意思があるのなら。電話してくれないか。」

名刺が突如現れる。

「おかしいな。自己紹介でお前らは町をつぶすのか。」

「何を言ってるんですか?これは自己紹介ではありません。警告です。あと、この町は以前から潰そうと考えていたのでね。」

「ふざけるな。この野郎。」

「キッズの相手は肩がこる。」

そういいのこして石は空へ飛んで行った。町を崩壊させた石たちはすぐに消えていった。

一部の建物のみを残して町は崩壊した。桃色はいじめていた人間が死んで喜ぶどころか悲しみ嘆いた。

自分は何もできないという無力さ。自分が原因で大量の死を招いた罪悪感。それなのに人の死を前に悲しめない自分への悲しみ。彼女は自分を人間だと思えなくなっていった。同時に普通の人間になりたいという風に思うようになった。もう一つの人格を胸の奥にしまいこんだ。

「おい。いくぞ萌!車に乗れ。」

「貴方。こんなことがあったから悲しいんでしょう。」

「悲しいのは俺だよ。いま会社はピンチだ。」

「あんたは本当に仕事人間ね。」

「そうさ。仕事のことしか頭にないよ。父親というね。だから、仕事もこうやって休んでいる。萌の気持ちも理解できるから。」

平和な家族の会話を俺は聞いていた。

「ちょっと萌ちゃん。言っちゃうんだったらこれ食べて食べて。」

猫好きの近所のおばちゃんが来た。事故で生き残ったというのこった人間の一人だ。毎回俺に煮干しをくれる。しかし、今回はもらえなかった。なぜかと思ったので、おばちゃんの足をなめてみた。するとおばちゃんは何にも気が付かないあ様子で去っていった。おばちゃんに慰められたからか彼女はすこし気が楽になっていた。俺は不安だった。自分の姿が誰にも見えてないのではと思った。しかし、それは事実だった。

「萌ったら、昔飼ってた猫が死んだときのほうが泣いてたんじゃないの?」

「泣くっていうのは何かを変えることはできない。少しは大人になったんじゃないか。」

父親の名言が飛んだところ申し訳ないが衝撃の発言に俺は耳を疑った。俺はどうやらとうの昔に死んだことになったらしいのだ。俺はそのまま野良の猫として日々を過ごした。人間には認識されなかったものの動物には認識され、よそからきた役員などにも姿を確認されている。どうやら、この町の住民だったものには見えないらしい。

今回の事件は事故として扱われた。明確な目撃情報があったものの、あまりにも非現実的なものから、地震で嘘の情報が横行しているという風に発表されメディアでそう報道された。

転校先ではなにもない平凡な日が進んだ。転校した最初は大事故の起きた沢村市から来たということで注目を集めたが、すぐにそれもなくなった。桃色グループは今回の事故で倒産の危機に陥ったが今は復帰を見せている。

なんで俺がこんなことを知ってるかって?それは俺にもわからない。気が付くとなぜか記憶にそれがあった。

◇◇◇

「なんだそりゃ。十分すぎる情報だけど。謎の記憶多いし、なぁ先輩。」

「いや、十分な情報が手に入った。おい、お前はいいからこの猫を持てよ」

「おい、お前もっと上手に持てねえのかよ。」

「うるせえな。デブ猫。重いんだよ。」

さて。俺はこの居眠り女を起こさなきゃいけないな

「起きろ。」

「はぁ!今行きます!」

◇◇◇

「トラウマってなかなか消えない。君、まだあの名刺持ってくれてるでしょ。そしてあの名前を忘れることもない。」

「遠山目色ぉ」

「私には君に対いてものすごい興味がわいている。けどね。君は正直用済みなんだよ。早く髪を青色にしてくれよ。」

「メイロ...」

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