なんだかこの部活はおかしい

みじんこ(みじみじ)

なんだかこの世界はおかしい

5月3日 深夜 晴れ

真っ赤に光る月と黄色い月。いつからだろうか。月が一つではなく、二つになったのは。

月が増えたことで人々は混乱した。それももう懐かしい。今は皆がそれを常識としてとらえている。

実に馬鹿らしい。人間とは当たり前のことに対する疑問を失ってしまうものだ。まぁその「当たり前」の定義がきちんとしてないのだがな。そんな世界に疑問を抱く少年は月の下の東京のビルの屋上で歩いていく人々、車を見ていた。

「みんなきれいに歩いている。生き物じゃない。まるで時計の針みたい。ここで一人でも飛び跳ねてたら不自然になってしまう。」

「と言いますと?」

「みんながみんな助け合ってるなんて綺麗ごとじゃなくて逆にみんながみんな個性をつぶしてる。当たり前をつくってそれに反すものを異なる生物だととらえる。けど、みんなそれぞれ全く違う生物なんだよね。逆にそこで集団をつくってみんなが同じっだよ。一部分に負担がかかりすぎてる。異なる生物を共通の敵として生活するのは確かに合理的かもしれないて考えるのが間違っているんだよね。」

「まぁ世界はあなたみたいな子供の考えのように単純じゃないんですよ」

「子供じゃないし、背が低いからってバカにしないでくれないか。この世界は全体でみたらうまくできてるように思える。けどねジェンガとは違うん。けどそれはすぐに崩れてしまうし崩れたら交換するだけだ。そういう意味では複雑なのかもね。まぁ俺が言いたいのはね。つまり」

「時間ですよ。独り言はいいですが仕事はちゃんとやってくださいよ。」

「独り言じゃないよ。二人言だよ。まぁ結論を言うと。自分が人と違ってたって俺は」

「時間です」

「俺はニンゲンであることに変わらないのだから」

そんなことを言って俺はマンションの屋上から飛び降りる。道の上を動くものに向かって銃をうつ。それと同時にとなりマンションに飛び移る。

5月3日 朝 雨

俺は今日も歩いている。なんども見た景色を歩くことを毎日続ける。そういう点では俺は「当たり前」にとらわれているのかもしれない。傘をたたみ、校舎に入り、靴箱を開ける。靴を履いて階段を上る。

授業は退屈だ。いや学校自体が退屈だ。それぞれの弱点、傾向、考え方があるのにそれをすべてまとめてしまう。

「おい。黒谷。ここ解いてみろ。」

はぁ。ため息をついて問題を解く。そういえば自己紹介をしてなかったな。俺は黒谷刃。「くろたに」じゃない。「くろや」だ。

5月3日 放課後 晴れ

天気は晴れてきた。ちょうど気分もよくなってきたので俺の所属してる部と通っている学校について説明しよう。私立光明高校。ここはお坊ちゃま、お嬢様が通うような学校だ。相当な富豪の子供ばかりだ。俺は自身で稼いだ金で入学した。この部の名前は「悩み相談部」。生徒の悩みを解決する部なのだがそれは名前だけだ。富豪の子供が通う学校だ。抹消したい人物がいたり、探し物、政治家の汚職事件の調査など汚れ仕事をこなしてきた。俺はそんな部の部長でありながら暗殺者だ。部員はみんな個性豊かだ。まぁ俺も例外ではないのだろうな。上機嫌だったのだが邪魔ものが来た。客だ。

「あのすみません。依頼があるんですけど」

教室に入ってきた少女はそういった。

「あ、ちょっと待ってください。」

「あ、僕?ごめん部員の人いない?」

「うるさいですね。小さくて。そこまで小さくないと思いますし、あなたとあまり大差ないですよ。仮にも俺は高校二年ですし、先輩です。」

「はぁ。依頼というのはですね。まぁまず額なんですが。こんなんで」

何言ってるんだこいつ。軽いノリでトランクケースを出した。相当な額だ。こんな見た目して相当な富豪なのかもしれない。いや、おそらく暗殺の依頼だな。残念ながら俺は暗殺は一部の人間が専門だし...。弱ったな。

「実はですね!猫を探してほしいんです!」

ネコ?何言ってるんだこいつ

5月4日 晴れ 朝

早起きをして、俺は豪邸の前に立っていた。

「あぁお嬢様の同じ学校の黒谷様ですね。どうぞ。」

依頼主の名前は川村葵。まぁ何を依頼されたというと彼女の豪邸の庭で迷子になった猫の捜索らしい。

で、まぁなににせろ難易度はくそみたいに高い。具体的に言うとネコと言っても虎らしいのだ。しかもめちゃくちゃ豪邸は広い。捜索には困難を極めるだろう。

5月4日 晴れ 昼

驚いた。まさか見つかったのは虎の着ぐるみを持ったメイドだったのだ。ものすごい美人のようだがどうやら変わっているそうな。依頼主が探してたのはこのメイドらしい。

「すみません...。風邪を引いたと聞いて。慰めようと虎の着ぐるみを来てあげようと思ってその...。着ぐるみが置いてある倉庫に向かったところ帰り道で迷ってしまって。」

「もう風邪は一晩で治ったわよ。それよりこの一週間どうやって過ごしたの?」

「お嬢様への愛があればなんてことないです!」

まぁ解決したならよい。金も手に入ったし。まぁいいか。

「あの...」

依頼人は気まずそうに聞く。

「虎の着ぐるみを倉庫に戻すの手伝ってもらえますか?」

5月4日 晴れ 夕方

重い。なんで俺がこんなことやらされているんだろう。

「すみません。うちのメイドは方向音痴なんですよ。」

「けどメイドはほかにもいますよね?」

「全員方向音痴です。」

そんな馬鹿な。

「あと私が全部も持つんで大丈夫ですよ。小さい体には重過ぎるですし」

一言多いのだ。倉庫が見えてきた。重いものを運んで疲れ気が緩んでいたのだろう。唐突に迫ってきた影に俺は気が付けられなかった。

そうか。先ほどメイドたちが自分たちが運ぶので大丈夫だと言ってたのはこれか。これほどのお嬢様なら暗殺者に狙われて当然だ。しかしながら先ほどのメイド。これと対決をしたのだろうか。一週間もかかったのはそれが理由?いやただの方向音痴なのかもしれない。一週間何も食べてないということも気になる。下手すると同業者かもしれない。それにしても何者だろうか。まぁ少なくとも今後戦うことになるかもしれないな。

「貴様。あのメイドと同じ香水の匂いがする。ううぅ」

やはりトラウマを植え付けられているのだろうか。

「影がしゃべったの?」

まぁこういう反応になるわな。

まぁ良い。説明は後だ。

俺は銃をうった。

「え?」

「痛い!痛い!痛い!覚えていろよ。」

おかしい。銃に撃たれたのに平気にしている。そして彼は影となり消えていった。

何者だろうか。不思議なもの二つに出会った。

「何が起きてるの?」

赤い月が出現した日。地球は変わった。月からは無数の魔物が降り注いだ。彼らは様々な世界で様々な立場となっている。魔物は人間の政治などをコントロールするまでとなった。魔物は人の姿になれる。彼らは自然と日常生活に溶け込んでいる。俺は魔物を殺すことを担当する暗殺者だ。そんなことを川村に話した。

川村の理解は遅かったので説明に時間はかかったがやっと納得してくれた。

なんだかまためんどくさいことになったかもしれない。月が増えた日に世界が変わったように世界は俺を中心にこの日、大きく変わったということをこの時の俺は知る余地もなかった。

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