同世界転生の最強貴族

夜谷 ソラ

第四話 森の脅威Ⅱ

◇???視点◇

「ギエェェェエエ!!!」

「ウォォーオオ!!」

「ギャャァァァア!!」

「キシェェェエエ!」

「何だこの魔物の悲鳴は!?『我が深淵の魔力に応じて、この辺りの者を探し出せ!"魔力探知サーチマジック" 』」

    集中して見てみる。すると、上位小鬼ハイゴブリン小鬼ゴブリンと戦っている子供が居るのが確認出来た。
    それも、かなりの人数に囲まれているのだ。

「このままではまずい!!助けに行かなくては!」

    森の中を手探り状態で、持てる力を振り絞って走る。休憩を入れずに走っているので、口の中の水分が失われていく。

「はぁー・・・・はぁー・・・・間に合ってくれ!!」

    走り続けて居ると、沢山の小鬼ゴブリン達の死骸が転がっていた。
    そして、すぐに顔を上げて前を見る。そこには、子供が目の前で、背中を殴られて倒れた。それを見て、もう少し早く来れていれば・・・・と悔やむが、悔やんでいてはらちがあかないと思い、すぐに詠唱の準備をする。

「そこの少年!今助ける!」

    声を精一杯振り絞って言う。すると、上位小鬼ハイゴブリン達の視線が集まり、周りの者達に確認をし始めていた。

「ゲギャギャ!!ゲッゲギャ!」

「ゲッギャー!!」

    その言葉に上位小鬼ハイゴブリン達は首を縦に振って、一匹だけこちらへと走って来る。

「我が名はBランク冒険者『死神の鎌』のパーティーリーダーであるマルクだ!お前らは今から俺が殲滅する!!」

    殲滅する!!と言う言葉に反応したのか、全員が動き出す。いや、殲滅に反応したのではなく、展開していた魔法陣の魔力に反応したのだろう。
    そして、最初に走って来ていた上位小鬼ハイゴブリンが持っていた大剣を振るう。

「『我が光の魔力に応じて、我を守る盾と成れ!"光輝聖盾プロトシールド" 』」

    大剣と光輝聖盾プロトシールドが重なった瞬間、どちらともが壊れる。

「くっ!『我が火の魔力に応じて、目の前の者を焼き払え!"火炎地獄ニヘルジア" 』」

「「グアァァァア!!」」

「殺ったか!?」

    煙が薄くなる。すると、上位小鬼ハイゴブリン達は地面に突っ伏していた。

「終わったのか・・・・?」

    上位小鬼ハイゴブリンの生死を確認する為に、近付こうとすると、上位小鬼ハイゴブリンが急に立ちだした。
    そして、先程武器を壊した上位小鬼ハイゴブリンは、こちらを一睨みしてから小鬼ゴブリン達の持っていた武器を片手に持つ。

「くっ・・・・何故生き返るんだ!?俺の魔力は・・・・・もう、ここまでだ」

    そして、魔力切れで倒れそうになった時、若い子供の声が聞こえた。先程倒れた少年の声だろうか。

「ありがとうおじさん。もう俺がやるから休んでね」

    その声が聞こえた瞬間。首を軽くトンと叩かれ、急に視界がブラックアウトした。


◇ゼクロイド視点◇

    倒れたおじさんのことを横目に見ながら、魔法陣を展開し始める。

「ごめんねおじさん。少しの間眠っていてくれ」

    剣を構える。すると、上位小鬼ハイゴブリン達が凄い勢いで襲ってくる。それも、全員同時だ。やはり、小鬼ゴブリンの下位系統の者達は、連携が取れないので、避けるのは容易い事だ。

「『我の光の魔力よ・・・・この無礼な者達に天罰を!"神聖光千砲ホーリーナイトレーザー" 』」

    この魔法は敵意のある者に、千もの光線で体を貫くと言う、神聖魔法だ。魔法を発動すると、上位小鬼ハイゴブリンの身体を幾つのも光線が撃ち抜き、身体は穴だらけになっていた。

    そしてしばらくすると、もう誰も立っていなかった。そこで、急に身体がふらっとする。立ちくらみだ。

「はぁー・・・・はぁー・・・・・流石に・・・・魔力切れ・・・・か・・・・・」

    魔法を使い過ぎた為、魔力切れで倒れそうになる。そんな時だった。先程倒れたはずのおじさんが、木に寄りかかっていた。

「少年。魔力切れなのだろう?なら、これを是非飲んでくれ」

    そう言って、魔力を回復させる薬、エクリエイサーと呼ばれる物が入った瓶を、こちらへと投げてきた。

「ありがとうございます・・・・」

「良いってことよ!それよりも、こいつらの耳と魔石を取って、早く帰ろうぜ?」

「分かりました」

    貰ったエクリエイサーを急いで飲みきる。やはり、味はかなり微妙だが、これだけでこの立ちくらみなどが治るなら、安いものである。
    飲み切ったので、瓶を粉々に砕いてその場に捨てる。これは、この地域では当たり前の事だ。

    そして、少し休んでから短剣を取り出した。そこで、耳や魔石を取ろうとすると、ある異変に気付いた。

「ちょっと待ってください。耳を澄ましてください」

    おじさんは、頭にはてなマークを浮かべているが、直ぐに試してくれた。

「ん?耳・・・?」

『ズシン・・・・ズシン・・・・』

「・・・・・って!なんか来てるじゃねぇーか!」

「まだ遠いですし、この音から察するに、フォレストゴーレムかイージスゴーレムですので、急いで魔石とかを取って、この場所を離れましょう!」

「おう!」

    俺達は急いで耳と魔石を剥ぎ取る。剥ぎ取り終わった頃には、耳を済まさなくても聞こえるほど、近くなっていた。
    すると、おじさんが小さい皮袋から、とある石を取り出した。

「仕方ねぇー!少年!俺に掴まれ!転移石を使って街の門の前に転移する!」

「はい!」

    急いでおじさんに掴まる。すると、一瞬で景色が変わった。

『これが転移石か・・・・。それにしても、あの程度のゴーレムなら倒せたかもしれないな・・・』

    などと何となく思っているが、まだ、心臓がバクバクいっている。

「危なかったな・・・・・まだ、心臓がバクバクいってやがる」

「僕もです・・・・」

    少し休憩をしてから、街へと入る。

「そう言えばお前さんが20体倒したんだからほれ」

    投げられた先程と似ている袋を慌てて取る。その中には、9体分、つまりは自分の持っている物を合計して合計20体になるように、素材を袋に入れて渡してくれたのだ。
    これには、流石の自分も尊敬した。

『普通は、自分で手に入れた物は自分の物と言うのが大体の冒険者なのだが・・・・・』

    そんな事を思っていると、お礼を言い忘れていた事に気付き、慌ててお礼をする。

「あっ・・・・。ありがとうございます・・・・」

    一礼をしてからお礼を述べると、照れくさそうにして、頬を掻いている。

「まあ・・・・その・・・・・なんだ。俺の事はマルクと呼んでくれ。後、敬語も無しだ。ちなみにランクはBだ。よろしくな」

「分かりま・・・・分かったよマルク。僕はゼクロイド。皆ロイって呼んでるからロイって呼んでね。分かってるかもしれないけどランクはHだよ」

    自己紹介し終わると、マルクは急に走り出す。それに少し驚いていると、マルクがこちらへと振り返る。

「おら!早く行くぞ!」

「おう!!」

    こうして、不思議な出会いと共に、冒険が始まりを告げたのだった。

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