神の力を喰らった魔術師《マジックキャスター》
【第12話】覚醒と、魔神
ジリキスとアイルが競技場の向かい合った準備室に入っていった。それに付き添うように、シルヴァとアマテラスも入る。
「何故、アマテラス殿も入る必要があるのです?」
「私は、アイルの姉的存在です。なので、部外者ではないですし、今の状態の貴方は何をやるか分かりませんので」
「どういう事なの。それ」
フードを深く被り、そのままの状態で自分の短剣の術式を書き換えている時に、シルヴァの後ろでアマテラスがそう言い放った。
「そのままだよ。獣人は飼い主の命令には絶対。アイルもその事に気付いてるから、勝利報酬を母の形見と、シルヴァちゃんにしたのかと思ったけど...」
「なぜ、その事をご存知で。確か、貴女はあの時、玉座の間には居なかったはずでは?」
「こんな化け物じみた奴の姉だよ?何が出来ても可笑しくないって...だから、少しはマナ操作を覚えたらどうだい?雌犬」
その言葉には棘があり、完全にシルヴァの事を侮辱していた。だが、なぜそんなに口が汚くなったか、それはアマテラスの目を見れば分かった。
アイルは、その目を一度見たことがあった。それは、【混沌の神】カオス、と戦うときに見した目と一緒だった。その事を思い出しながらアイルは笑っていた。
「心配しすぎだよ、姉さん。シルヴァには言うの控えてたけど、君と戦った時の奴が全力だと思わないほうがいいよ。その思考のままだと君と僕が敵同士になったときに真っ先に死ぬよ」
アイルが、そう言うとシルヴァは怯えたように、目を見つめながら口を開いた。
「こ、この化け物ども目...どうせ、アマテラス殿は魔女ですよね?それだったら、アイル殿がこんなに強いのが筋が通ります!」
「黙れよ。僕の、アマテラスに手を出してみろ、お前諸共、この国を地図から消すぞ」
アイルが、準備室から出ると、周りは観客であふれかえっていた。それもそうだ、この決闘の審判は国王が持つという異例な決闘、しかも決闘をするのがこの国の王子と、最強といわれた両親から生まれた魔術師。
その決闘をどちらが勝つか賭ける者もいれば、心配そうに見つめる者と、色々な人がいた。
アイルが周りを見渡しながら、競技場の中心に視線をやると、剣の持ち手に手を当てやる気満々の王子が目にはいった。
「王子、手加減はしませんよ?これは忠告です」
「忠告感謝する。だが、その威勢も何処まで持つことかな。楽しみだ」
二人が、そう言葉を交し合った後、その間には静寂が流れた。赤子が居ればこの威圧に耐えれず泣き喚くだろう。
「「開始!!」」
国王がそう叫ぶと、ジリキスは勢い良く、金色の剣を抜いて走り出してきた。
ジリキスの剣筋を見ていると、隙が無く、アイルは何処で一撃入れようかと思いながら捌いていると、タイミングをずらして初手の一撃を受けてしまった。
傷は浅いものの激しく動いているうちに、これは開くな、と判断してアイルはテレポートを使って、距離をとった。
「これなら、回復位はできるだろ」
そう言葉を零しながら、ポーチから緑色の鉱物を取り出して、傷口に当てながら、その鉱物にマナを流し込んだ。ジリキスを確認しながらやっているが、アイルが回復している間は攻撃してくる気配が無く、アイルの回復は完了した。
だが、回復したのもつかの間、ジリキスは元いた場所から姿が消えたと思ったら、アイルの目の前に現れた。
剣の側面で薙ぎ払い、アイルを転がした。その後は見るも耐えない状況になって行った。アイルが魔術を展開する暇なく剣激を繰り出し、アイルは押されたままだった。
(この状況の打開策は...)
そう思った瞬間、心臓が強く脈打った。
(我を使えばいいであろう...こんな小僧一ひねりで終わらしてやるぞ)
その脈の正体は、カオスだった。
(カオス、黙っててくれ。今回は遊びじゃないんだ)
そう、心の中で呟くと、今回は、すんなりと静かになった。
少し、意識がそれて、剣から目を逸らしてしまい、もろに剣が脇腹に入ってしまい大きく吹っ飛ばされた。
「っく、はぁー、はぁー」
「ふん、これが、シルヴァがやられた相手か、口ほどでもないな。シルヴァからの情報だと、『魔女』の弟だと聞いたのだが」
アイルはその言葉に、反応して肩をピクリと動かした。
「その言葉、訂正しろよ。毎回毎回、ウザイんだよ...」
そう言いながら、アイルが立ち上がると、勝ち誇っていたジリキスの笑みが消え、怯えた表情になった。
それは何故か、アイルは、アマテラスと契約しているから、アマテラスの覚醒した時と、アイルが本当の力を使った時の容姿が似る。その容姿は、髪の毛が白色、瞳は赤色なのだが、アイルの時はカオスの残り香がそのマナに反応し、左頬に魔術式が浮き出てくる。
その術式は、アイル自身が、カオスを封じ込めるために作った術式だ。
だが、作ったそのときはまだ完璧に作ることが出来ず、マナの量が増えそれが、その術式を伝って外に流れてしまっている。そのマナの量は、コートに付与されているバフでも抑えきれないほどだ。
「もう、このコート動きずらいから脱いでいいよな...」
そういい、コートを脱ぎ捨てると、周りの観客は泣き叫ぶ者、その場で泡を吹きながら気絶する者が多くいた。
「さて、王子。もう忠告はしません、逃げないでくださいね?...我、アイル・インフィニットが命ずる、その全ての鎖の中の一本を外しその力を解き放て。我を喰らい、此処に混沌を巻き上げろ。喰らえ、カオス!」
『今回は、我を使うのか、小僧。まぁー、アマテラスの正体を明かすより我と言う、現実に姿を現さない力を使ったほうがいいからな...で、小僧..いや、我が主よ何処を差し出すのだ?』
「カオス、右の鎖を解き放つ。我、差し出すのは右手なり」
アイルがそう言うと、右手に鎖が巻かれたが、それは、一瞬にして紫色と白色の粒子に変わって消えて行った。
その鎖が無くなった右腕は、誰もが目を逸らしたくなるほど禍々しく、真っ黒で魔物の腕と化していた。
「そ、それは!お前、もしかして...禁忌を!?」
「察しはいいのですが、王子...この決闘が終わった後、それを公開したらあなたの命は無いと思ってくださいね?僕は、自分の家族を侮辱されるのが一番、嫌なんですよ...それでは、決闘を楽しみましょう」
ジリキスの瞳に写ったものは、魔神だった。
「何故、アマテラス殿も入る必要があるのです?」
「私は、アイルの姉的存在です。なので、部外者ではないですし、今の状態の貴方は何をやるか分かりませんので」
「どういう事なの。それ」
フードを深く被り、そのままの状態で自分の短剣の術式を書き換えている時に、シルヴァの後ろでアマテラスがそう言い放った。
「そのままだよ。獣人は飼い主の命令には絶対。アイルもその事に気付いてるから、勝利報酬を母の形見と、シルヴァちゃんにしたのかと思ったけど...」
「なぜ、その事をご存知で。確か、貴女はあの時、玉座の間には居なかったはずでは?」
「こんな化け物じみた奴の姉だよ?何が出来ても可笑しくないって...だから、少しはマナ操作を覚えたらどうだい?雌犬」
その言葉には棘があり、完全にシルヴァの事を侮辱していた。だが、なぜそんなに口が汚くなったか、それはアマテラスの目を見れば分かった。
アイルは、その目を一度見たことがあった。それは、【混沌の神】カオス、と戦うときに見した目と一緒だった。その事を思い出しながらアイルは笑っていた。
「心配しすぎだよ、姉さん。シルヴァには言うの控えてたけど、君と戦った時の奴が全力だと思わないほうがいいよ。その思考のままだと君と僕が敵同士になったときに真っ先に死ぬよ」
アイルが、そう言うとシルヴァは怯えたように、目を見つめながら口を開いた。
「こ、この化け物ども目...どうせ、アマテラス殿は魔女ですよね?それだったら、アイル殿がこんなに強いのが筋が通ります!」
「黙れよ。僕の、アマテラスに手を出してみろ、お前諸共、この国を地図から消すぞ」
アイルが、準備室から出ると、周りは観客であふれかえっていた。それもそうだ、この決闘の審判は国王が持つという異例な決闘、しかも決闘をするのがこの国の王子と、最強といわれた両親から生まれた魔術師。
その決闘をどちらが勝つか賭ける者もいれば、心配そうに見つめる者と、色々な人がいた。
アイルが周りを見渡しながら、競技場の中心に視線をやると、剣の持ち手に手を当てやる気満々の王子が目にはいった。
「王子、手加減はしませんよ?これは忠告です」
「忠告感謝する。だが、その威勢も何処まで持つことかな。楽しみだ」
二人が、そう言葉を交し合った後、その間には静寂が流れた。赤子が居ればこの威圧に耐えれず泣き喚くだろう。
「「開始!!」」
国王がそう叫ぶと、ジリキスは勢い良く、金色の剣を抜いて走り出してきた。
ジリキスの剣筋を見ていると、隙が無く、アイルは何処で一撃入れようかと思いながら捌いていると、タイミングをずらして初手の一撃を受けてしまった。
傷は浅いものの激しく動いているうちに、これは開くな、と判断してアイルはテレポートを使って、距離をとった。
「これなら、回復位はできるだろ」
そう言葉を零しながら、ポーチから緑色の鉱物を取り出して、傷口に当てながら、その鉱物にマナを流し込んだ。ジリキスを確認しながらやっているが、アイルが回復している間は攻撃してくる気配が無く、アイルの回復は完了した。
だが、回復したのもつかの間、ジリキスは元いた場所から姿が消えたと思ったら、アイルの目の前に現れた。
剣の側面で薙ぎ払い、アイルを転がした。その後は見るも耐えない状況になって行った。アイルが魔術を展開する暇なく剣激を繰り出し、アイルは押されたままだった。
(この状況の打開策は...)
そう思った瞬間、心臓が強く脈打った。
(我を使えばいいであろう...こんな小僧一ひねりで終わらしてやるぞ)
その脈の正体は、カオスだった。
(カオス、黙っててくれ。今回は遊びじゃないんだ)
そう、心の中で呟くと、今回は、すんなりと静かになった。
少し、意識がそれて、剣から目を逸らしてしまい、もろに剣が脇腹に入ってしまい大きく吹っ飛ばされた。
「っく、はぁー、はぁー」
「ふん、これが、シルヴァがやられた相手か、口ほどでもないな。シルヴァからの情報だと、『魔女』の弟だと聞いたのだが」
アイルはその言葉に、反応して肩をピクリと動かした。
「その言葉、訂正しろよ。毎回毎回、ウザイんだよ...」
そう言いながら、アイルが立ち上がると、勝ち誇っていたジリキスの笑みが消え、怯えた表情になった。
それは何故か、アイルは、アマテラスと契約しているから、アマテラスの覚醒した時と、アイルが本当の力を使った時の容姿が似る。その容姿は、髪の毛が白色、瞳は赤色なのだが、アイルの時はカオスの残り香がそのマナに反応し、左頬に魔術式が浮き出てくる。
その術式は、アイル自身が、カオスを封じ込めるために作った術式だ。
だが、作ったそのときはまだ完璧に作ることが出来ず、マナの量が増えそれが、その術式を伝って外に流れてしまっている。そのマナの量は、コートに付与されているバフでも抑えきれないほどだ。
「もう、このコート動きずらいから脱いでいいよな...」
そういい、コートを脱ぎ捨てると、周りの観客は泣き叫ぶ者、その場で泡を吹きながら気絶する者が多くいた。
「さて、王子。もう忠告はしません、逃げないでくださいね?...我、アイル・インフィニットが命ずる、その全ての鎖の中の一本を外しその力を解き放て。我を喰らい、此処に混沌を巻き上げろ。喰らえ、カオス!」
『今回は、我を使うのか、小僧。まぁー、アマテラスの正体を明かすより我と言う、現実に姿を現さない力を使ったほうがいいからな...で、小僧..いや、我が主よ何処を差し出すのだ?』
「カオス、右の鎖を解き放つ。我、差し出すのは右手なり」
アイルがそう言うと、右手に鎖が巻かれたが、それは、一瞬にして紫色と白色の粒子に変わって消えて行った。
その鎖が無くなった右腕は、誰もが目を逸らしたくなるほど禍々しく、真っ黒で魔物の腕と化していた。
「そ、それは!お前、もしかして...禁忌を!?」
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