神の力を喰らった魔術師《マジックキャスター》

白葉南瓜

【第8話】予期せぬ拾い人

 墓参りが終わり、また家路につきほのぼのとアイルとアマテラスは歩いていた。だが、途中で貴重な薬草などを見つけ、アマテラスがそこで道草を食った結果、夜も歩くことになった。

「なー、アイルよ...なぜ瞬間移動魔法テレポートを使わないのだ。それを使えば一飛びであろ?使おう、そうしよう」

アマテラスが肩を落としながらアイルの後ろを、ブツブツと言いながら歩いていた。だが、アイルがその魔法を使わない理由もあるそれは...

瞬間移動魔法テレポートは、一人でしか使えないの知ってるでしょ?アマテラスが契りを交わしたときに大半の、自分のマナを僕の体に移して、大事な術式だけ残したんでしょ...こんな簡単な術式だったら態々移さなくても良かったのに」

アイルは、ブツブツ言っているアマテラスを横目に呆れながらそういった。だが、そのことに不満を抱いたアマテラスは唇を尖らしながら口を開いた。

「それは、仕方ないだろう...あの時は、あやつだって居たのだし、世界が壊れるか奴を殺すかの状況だったんだ。移しておいて損は無いからの」

「開き直るなよ、まったく...でも《天使の鉄槌ホワイトノヴァ》だけでも良かったと思うけどね」

「いやー、それを打った後の回避はどうするつもりだったのだ?あの時のアイルは制御が利かずに結構な範囲を更地にしてたが...」

そんな、昔の事を話しているときにあと少しと言う所で少し雰囲気が変わったのが分かった。
 その雰囲気は、数メートル前方からだった。
 その雰囲気を悟ったアイルは、アマテラスに視線を送り、それを理解したアマテラスはマナを使い透明になり相手から見えないようになった。

「そこにいるのは、誰ですか?自分、此処通りたいんですけど?」

アイルが、何も見えない道の先に声をかけると、返答は無かったが、近づいてくる足音が聞えた。
 その足音が聞えた時点でアイルは警戒し短刀を構える。だが、その暗闇から出てきたのは一人の少年だった。
 その少年は、足に怪我をしていて泣いていた。

「どうしたの?お母さん達は?」

そんな事を聞いていると、その少年の後ろのほうからナイフが飛んできた。
 それを紙一重で回避し短刀の持ち手に手を添えながら周りを見渡すと、その少年の後ろから、数人の男が出てきた。
(ッチ、盗賊か...こんな所に居た覚えは無いんだけどな)

「おい、そこの坊主!お前の着てるものと、さっきまで一緒にいた女を渡してくれたら、命だけはとらねぇよ。おっと、その短剣を抜いてみろ...お前の周りには俺らの仲間が居る、勝ち目なんて無いんだよ」

アイルは、そっと短剣から手を放し、コートの紐を解き始めた。

「おぉ、言うこと聞いてくれるのかー。命だけはとらねぇから安心しろよ。まぁー、男のストリップなんて興味ないから早く脱ぐもん脱いでくれや」

コートの紐を外し終え、足元にそのコートを置くと、その男の周りに居た奴らが、いきなり倒れ始めた。

「な、何やった!?お、お前、もしかして魔術師!?」

「気付くのが遅かったね...僕のコートは少し複雑な術式が織り込まれててね。さぁー、君はどうする?」

アイルは、相手を倒れさせないように、程よく緊張感を走らせ睨んでいた。
 アイルのコートには【不可視魔力】という【効果バフ】がついており、その名の通り、コートを着ると魔力、マナが一定量見えなくなる。だが、その見えない魔力を肌で感じ取ったシルヴァにはアイルも驚いていた。
 リーダー格の奴以外が倒れた理由も、見えなかったマナがいきなり見えるようになり、それの分のマナを処理しきれず気絶した。

「僕は、君たちなんて一捻りなんだよ。これ以上も出せるけどそれだと効率が悪い...まー、今後やら無いようにこれくらいはしておくか...雷槍サンダーランス!」

アイルが、左手を掲げそう唱えると、陣が発動し、周りにいたやつら諸共撃退した。


 そのアイルの姿に、怖気つき盗賊は一斉に逃げていった。だが、その場に足を怪我していた少年だけ残っていた。

「...はぁ、どんだけ自己中心なんだ盗賊って奴は。アマテラス、治癒魔法ヒール使えるでしょ、たまには役にたって」

「何時も、役に立っているだろ!?今日だって、アイルのこと慰めたし!」

アマテラスは、透明化を解除し、アイルの隣に姿を現した。
 それを見ていた、少年は「お、お化け!」と言い、無理してでも逃げようとしていた。

「そう慌てないで僕。傷みしてねー。あ、これは痛そうだね...」

その傷口に手を当て、治癒魔法ヒールと唱えると、そこに緑色の粒子が集まり傷口が消えて行った。元々、そこに傷など無かったかのように。

「わぁ!ありがと!」

少年は、治った足でぴょんぴょん飛びはね、直った事を確かめていた。先ほどまでお化けなどと言い怖がっていたが、今はそのような恐怖は無いようだ。
 だが、まだ少し怖いようでその少年はアイルの足元に行き足に抱きついていた。 
 その様子をアマテラスは、その少年をジッと見つめ、なにか疑問に思っていた。

「アイルやい。お主、先ほどこの子の性別どっちだと思っていた?」

「え、男の子じゃないの?」

「はぁー、残念ながらこの子は女の子...」

アイルは目を点にして口をパクパクしていた。
 しかも、【不可視魔力】を解いている、アイルにくっついていても表情一つ変えず、アマテラスの事を警戒していた。

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