神の力を喰らった魔術師《マジックキャスター》

白葉南瓜

【第6話】やはり最強は最強

 剣を抜いたルビーを目の前に、アイルは、その事を無視するようにルビーのマナの流れを見ていた。
(マナの流れは、後ろのレイさんと変わりないけど...一つだけ右手への流れが違うな)
 アイルがそんな事を思っていると、後ろにいたレイがルビーに耳打ちして剣を納めさした。

「ッチ、やっぱり此処でドンパチしたのが駄目だったか...おい!アイル、衛兵に気付かれたから移動して違う所でやるぞ!」

そんな事を言いながら、足元に瞬間移動魔法テレポートの魔法陣を広げ、その場から消えた。そのマナを追ってアイルも魔術を使った。


 ルビーたちがついてから少し遅れて、その場にアイルの姿が現れた。
 だが、その光景にルビーとレイは目が点になっていた。その理由は、天人ヴァルキリーである二人が魔法陣を使って、移動していたのに、その横で魔法陣を使わずに移動してきたことだ。

「お、おい。アイル、お前...魔法陣はどうした?その魔法を発動するために魔法陣を使わなかった、なんて言う冗談はキツいぜ?」

「そのまさかだよ、ルビーさん。僕は、人間のなかで言われてる《上級魔術師》って言われる魔術師でその中でも一番強いマジックキャスターって言われるんだ」

その説明をしていると、レイは何か分かったようで頷いているが、その横でルビーは、納得行かない感じに、うーっと唸りながら首をひねっていた。
(そんなに分かりづらい事、言ったかな?)

「えっとー、それって、魔術だけは人並み以上ってことですよね?」

アイルが、どう説明しよう考えているとレイがそういった。

「うん、そっちの方が分かりやすかったね。そうだよ、だから魔術のことは何でもお任せって感じ」

「ですが、私達の種族は人間より魔術は優れていますが...《中級魔法》を詠唱しないのは分かりますが、魔法陣なしでの使用はどう考えても理屈が合いませよ?そんなこと出来るのは神か天使ぐらいしか...」

「まぁ、そのことは戦ってれば多分分かるよ。やるんでしょ?」

少し挑発気味に、アイルは腰に下げていた短刀を抜き逆手持ちにして戦闘の準備をした。その事に気付き、ルビーは一度納めた剣をもう一度、抜いた。




 それからは、魔術と剣術の戦いが始まった。剣の腕は両者、どちらも劣らず剣が当たれば火花が散っていた。だが、魔術のほうは、少しルビーが勝っていた。
 神と契りを交わしたとはいえ、元は人間。その魔術に対してのスペックは天人ヴァルキリーであるルビーのほうが有利に立つのは当たり前だった。
 その事を少し悩みながら短剣で飛んでくる魔術を捌いては剣で応戦してを繰り返しているうちに、一つの魔法の事を思い出した。それは、昨日、シルヴァから教えてもらった身体情報書き換えバーンアップの術式を少し弄った魔法陣が書いてある紙がポーチに入っている事だった。
(でも、変に動いて、不意をつかれたら...痛いじゃ済まないだろうな)
 だが、その魔術が使えれば有利の位置に立てることは明白だと言う事をアイルは気付いていた。だから、何処かで隙が出来ないか、探っていると、足元への注意がそれて、足元をすくわれた。

「術式発動!落雷の竜巻サンダートルネード!」

ルビーが術式を発動させると、アイルの足元に一つの竜巻がおき、それによって体が浮いた。
 その後は、体の制御が利かず、落雷に打たれて一方的にやられていた。だが、その事を不利とは一切思わなかった。アイルのコートには、【全属性防御】がついている。
 だから、少し静電気が立っている位にしかなってなかった。
(ここらで出しとくか...これが、吉とでるか凶とでるか...)
そんな事を言って、制御が利かない中で頑張って腕を動かして、ポーチ内から術式が書かれた紙を取り出した。
 その紙を剣に当ててそのまま破り捨てた。

「さて、こっからは、僕のターンだ!」

短剣をしまって、右手の手のひらに一つの術式を浮かばした。

「術式解読...解読完了。術式開放!【拒否権キャンセル】」

アイルがそう一言言うと、その竜巻は直ぐに姿を消し、アイルの体は空中に投げられ、自由落下で地面に近づいていった。
 アイルは、瞬間移動魔法テレポートを使って、元々立っていた場所に着地した。

「な、何ださっきの魔法は!?そんなのきいたことねぇーぞ!」

「そりやそうだよ。だって、昨日、僕が作った術式だからね」

そんな事を言っているアイルに焦りを感じながらルビーは術式を展開して応戦しているが、その術四季は発動する前に、パリンという音を出して粉々になりマナに戻り舞っていた。

「この魔術は、僕に対して飛んでくる害の魔術を発動する前から、壊してくれる。まー、弱点もあるけどね。だけど、僕に知らない魔法なんて無いに等しいけどね」

その事を言い終わると、アイルは勝った笑みを零して、術式を展開した。

「君の戦いに敬してこの魔術で終わらせる。【決着チェックメイト】!」

アイルが、そう言いながら指パッチンをすると、ルビーは、その場に両膝をついた。

「な、なんでだよ!まだ、私の体は動くのに!」

「体は、な。この【決着チェックメイト】は上級魔法の中でも詠唱省略できる魔術で、相手にダメージは無いけど、対象者のマナを消すことが出来る。だけど、自分のマナ使用量は半分になるけど、僕には痛くもかゆくも無いから」

そんな事を言いながら、ルビーに近づいていった。
 ルビーは、近づいてくるアイルを見ながら剣を杖にして立とうとするが力が上手く入らず立てないで居た。その時にアイルは手を貸してルビーを立たせた。

「負けた相手にこんな対応して、なんだ!哀れみでか!?」

「いやいや、戦いは戦い、これはこれ、ですよ。勝ち負けなんて自分には関係ないですから」

アイルが当たり前でしょと付け加えて言うと、ルビーは額に手を当てて大笑いした。

「こりゃ、完敗だよ、本当にお前は面白いやつだな!これからもよろしくしてくれるとありがたい」

「私からもよろしくお願いします」

木の日陰で見ていたレイもその近くに寄ってきて頭を下げていた。その事に、少し動揺したが、頭を上げるように促すとルビーがニッと笑い握手を求めてきた。
 その握手を拒むことなく手を重ねた。
 その光景を、アイルとルビー達のマナを追ってきたシルヴァが見て、少し動揺していた。

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