神の力を喰らった魔術師《マジックキャスター》

白葉南瓜

【第5話】混沌に光り輝く双剣《ヴァルキリー》

 アイルとシルヴァが、夕食を終えて日が落ち、馬車を走られるのは危険だと判断したのか今日は家に泊まることになった。

「で、此処が姉さんの部屋だから、姉さんと寝てね。そんで此処は物置だから入らないでね...で、此処がお風呂、一応沸かしてあるから入りなね。そんで...」

 アイルが、一部屋一部屋丁寧に紹介しているがシルヴァは心此処にあらずな感じに、その説明を聞いているのか分からないが、周りを興味心身に見渡しているのをアイルは感じ取った。

「そんなに珍しい?一応、ここら辺にあるのは、国の市場でも売ってるものだけど...」

「いえいえ、そんな市場に売っている物と一緒にしてはいけませんよ!この花を見ても花びら一枚一枚が生き生きしていて鮮度がいいことが分かります」

 シルヴァはその事を言いながら目をキラキラさしていた。その理由は、シルヴァは戦士でもあり魔術を探求している一人だからだ。アイルが、この花にどんな魔術を使っているのか、どう維持しているのかが気に
なって仕方が無いのだ。

「どんな術式ですか?こんな量があっては維持も難しいかと思いますが...そこら辺の調整はどうやっているのですか?」

「じゃー、それを教える前に...獣人が使う『獣人の書 第三期』の《身体情報書き換えバーンアップ》の事を教えてくれた教えてあげるよ」

 アイルがそう言うと、シルヴァは俯いて、少し悔しそうに拳を握った。その理由は、直ぐにシルヴァの口から教えられた。

「教えるとかその前に、一応、目の前で使ったんですけど...」

「え、いつ?もしかして...あの高速移動した時のやつ?」

 シルヴァはアイルのその言葉に頷いた。
 その事に、少し気まずくなり、鮮度を保つ魔術式を教えた。その事を教わった後、シルヴァは暗い足取りで脱衣所に向かっていった。




「アイルよ...一応言うが、獣人ビーストは種族の中では魔術より体術のほうが特化している。だから《身体情報書き換えバーンアップ》をつかえる者は少ない...」

「うん、それは知ってるよ。だけど、あそこまでマナ量が少ないのによく書き換えが出来るよね。もう少し大掛かりの術式を使ってるのかと思ったけど...壱式だけだったとは...」

 アマテラスとそんな事を言いながら、アイルはシルヴァから聞いたその術式を書きながらそれを少し弄っていた。それを見ながらアマテラスは、自分の手のひらに術式を展開させながらその話を聞いていた。
 その術式は、《演舞【終】フィニッシュダンス》と言われる、アマテラスの固有魔術だ。
 アイルにも《天使の鉄槌ホワイトノヴァ》と言う破壊魔法がある。

「それにしても、その術式って物騒すぎはしないか、アイルよ?」

「そう?でも僕のホワイトノヴァともう一個の術式のほうが物騒だと思うんだけど...よし、出来た」

 アイルはそんな事を言いながら術式を書いていた紙を掲げて、満足げな顔をしていた。

「さて、もうそろそろシルヴァさんも出てくと思うから、入る準備しようかな」


 朝になり、まだ朝日が昇りきっていない朝の部屋に、外から水をかける音が聞えシルヴァは目を覚ました。
 その音に引かれて外に出ると、井戸で水を汲み自分の体にかけ洗っているアマテラスが居た。

「あ、ご、ごめんなさい。えっとー、そのー」

 アマテラスは元神で死に掛けていたとは言え、その体は誰の目もひく美貌をもっている。
 だが、やはり昔、戦士につけられた傷は消えずに体に刻まれている。その傷を見たシルヴァは口をパクパクしていた。

「あ、申し訳ない。この時間帯はアイルも寝ているので、他のも寝ていると思って...見苦しいものをみしたね」

 そんなアマテラスの言葉も無視しながらシルヴァはその傷を見ていた。
(こんな傷...普通な人がやられたら致命傷じゃすまない...なんなんだ、この人)

「あ、い、いえ。私のほうこそ、そのー、見とれていて...あの、一つだけ訊いていいですか?」

「いいよ、私に答えられることは、答えよう」

「それなら...あなた、普通の人間じゃないですよね?一応、私も獣人ですのでその傷が何の魔法でやられたか分かるんですよ...」

 シルヴァの口からそんなことが放たれるなんて思っていなかったアマテラスは、動揺したがすぐにその表情を笑みに変えた。

「シルヴァどn...シルヴァちゃんはまだ若いんだから、まだ知らなくていいこともあるんだよ。で、その答えはNО...私は見ての通り普通の人間。この傷はアイルがふざけて発動さした魔法でやられただけだよ」

 その後に、深く考えすぎ、と言いながら笑っているアマテラスをみてシルヴァは少しおかしな事を言ったと後悔していた。
だが、アマテラスは表面上笑ってはいるが、内心凄く焦っていた。
(やばいやばい...このまま、神だってバレたらアイルに何されるかわかんない...)




 シルヴァを屋敷に返すために、またアイルとアマテラスは国内に来ていた。
 前に来たときと違う雰囲気をアイルと、アマテラスは感じ取っていた。

「アイルよ、この感じ...分かってるか?」

「分かってるよ。多分、術師のなかでも上級魔術師か...それか、この予感が当たれば、【天人ヴァルキリー】だよね?」

 アイルとアマテラスがそんな事を話していると、大通りに黒いコートと白いコートを羽織っている二人組みが、そこにいた。
 その二人組みは、アイルたちが乗った馬車を見て、黒いコートのほうが微笑んだ。

「おっと、そこの馬車の荷台に乗ってるマナが物凄い強いやついるだろ。そいつに会わせてくれよ」

 黒いコートの方は、そう馬車を引いている者にそう言っていた。だが、その後ろで白いコートの人はオドオドしていた。

「おい、会わせろって!そこにいるんだろ。なー!」

「その人って、僕のことですか?貴女の望み通りでてきましたよ」

 アイルがそう言いながら、馬車から出て行くと黒いコートのやつは、荷馬車を引いている人から手を放した。

「おお、そうだ。お前だよ!名前を教えてくれよ」

「人に名前を聞くときは、普通自分の名前からなのんだけど...デモ君たちには普通は通用しないみたいだね。天人ヴァルキリーの二人?名前は、アイル・インフィニット、で、そっちは?」

「おお、アイルか。私は、ルビー・ヴァルキリー」

「わ、私は、レイ・ヴァルキリー。私が妹で、ルビーが姉です」

 アイルは、その二人を見て分かったが、そのマナの量はアイルと同じで片方は【堕落している力】でもう片方は【聖なる力】だ。
(厄介のことに多分、黒色のコートの方が堕落してるな...口調からも分かるけど)
 その二人の剣には、自分自身の力を込めていて、その強さが現されていた。その力にアイルは少し動揺したが、それを表情に表さずに一歩前へ出た。

「そんなに緊張するなって、痺れちまうだろ」

 そんな事を言いながら腰から剣を抜くルビー、それは戦闘を意味した。

【堕落している力を操る天人】と【聖なる力を操る天人】と【神の力を喰らった魔術師】このなかで最強なのは...

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