幼馴染からのプロポーズを全力で断ろうと思います

りんか

(14)

 そうだ。また、思い出した。
 その1。タルに乗ったタル男さんが私をかかえたまま、戦っていた相手。
 『素敵すぎるよ、あなたの鼻筋!』鼻筋ばかりほめていた、鼻筋男……の子! あのときは前髪並みにインパクトの強いサングラスがあって顔はよくわからなかったけど、この前髪を見間違うはずがない。
 その2。あのコロシアムで、黒装束の男=町長さんが接触していた相手。
 大事な方と呼んでいたその相手にも、あのド派手な前髪があった。
『あなたが、主催者なんですか?』
『さあ、どうでしょうねえ。わたしはこの場所を提供して、すべての運営を任せられていますが』
 ヌホホ町長は、そんな風にあいまいに答えていた。わたし『は』ということは、少なくとも協力者がいるのかもしれない。
 ちょっと、待って……
 ピースを組み合わせていくと、私の中である結論が導きだされた。でもそれは、あまりにも突拍子がなくて。だってその人は、私の目の前にいる秋斗くんたちの仲間なんだから。
「まさか――、ね。まさか、だよね?」
 私の視線に気づいたらしい、セディスくんが目を細めてこちらを凝視してくる。
「なに? ボクに、なにかしら言いたそうな顔をしている系だけど」
「……あの。あなたの髪型って、すごく個性的で素敵ですね」
「へえ。あんた、案外いい目をしているじゃん。ナイツの連中とか、どいつもこいつも頭かたいやつばっかでこのセンスをまったく理解できない系でさ、ナイツとして行動中のときは隠しておけって言ってきたんだよ? マジでありえない系だよね」
 フン、と鼻息あらく語るセディスくんに「そ、そうですね」と、とりあえず相槌をうつ。
「まあ、一人だけウザイくらいにすごいすごいって連呼してくるやつもいた系だけど」
「そ、そうなんですね」
 肩をすくめてウザイと言っているわりにまんざらでもなさそうだけど、と私は苦笑してしまう。
「その髪型って、長いんですか?」
「そこそこの長さになる系だとは思うけど」
「そんな素敵な髪型なら、同じような人ってそうそういないでしょうね」
「ボクは常にオンリーワン系をねら――もとい、意識しているんだ。決まっているじゃん」
 芝居がかった仕草で右手をふりながら、セディスくんが得意げに笑う。
 私は、唇を引き結んだ。
 これ以上は、詮索しない方がいいんだろうな。せめて、サリューが戻ってきてから。そう自分を制御していたけれど、私の前を通り過ぎて扉から出て行こうとするセディスくんに、私は我慢ができなかった。
「私……、あなたと同じ髪型の人を見たことがあるんです」
「へえ、そうなんだ?」
 扉に手をかけていたセディスくんが、ふりかえってくる。
「最初に見かけたのは、さっきあなたが問いつめていた彼と戦っていたところです。あのときは任務中だったのか、エレナイの団服で派手なサングラスをかけていました。そのあと私は、その人のあとを追ってこの町にきました。そこで一度見失いましたけど、またその髪型を目にすることがあったんです。場所は――、コロシアムでした」
「ふーん。それで?」
 カチャ、とセディスくんの背後からかわいた音。
 もしかして、鍵をかけられた?
 じんわりと浮かんでくる手の汗を握りしめながら、私は言葉をつづけた。
「そのときの服装はエレナイの団服じゃなかったけど、その人は黒装束の町長さんとすごく親しそうにしていました。町長さんは、大事な方って呼んでいた。私、思ったんです。もしかしたらその人が――、コロシアムでバトルロイヤルを主催している張本人なんじゃないかって」
「…………」
 セディスくんが、無言でこちらに歩み寄ってきた。
「どうして、あそこにいたんですか?」
「知ってどうする系? そもそも、本当にそれはボクだったの?」
「それは……」
 私の両足が、勝手に後退を始める。背中に、冷たい壁。逃げ場を手探りしながら、私は横へと身体をすべらせていく。
「ただ単に、髪型が似ていた系かもしれないじゃん? 珍しくもないよね」
「でもさっき、オンリーワンって言ってました」
「言葉のあやに決まっているじゃん。それに、黒装束を着ていたのが本当に町長だったかも限らない系だよね?」
「あんなにあからさまに態度に出ていたのに、ですか?」
「そうだよ。なら、証拠はある系なの? その二人がボクや町長だっていう、それを決定づけるような証拠ってやつが」
「それは……」
 口ごもる私に、ニヤとセディスくんの赤い唇が薄くひらかれた。
「じゃあ、話は終わり系だよね? なかなかおもしろい妄想話だったじゃん。頭の悪そう系なアタワルちゃんにしちゃ、いい出来栄えだったよ」
「ありがとう、ございます」
「それ、アキトやサリューには話した系?」
「……いいえ」
「そっか。ならさ――」
 セディスくんが、腰からシュルシュルとひも状のものを引き抜いていく。
 ギラリ、と不気味に光るそれは金属製の鞭。先の方が枝分かれしていて、さらにトゲトゲまでついた見るからに痛そうな……
 ピシシ、とそれが床をうった。
「こっちにとっては、好都合かな。特にこのままでも問題はないだろうけど、念には念をいれる系じゃないとね。ちょーっと遊ぼうとしたくらいで、いざこざにかかわるのもめんどくさい系だし。口をきけなくしてやる系? 恐怖でしばりつけてやる系? それとも、うーん?」
 な、なに物騒なことを言ってくれちゃってるの!?
「まあ、いいや。どうせ最後は壊しちゃう系なんだし――、遊ぼうよ」
「!」
 鞭が宙を切り裂いて、私に襲いかかってくる。

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