日替わり転移 ~俺はあらゆる世界で無双する~(※MFブックスから書籍化)
32.公開処刑
「フォースバリア! イリュージョナルエレメンツ!」
試合が始まると同時に、ヒュラムが力場障壁を展開した。
さらに、七色の輝きを持つ魔力弾を周辺に大量生産してくる。
「出ました~! ヒュラム・スペイセル選手の真骨頂……同時発動です!」
うん? 実況ちゃんや、今のは同時発動チートじゃないぞ? ただ単に順番に波動魔法を使っただけだ。
確かに自信があるだけあって魔法の構築速度はアマリアやレリスちゃんとは比較にならないけどさ。
さすがにチート転生者。口だけというわけじゃないらしい。
「言っておくが、僕はアマリアのイリュージョナルエレメンツと、レリスのフォースバリアを同時使用できる。お前の剣がどれほどチートでも届かないし、僕は一方的に全属性による波状攻撃ができる」
ヒュラムが高らかに笑いながら、己の勝利を確信して俺を見下してくる。
「それに僕には幼いころから鍛えて来た無限に等しい魔力がある。魔力切れを期待しないほうがいいぞ」
「いいぜ。お前の土俵、お前のルールの中で相手をしてやるよ。好きなだけ撃ってこい」
こちらも傲然と言い返す。
ヒュラムの背後に見える観客席では、エイゼムが身を乗り出していた。
俺が剣星本人であることは伝えてなかったし、伝える気もなかったんだけど。
こうなったからには、よく見ておけよ。
この試合が剣星としての俺が贈る、最後の修行だ。
「そうさせてもらおう……さあ、行け七色の死よ! ヤツを消し炭にしてやれ!」
ヒュラムが腕を振り下ろすと同時、七色光弾がさまざまな方向から俺に向かって高速で飛んできた。
光弾のひとつひとつに本気の殺気を感じる。
どうやら魔戦大会のルールを破ってでも、ここで俺を殺したいらしい。
まあ、そうこなくっちゃな。
「剣星流奥義・流巻」
剣をくるりと回して、一種の風を巻き起こす。
すると風によって光弾の軌道が乱れ、でたらめな方向に散らばっていく。
もちろん、俺への命中弾はひとつもない。
「なっ、どういうことだ!?」
ヒュラムが驚愕して叫ぶ。
「こ、これはいったいどういうことでしょうか!? 剣聖トーリス……じゃなかった、サカハギ選手が剣を回転させたら、イリュージョナルエレメンツが迷子になった小鳥みたいにふわふわ飛んでいっちゃいました~!?」
実況ちゃんの表現が面白くって、つい吹き出しそうになった。
観客のみんなもクスクス笑っている。
「これが剣星流の奥義・流巻だ。剣で風を起こすことで物理・魔法両方の遠隔攻撃の狙いを逸らす」
「クッ、嘘をつくな。剣を動かしたぐらいで魔法に干渉できるような風が起きてたまるか!」
俺の解説にヒュラムが激昂しながら魔力を高めていく。
「なら、これはどうだ! イリュージョナルエレメンツ・ランス!」
「おおっと、これは初お目見えか!? イリュージョナルエレメンツの光がひとつに集まって、槍の形状に変化しましたー!」
実況ちゃんの解説に気をよくしたか、ヒュラムが嗜虐的な笑みを浮かべる。
「ははは! コイツも全属性攻撃だ! 魔力を一点集中した槍の一撃……たかが風ごときで逸らせると思うな! 死ねぇ!」
ヒュラムが腕を振るうと、俺の眉間に向けてまっすぐ魔力槍が放たれた。
「剣星流奥義・理突」
対する俺は剣を突き出して、槍の切っ先に合わせる。
拮抗しているところに回転を加えると、あら不思議。
魔力が飛散して槍は消えるのであった。
「な、なんということでしょう! こんなことがあり得るのでしょうか!? 私にはサカハギ選手が剣で魔法を受け止めて打ち消したように見えましたがー!?」
これには会場中が度肝を抜かれたようで、実況ちゃんの解説もノリにノっている。
ヒュラムが唾を飛ばしながら、こんなことは有り得ないと首を振った。
「嘘だ! 魔力以外で魔力を打ち消すなんてこと! ただの剣でできるわけない!」
「まだ気づかないのか?」
やれやれと首を横に振り、これみよがしに剣を見せつける。
「お前らがマジックオーラと呼んでいるものを剣に纏わせているんだぞ」
「ふん、剣士のお前に魔力なんて……」
だが、ヒュラムがふと思い直したように俺を凝視した。
「魔力視覚……なっ、嘘だ! 剣士は魔力をもたないはず!」
魔力視覚とやらだと魔力波動そのものが見えるわけじゃないのか。
道理でアホなことばっかり言ってるわけだ。
「お前らがマジックオーラとか呼んでるモノは、魔力波動が強くなって魔力として見えやすくなった状態のことらしいな。実際の魔力波動は誰にでもあるんだぜ? 強弱はあるけどな」
「黙れ! マジックオーラは生まれついた才能がすべてなんだ! オーラがないヤツに新魔法を使うことなんてできない!」
「だったらなんで、魔法がこんなに世の中に広まってると思うんだ? お前の功績だろ? 魔力波動を操る新魔法とやらのおかげで、今の基礎が築けたんじゃないか」
「それは単に才能ある人間が発掘され、認められただけだ!」
ああ、そっか。
お前は認めたくないんだな。
この異世界でも、自分がひとりの人間に過ぎないってことを。
この異世界でも、自分が主人公の物語なんてないってことを。
いい加減に現実を教えてやる。
「何度でも言うぞ。お前が選ばれた者にしか宿らないと言い張るマジックオーラの正体は、実際には誰にでもある魔力波動だ。お前が開発した波動魔法は人々に魔力波動の操作を学ばせる基礎となり土台となった。わからないか? 魔力波動の操作はチートでもなんでもない。訓練すれば誰にでも習得できる、ただの技術なんだよ」
「嘘だ! 僕は選ばれた存在なんだ!」
ま、当然受け入れられるわけないよな。
生まれつき魔力波動を操作できたりして調子に乗ったんだろうけど。
残念だけど、お前はここで終わりだよ。
「ムカつくヤツ、邪魔なヤツ……僕が死ねと言ったら、お前は死ねばいいんだよ、クソが!!」
髪を振り乱して悪態をつくヒュラムを、俺はまっすぐに見据えた。
「だからエイゼムを道場破りと称して怪我させたってわけか。仮面までつけて。剣星流が憎いから」
「そうさ! 邪魔なヤツだから消そうと思ったんだ!」
はい、公式の場での自白取れましたっと。
ちなみにお前がエイゼムに使った挑発魔法を使ったんだぜ?
気づかなかったろ? ああいうのは、こういうときに魔力を隠蔽して使うんだよ。
「さて、お前が気づいてなさそうだから教えてやる。俺はさっきから、左腕と右目を使っていない」
俺の指摘にヒュラムがハッとした。
まあ、こんなの俺の自己満足で、エイゼムへの手向けだ。
道場での試合を邪魔された恨みも込めている。
「剣星流・魔閃」
俺が虚空で剣を振るうと、不可視の刃が離れた場所にいるヒュラムを切り裂いた。
「ぐわああああっ! 腕が! 僕の腕がああああ!!?」
「何ボーっとしてるんだ? 今のは奥義でもなんでもない、ただの魔力刃を飛ばすだけの技だぞ? 魔力だからお前の力場障壁を貫通する。魔力視覚とやらでもはっきり見えたはずだがな」
腕を抑えて泣き喚くヒュラムが舞台の上をゴロゴロと転がっている。
精神集中が途切れたからか、力場障壁が幻のように消え去っていた。
ひょっとしたら、初めての負傷か?
まあ、力場障壁に隠れて調子に乗っていたようなヤツのことだ。
弟子にも自分には負けるよう言い含めていたに違いない。
しばらくするとドングリみたくコロコロ転がるのをやめ、うずくまるだけになった。
そんなヒュラムを魔閃で丹念に切り刻んでいく。
「ひ、ひいいぃぃ!」
皮膚を傷つける程度の攻撃とも言えないような魔閃の応酬にみっともない悲鳴を上げるヒュラム。
もちろん、このまま決めるつもりはない。
みんなが見てる中でメッキを全部剥がして公開処刑しなきゃ、俺の気が済まないのだ。
「ほら、立てよ。まだ拷問は始まったばかりだぜ。自業自得のクズ野郎」
試合が始まると同時に、ヒュラムが力場障壁を展開した。
さらに、七色の輝きを持つ魔力弾を周辺に大量生産してくる。
「出ました~! ヒュラム・スペイセル選手の真骨頂……同時発動です!」
うん? 実況ちゃんや、今のは同時発動チートじゃないぞ? ただ単に順番に波動魔法を使っただけだ。
確かに自信があるだけあって魔法の構築速度はアマリアやレリスちゃんとは比較にならないけどさ。
さすがにチート転生者。口だけというわけじゃないらしい。
「言っておくが、僕はアマリアのイリュージョナルエレメンツと、レリスのフォースバリアを同時使用できる。お前の剣がどれほどチートでも届かないし、僕は一方的に全属性による波状攻撃ができる」
ヒュラムが高らかに笑いながら、己の勝利を確信して俺を見下してくる。
「それに僕には幼いころから鍛えて来た無限に等しい魔力がある。魔力切れを期待しないほうがいいぞ」
「いいぜ。お前の土俵、お前のルールの中で相手をしてやるよ。好きなだけ撃ってこい」
こちらも傲然と言い返す。
ヒュラムの背後に見える観客席では、エイゼムが身を乗り出していた。
俺が剣星本人であることは伝えてなかったし、伝える気もなかったんだけど。
こうなったからには、よく見ておけよ。
この試合が剣星としての俺が贈る、最後の修行だ。
「そうさせてもらおう……さあ、行け七色の死よ! ヤツを消し炭にしてやれ!」
ヒュラムが腕を振り下ろすと同時、七色光弾がさまざまな方向から俺に向かって高速で飛んできた。
光弾のひとつひとつに本気の殺気を感じる。
どうやら魔戦大会のルールを破ってでも、ここで俺を殺したいらしい。
まあ、そうこなくっちゃな。
「剣星流奥義・流巻」
剣をくるりと回して、一種の風を巻き起こす。
すると風によって光弾の軌道が乱れ、でたらめな方向に散らばっていく。
もちろん、俺への命中弾はひとつもない。
「なっ、どういうことだ!?」
ヒュラムが驚愕して叫ぶ。
「こ、これはいったいどういうことでしょうか!? 剣聖トーリス……じゃなかった、サカハギ選手が剣を回転させたら、イリュージョナルエレメンツが迷子になった小鳥みたいにふわふわ飛んでいっちゃいました~!?」
実況ちゃんの表現が面白くって、つい吹き出しそうになった。
観客のみんなもクスクス笑っている。
「これが剣星流の奥義・流巻だ。剣で風を起こすことで物理・魔法両方の遠隔攻撃の狙いを逸らす」
「クッ、嘘をつくな。剣を動かしたぐらいで魔法に干渉できるような風が起きてたまるか!」
俺の解説にヒュラムが激昂しながら魔力を高めていく。
「なら、これはどうだ! イリュージョナルエレメンツ・ランス!」
「おおっと、これは初お目見えか!? イリュージョナルエレメンツの光がひとつに集まって、槍の形状に変化しましたー!」
実況ちゃんの解説に気をよくしたか、ヒュラムが嗜虐的な笑みを浮かべる。
「ははは! コイツも全属性攻撃だ! 魔力を一点集中した槍の一撃……たかが風ごときで逸らせると思うな! 死ねぇ!」
ヒュラムが腕を振るうと、俺の眉間に向けてまっすぐ魔力槍が放たれた。
「剣星流奥義・理突」
対する俺は剣を突き出して、槍の切っ先に合わせる。
拮抗しているところに回転を加えると、あら不思議。
魔力が飛散して槍は消えるのであった。
「な、なんということでしょう! こんなことがあり得るのでしょうか!? 私にはサカハギ選手が剣で魔法を受け止めて打ち消したように見えましたがー!?」
これには会場中が度肝を抜かれたようで、実況ちゃんの解説もノリにノっている。
ヒュラムが唾を飛ばしながら、こんなことは有り得ないと首を振った。
「嘘だ! 魔力以外で魔力を打ち消すなんてこと! ただの剣でできるわけない!」
「まだ気づかないのか?」
やれやれと首を横に振り、これみよがしに剣を見せつける。
「お前らがマジックオーラと呼んでいるものを剣に纏わせているんだぞ」
「ふん、剣士のお前に魔力なんて……」
だが、ヒュラムがふと思い直したように俺を凝視した。
「魔力視覚……なっ、嘘だ! 剣士は魔力をもたないはず!」
魔力視覚とやらだと魔力波動そのものが見えるわけじゃないのか。
道理でアホなことばっかり言ってるわけだ。
「お前らがマジックオーラとか呼んでるモノは、魔力波動が強くなって魔力として見えやすくなった状態のことらしいな。実際の魔力波動は誰にでもあるんだぜ? 強弱はあるけどな」
「黙れ! マジックオーラは生まれついた才能がすべてなんだ! オーラがないヤツに新魔法を使うことなんてできない!」
「だったらなんで、魔法がこんなに世の中に広まってると思うんだ? お前の功績だろ? 魔力波動を操る新魔法とやらのおかげで、今の基礎が築けたんじゃないか」
「それは単に才能ある人間が発掘され、認められただけだ!」
ああ、そっか。
お前は認めたくないんだな。
この異世界でも、自分がひとりの人間に過ぎないってことを。
この異世界でも、自分が主人公の物語なんてないってことを。
いい加減に現実を教えてやる。
「何度でも言うぞ。お前が選ばれた者にしか宿らないと言い張るマジックオーラの正体は、実際には誰にでもある魔力波動だ。お前が開発した波動魔法は人々に魔力波動の操作を学ばせる基礎となり土台となった。わからないか? 魔力波動の操作はチートでもなんでもない。訓練すれば誰にでも習得できる、ただの技術なんだよ」
「嘘だ! 僕は選ばれた存在なんだ!」
ま、当然受け入れられるわけないよな。
生まれつき魔力波動を操作できたりして調子に乗ったんだろうけど。
残念だけど、お前はここで終わりだよ。
「ムカつくヤツ、邪魔なヤツ……僕が死ねと言ったら、お前は死ねばいいんだよ、クソが!!」
髪を振り乱して悪態をつくヒュラムを、俺はまっすぐに見据えた。
「だからエイゼムを道場破りと称して怪我させたってわけか。仮面までつけて。剣星流が憎いから」
「そうさ! 邪魔なヤツだから消そうと思ったんだ!」
はい、公式の場での自白取れましたっと。
ちなみにお前がエイゼムに使った挑発魔法を使ったんだぜ?
気づかなかったろ? ああいうのは、こういうときに魔力を隠蔽して使うんだよ。
「さて、お前が気づいてなさそうだから教えてやる。俺はさっきから、左腕と右目を使っていない」
俺の指摘にヒュラムがハッとした。
まあ、こんなの俺の自己満足で、エイゼムへの手向けだ。
道場での試合を邪魔された恨みも込めている。
「剣星流・魔閃」
俺が虚空で剣を振るうと、不可視の刃が離れた場所にいるヒュラムを切り裂いた。
「ぐわああああっ! 腕が! 僕の腕がああああ!!?」
「何ボーっとしてるんだ? 今のは奥義でもなんでもない、ただの魔力刃を飛ばすだけの技だぞ? 魔力だからお前の力場障壁を貫通する。魔力視覚とやらでもはっきり見えたはずだがな」
腕を抑えて泣き喚くヒュラムが舞台の上をゴロゴロと転がっている。
精神集中が途切れたからか、力場障壁が幻のように消え去っていた。
ひょっとしたら、初めての負傷か?
まあ、力場障壁に隠れて調子に乗っていたようなヤツのことだ。
弟子にも自分には負けるよう言い含めていたに違いない。
しばらくするとドングリみたくコロコロ転がるのをやめ、うずくまるだけになった。
そんなヒュラムを魔閃で丹念に切り刻んでいく。
「ひ、ひいいぃぃ!」
皮膚を傷つける程度の攻撃とも言えないような魔閃の応酬にみっともない悲鳴を上げるヒュラム。
もちろん、このまま決めるつもりはない。
みんなが見てる中でメッキを全部剥がして公開処刑しなきゃ、俺の気が済まないのだ。
「ほら、立てよ。まだ拷問は始まったばかりだぜ。自業自得のクズ野郎」
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