裏切り勇者と平凡最強のドラナヴァク
プロローグ2. 勇者を屠りし者
※プロローグ1とは視点、場面共に異なっております
このプロローグ2は冒険者の主人公視点のプロローグです。
「...貴様はっ!....貴様は何者だァ!」
目の前に立つ、1人の男。その男は全身を金属製のフルプレートアーマーで身を包んでいる。
顔はバイザーで隠されており、素顔は見えない。
右手には刃渡り60cm程の微妙な長さの剣、左手には鉄製の盾。
誰がどう見ようとも、一般的な冒険者の装備だ。
...だと言うのに何だ。この何ともいえない「違和感」は。 まさか....
「俺の...【神技巧】を見破ったとでもいうのかァ!?」
前に立つ男は一言も言葉を考え発さず、静かにコクリと頷いた。
その瞬間、背中にムカデが這いずり回るような....恐怖感と不安感に苛まれた。
「舐めるなよ...冒険者...風情がァ!」
それは無い。有り得ない。不可能だ。
よりによって、自分の持つ【人智を超越した力】が冒険者風情に看破されるなんて...そんな事はない。
絶対にだ。天地がひっくり返ろうとも...それは有り得ない。
「喰らえぇ! 神技巧...《無慈悲な執行》!」
神技巧の一種【無慈悲な執行】...使用者に対して、憎悪あるいは攻撃の意志を持ち、向かってきたものは心臓を穿たれ、即死。...神に与えられし最強の力。誰もコレを破ったものはいない。
「その攻撃...把握した。」
「...粋がるなよ。冒険者ァ!」
「...スキル《把握》」
鎧を纏う男は、【無慈悲な執行】が発動された...次の瞬間にスキルを発動させ、右手の剣で見えない何かを思いっきり切り裂き、振り払った。...端から見れば、タダの素振りだ。
男の繰り出した剣の一振りで、地面の砂が空中を大きく舞う。
それは砂煙となり辺りを包み込んだ。
....
40秒ばかり経った後、砂煙が次第に晴れはじめ、何となく辺りを確認できるまでになった。
普通なら心臓を潰され地面に倒れ、見えなくなるはずのあの男の影。
しかしそれが、砂煙の中にハッキリと確認できた。
つまり、死んだとばかり思っていたあの男が生きているということだ。
「馬鹿な....死んでないだと!?」
信じられない現実を目の当たりにし、思わず困惑する。
そんな中、舞い上がった砂煙はスッカリ晴れ、そしてあの男の姿がしっかりとそこにあった。
「言ったろ。把握したと...」
「有り得ない。そんな...有り得ない!」
男は、ジワジワとこちらまで...にじり寄る。
右手に持つ、剣を鋭く、威圧するように突きつけながら。
「まままっ...待ってくれぇ! アンタの仲間達を殺しちまったのは反省してる! ホントっ...偶々なんだよ。アイツらが俺に殺意を向けるからよぉ...自動的に発動しちゃっただけだって....マジだぜ。 殺すつもりなんてよぉ...」
「殺したのは事実だろうが」
男は、冷たく鋭い剣を持つ右手に力を強く込めた。
もう彼から逃れることは....できない。
神託を授かりし勇者であろうと.....神であろうと。
「お前は、償わなくてはならない。穢れきったお前の命をもって」
「やめ...て....くれぇ」
ザシュッ
 ........肉と骨の絶たれる生々しい音が、辺りに響き渡った。
*
この物語は、しがない中堅冒険者である男が後に...
【勇者を屠りし者】と呼ばれるまでの物語である。
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