The King of Old ~うちの老いぼれが竜を斬った~
2 「秘境の宿」
月が城壁のごつごつした表面を美しく照らし出す。
夜の静けさの中、馬の蹄の音がかすかに聞こえる。
どうやら使いの者が帰ってきたようだ。
王が守衛に扉を開くよう命じた。
王室の扉は堅牢そのもので、かつてこの城を建てた建築技師が、たとえ城を落とされても王室だけは突破できないように設計したものだった。
もし非力で痩せている守衛ならこの扉を開ける仕事は務まらないだろうし、もしバーンズが自力で王室を出る羽目になったら、椅子の後ろにある小さな窓から身を投げるしか方法はないだろう。
激しい音を立てて扉が開き、使者が部屋に入ってきた。
「ジークはどうした……」
王が問いかけると、使者は壁の一点を見つめて答えた。
「申し訳ございません。確かに勇者様はそこにおられました。お連れしようと試みたのですが、なかなか頑固と言いますか……、一向に温泉から出られようとはしないのです。」
バーンズは一瞬、顔をしかめたが、次の瞬間にはフッと笑いこう言った。
「頑固者か……それでこそ不屈の男よ……よかろう。私が直接頼みに行こう。」
弱々しい表情で立っていたトーンズに、
「行くぞ、トーンズ。」
こう言い放ち部屋を出ていく王を、彼は急いで追いかけた。
王のために馬が用意され、彼らは直ちに出発した。
********************
山道では、使者がバーンズ一行を案内したが、「こんな場所に本当に宿があるのか?」とか、「まったく、私をどこへ連れていく気だ。」などと王が使者に際限なく文句を言っていたため、到着した頃には彼の顔はやつれきっていた。
「ここです。」
草木の生い茂る山道が突然開けたかと思うと、極めて古めかしい雰囲気の宿が彼らの目の前に現れた。
あまりにも閑散としていたので、この宿が営業しているかどうかについて、バーンズ達は中の様子を見るまで安心できなかった。
全てを取り込んでしまうかのような神秘的かつ絶対的な自然。その中で皆、憂わしげな表情を浮かべていた。
しかし、建物の奥に立ちのぼる湯気や、玄関の奥から運ばれてくる料理の匂いが彼らの不安を解消した。
バーンズは慎重に馬を降りてから、宿の中にずかずかと入っていった。
受付の老人を見つけると、ジークについて尋ねたが、老人は迷惑そうな表情で、
「ジーク様はここ一週間、宿ごと貸し切っておられます。誰も入れるなと……」
「なんだと。こちらは急用なのだ。そなた、私が誰か分からないのか?」
老人は眉をひそめ、首をかしげた。
バーンズはうーむ……と静かに唸るとうつむいて黙り込んでしまった。
トーンズが玄関に入り、慌てた様子で状況を説明すると、老人は軽く詫びを入れて二人を中に通した。
宿は外から見るよりも広く、さらに宿の面積の半分ほどが温泉になっていた。
「こちらです……」
老人は湯気が出ている方を指さし、バーンズ達を外の露天風呂へ案内すると、湯気に紛れてどこかへ消えてしまった。
   外には大小3つの露天風呂があり、そこから出る湯けむりはまるで火山の頂にいるかのように辺りを包んでいた。
   真ん中の大きな風呂から数人の男たちの笑い声が聞こえてくる。
そこには、体中傷だらけの男と、その両脇に若い男達がいた。
バーンズとトーンズは驚いた様子で顔を見合わせる。
「そなたがジークか?」
夜の静けさの中、馬の蹄の音がかすかに聞こえる。
どうやら使いの者が帰ってきたようだ。
王が守衛に扉を開くよう命じた。
王室の扉は堅牢そのもので、かつてこの城を建てた建築技師が、たとえ城を落とされても王室だけは突破できないように設計したものだった。
もし非力で痩せている守衛ならこの扉を開ける仕事は務まらないだろうし、もしバーンズが自力で王室を出る羽目になったら、椅子の後ろにある小さな窓から身を投げるしか方法はないだろう。
激しい音を立てて扉が開き、使者が部屋に入ってきた。
「ジークはどうした……」
王が問いかけると、使者は壁の一点を見つめて答えた。
「申し訳ございません。確かに勇者様はそこにおられました。お連れしようと試みたのですが、なかなか頑固と言いますか……、一向に温泉から出られようとはしないのです。」
バーンズは一瞬、顔をしかめたが、次の瞬間にはフッと笑いこう言った。
「頑固者か……それでこそ不屈の男よ……よかろう。私が直接頼みに行こう。」
弱々しい表情で立っていたトーンズに、
「行くぞ、トーンズ。」
こう言い放ち部屋を出ていく王を、彼は急いで追いかけた。
王のために馬が用意され、彼らは直ちに出発した。
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山道では、使者がバーンズ一行を案内したが、「こんな場所に本当に宿があるのか?」とか、「まったく、私をどこへ連れていく気だ。」などと王が使者に際限なく文句を言っていたため、到着した頃には彼の顔はやつれきっていた。
「ここです。」
草木の生い茂る山道が突然開けたかと思うと、極めて古めかしい雰囲気の宿が彼らの目の前に現れた。
あまりにも閑散としていたので、この宿が営業しているかどうかについて、バーンズ達は中の様子を見るまで安心できなかった。
全てを取り込んでしまうかのような神秘的かつ絶対的な自然。その中で皆、憂わしげな表情を浮かべていた。
しかし、建物の奥に立ちのぼる湯気や、玄関の奥から運ばれてくる料理の匂いが彼らの不安を解消した。
バーンズは慎重に馬を降りてから、宿の中にずかずかと入っていった。
受付の老人を見つけると、ジークについて尋ねたが、老人は迷惑そうな表情で、
「ジーク様はここ一週間、宿ごと貸し切っておられます。誰も入れるなと……」
「なんだと。こちらは急用なのだ。そなた、私が誰か分からないのか?」
老人は眉をひそめ、首をかしげた。
バーンズはうーむ……と静かに唸るとうつむいて黙り込んでしまった。
トーンズが玄関に入り、慌てた様子で状況を説明すると、老人は軽く詫びを入れて二人を中に通した。
宿は外から見るよりも広く、さらに宿の面積の半分ほどが温泉になっていた。
「こちらです……」
老人は湯気が出ている方を指さし、バーンズ達を外の露天風呂へ案内すると、湯気に紛れてどこかへ消えてしまった。
   外には大小3つの露天風呂があり、そこから出る湯けむりはまるで火山の頂にいるかのように辺りを包んでいた。
   真ん中の大きな風呂から数人の男たちの笑い声が聞こえてくる。
そこには、体中傷だらけの男と、その両脇に若い男達がいた。
バーンズとトーンズは驚いた様子で顔を見合わせる。
「そなたがジークか?」
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