The King of Old ~うちの老いぼれが竜を斬った~
プロローグ
お主がもし、竜と王国の伝説について知らぬのなら
少し昔話をさせてはもらえんか?
なに、年寄の長話をするつもりはない
それに、お主の目には勇者の輝きが見える
古の伝説を求める血筋を感じるのじゃ
そうでなければわざわざワシのところへ来たりはせん
さぁさぁ、ひとまず座りなさい
ワシの武勇伝でもひとつ聞かしてやりたいところじゃが、
残念ながらこの物語にワシは登場せん
大地には緑があふれ
人々が竜の伝説を語り
歴戦の猛者たちが夢と危険に満ちた冒険へと旅立った
そんな時代じゃったのう……
その地ではよく災いが起こったものじゃ
おぞましい悪が民を穢し、儚い命を奪っていった
同時に勇敢なるものたちがその身を賭して平和を守ってきた
そして平穏な日々は続き、300年が経った
じゃが、平穏な日々もそう長くは続かぬ……
まさに突然の出来事じゃ
レガシリアという国がたったドラゴン一匹によって壊滅した
もちろん、国中の勇者や騎士たちはその家族や民を護るため果敢に戦った
それでも奴の炎の前にはなすすべもなく、全てが灰と化してしもうた……
ドラゴンは空を飛び回り、悲鳴が入り混じる中、国中を容赦なく火の海にしていった……
ドラゴンの名はフォーグル
その口は馬小屋を軽々と丸吞みにし、放たれる灼熱の息は鉄を一瞬で溶かし、全てを焼き尽くす
記録にあるのはこれだけじゃ……
**********************
「グォホン! グォホッ、ゴホッ…… ええと…… 南の草原区に大量発生したグファングはどうなったのかね?」
「その件につきましては直轄の騎士部隊を派遣しております。報告は明日までには来るかと……」
今、いかにも豪華で堅牢そうな椅子に腰掛けているのはバーンズ。レガシリアの西に位置する国、エルド・ローンズの王だ。歳は五十代後半といったところだろう。白髪の短髪、こけた頬、骨の浮いた体からして予想はつく。
そして王と話しているのが、側近の秘書、トーンズだ。
三十代後半でやせ気味の体にまん丸な眼鏡、髪はくしゃくしゃである。
この前プロポーズした女性に、なんだか無性に頼りないと言われ大撃沈した。
ショックのせいからか、飲めない酒を飲んでひどく酔ったらしく、酒場の男に喧嘩を売ったらしい。彼の右目の辺りにあざがあるのはそのためだ。
頼りなさ十分の彼だが、常に白銀色の鎧を身に纏い、王室秘書の風格だけは健在だ。
窓から小鳥のさえずる空を見上げ、バーンズは目を細めつつ、
「うむ…… 被害はまだ家畜だけだが、市民まで及ぶようになったら大変だ。ここ最近、どういうわけか国中あちこちで治安が悪くなりつつある。」
「確かにここ最近、獣達の数も増え、被害も大きい。なにやら、見たことも無い怪物も出てきたという噂もありますが……。ですが我々には優秀な騎士達、そして精鋭の中の精鋭である勇者達がいます。なにも恐れるには足りません。」
トーンズは得意げに、ずれた眼鏡をクイッと元へ戻した。
「そういえばバーンズ殿、そろそろ昼食のお時間です。何に致しましょう?」
王の食事の管理は秘書の仕事であり、彼は年老いたバーンズの食生活に特に気を遣っている。
先日、バーンズがパンを喉に詰まらせて城中が大騒ぎになったばかりであり、今朝もトーンズはコックに料理を細かく切って出してくれないか相談していたらしい。
王の秘書もなかなか大変な仕事である。
バーンズは今日の昼食について考えると、心配そうにお腹をさすりながら、
「そうだな、今日も魚がいい。肉は最近、胃がもたれて仕方が無い……」
粛々とした空気の中、会話をしているとバーンズは外を歩く人に気がついた。
ゆっくりと立ち上がると、目をゴシゴシしながら、
「おい、トーンズ。あそこを歩いているのは何だ?やけに遅いようだが…… 目がかすんでよく見えんのだ。」
「ああっ!あれはレガシリアの兵士! 足を引きずってるぞ…… こちらに、向かってきているようです。」
バーンズは困惑した表情で顔のしわを一層深めながら、早く迎えを出すように指示を出した。
「よりにもよってレガシリアの兵士がこの地に一体なんの用だ……」
少し昔話をさせてはもらえんか?
なに、年寄の長話をするつもりはない
それに、お主の目には勇者の輝きが見える
古の伝説を求める血筋を感じるのじゃ
そうでなければわざわざワシのところへ来たりはせん
さぁさぁ、ひとまず座りなさい
ワシの武勇伝でもひとつ聞かしてやりたいところじゃが、
残念ながらこの物語にワシは登場せん
大地には緑があふれ
人々が竜の伝説を語り
歴戦の猛者たちが夢と危険に満ちた冒険へと旅立った
そんな時代じゃったのう……
その地ではよく災いが起こったものじゃ
おぞましい悪が民を穢し、儚い命を奪っていった
同時に勇敢なるものたちがその身を賭して平和を守ってきた
そして平穏な日々は続き、300年が経った
じゃが、平穏な日々もそう長くは続かぬ……
まさに突然の出来事じゃ
レガシリアという国がたったドラゴン一匹によって壊滅した
もちろん、国中の勇者や騎士たちはその家族や民を護るため果敢に戦った
それでも奴の炎の前にはなすすべもなく、全てが灰と化してしもうた……
ドラゴンは空を飛び回り、悲鳴が入り混じる中、国中を容赦なく火の海にしていった……
ドラゴンの名はフォーグル
その口は馬小屋を軽々と丸吞みにし、放たれる灼熱の息は鉄を一瞬で溶かし、全てを焼き尽くす
記録にあるのはこれだけじゃ……
**********************
「グォホン! グォホッ、ゴホッ…… ええと…… 南の草原区に大量発生したグファングはどうなったのかね?」
「その件につきましては直轄の騎士部隊を派遣しております。報告は明日までには来るかと……」
今、いかにも豪華で堅牢そうな椅子に腰掛けているのはバーンズ。レガシリアの西に位置する国、エルド・ローンズの王だ。歳は五十代後半といったところだろう。白髪の短髪、こけた頬、骨の浮いた体からして予想はつく。
そして王と話しているのが、側近の秘書、トーンズだ。
三十代後半でやせ気味の体にまん丸な眼鏡、髪はくしゃくしゃである。
この前プロポーズした女性に、なんだか無性に頼りないと言われ大撃沈した。
ショックのせいからか、飲めない酒を飲んでひどく酔ったらしく、酒場の男に喧嘩を売ったらしい。彼の右目の辺りにあざがあるのはそのためだ。
頼りなさ十分の彼だが、常に白銀色の鎧を身に纏い、王室秘書の風格だけは健在だ。
窓から小鳥のさえずる空を見上げ、バーンズは目を細めつつ、
「うむ…… 被害はまだ家畜だけだが、市民まで及ぶようになったら大変だ。ここ最近、どういうわけか国中あちこちで治安が悪くなりつつある。」
「確かにここ最近、獣達の数も増え、被害も大きい。なにやら、見たことも無い怪物も出てきたという噂もありますが……。ですが我々には優秀な騎士達、そして精鋭の中の精鋭である勇者達がいます。なにも恐れるには足りません。」
トーンズは得意げに、ずれた眼鏡をクイッと元へ戻した。
「そういえばバーンズ殿、そろそろ昼食のお時間です。何に致しましょう?」
王の食事の管理は秘書の仕事であり、彼は年老いたバーンズの食生活に特に気を遣っている。
先日、バーンズがパンを喉に詰まらせて城中が大騒ぎになったばかりであり、今朝もトーンズはコックに料理を細かく切って出してくれないか相談していたらしい。
王の秘書もなかなか大変な仕事である。
バーンズは今日の昼食について考えると、心配そうにお腹をさすりながら、
「そうだな、今日も魚がいい。肉は最近、胃がもたれて仕方が無い……」
粛々とした空気の中、会話をしているとバーンズは外を歩く人に気がついた。
ゆっくりと立ち上がると、目をゴシゴシしながら、
「おい、トーンズ。あそこを歩いているのは何だ?やけに遅いようだが…… 目がかすんでよく見えんのだ。」
「ああっ!あれはレガシリアの兵士! 足を引きずってるぞ…… こちらに、向かってきているようです。」
バーンズは困惑した表情で顔のしわを一層深めながら、早く迎えを出すように指示を出した。
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