僕はまた、あの鈴の音を聞く

りんね

No.20 ●●●●

「これに見覚えはあるかな?」

嬉野紬は鈴を取り出した。

しかし......

「ないよ。後、嬉野嘘つくなよ• • • • •

その鈴は、例の少女が持ち歩いていたものと、色が違った。

銀色ではなく、真っ赤な朱色。

「.......!! よく分かったね、驚いたよ」

嬉野紬が、目を大きく見開いた。

「何で分かったの?」

「まず色が違う。それに神崎冬夜は、君が来る前に『嬉野紬は僕のことを知っている』って言ったんだ。それはつまり、君と神崎とは例の秘密を共有してるということだろ?」

例の秘密。

僕の過去を知っている人達は、僕に何かを隠している。

だから鈴を見せたのだ。

嬉野紬が、知っている• • • • •側の証明として......。

「ハハハ、信義君流石だね」

「嬉野、改めて聞く。君は僕のことを知っているのか?」

「少なくとも今の君は知らない。それ以上でもそれ以下でもない」

「そうか......。なあ、後一つ聞いていいか?」

「何?」

僕はこの時、いや彼女と出会った時からずっと心に違和感を感じていた。

それは......

「あっ、やっぱり駄目」

すると、嬉野が僕を制した。

「その答えは、自分で見つけてみて」

僕はその抽象的な質問に対し、

「分かった」

とだけ答えた。

彼女に聞きたいことは山ほどある。 

しかしそれはいずれ分かること。

僕が記憶を戻せば、全てが分かる。

神崎や嬉野が隠している秘密。
僕が感じている嬉野の違和感。
木霊朱莉との関係。

そして、鈴の少女......

「もう案内はいいのか?」

「うん。今日はありがとう」

そして嬉野紬は去り際にこう言った。

「あっそうだ信義君。君の探してる少女、意外とすぐ近くにいるかもね」

嬉野紬は、何者なのだろうか......

そして、彼女は立ち去った。

「もう一度、あの少女に会えないものだろうか」

ーチリン、チリン

鈴の音が鳴り響く。

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