ローグライク・チェイン 懲役3億円の探索録

三井遼

プロローグ

とある国に血みどろの戦いが終わって1年程たった砦があった。壁は崩れ屋根は燃え尽き、魔物を寄せ付けぬための加護の像さえも打ち倒され、もはや拠点としての価値を失った場所。

 この惨状をなした勢力はいずれもとうにこの場を去ってしまい、今や言葉も交わせぬような下級の魔物と戦時用の罠だけが残された魔窟。

 だが、そんな人の手を離れた場所を訪れる一団がいた。

 彼らは罪人。

 何かの咎をもって呪いの錠を嵌められた囚人の集団。

 彼らは一様に鎧もなく兜もなく、ただ武器をそれぞれ一振り持っている。背には軍用鞄を背負っているが、鞄の中はほとんどがらんどうで多少の食糧・旅道具が入っているだけ……。魔窟で身を守るには到底足りる用意ではない軽装だった。

 だが罪人たちは歩を進める。

 崩れた門の前で血のこびり付いた剣を掘り起こす者、城壁上にて魔狼の死骸をさばき骨を集める者、廃塔に鷹の巣を見つけ風を纏った羽を拾う者。
 彼らは危険を冒し、値が付くであろう品々を何であれ手に入れる。

 それが自らの罪と引き換えになるのだから。


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