スキル『日常動作』は最強です~ゴミスキルだと思ったら、実は超万能スキルでした~

Mei

ネスラ家での昼食 ー2

「レクス。口を開けて」

 セレスにそう言われ、口を開けるレクス。

「あ~ん」

「っ!?」

 セレスがそう言いながらレクスの目の前に、箸でバッファーの肉を掴み、持ってくる。

 バッファーとは大型の牛のような魔物で二本の角を頭からはやし、毛並みは茶色い。その魔物から取れる肉はとても絶品。高級品の一つでもある。値段が高いせいで、貴族の間では人気なのだが、庶民の間では流通していない。その肉が今、レクスの眼前にあるのだ。

 ああ……! うまそう……! 是非とも、是非とも食べたいですけれど……!

 流石にこの歳であ~んされるのは恥ずかしい。レクスは心の中で葛藤した。食べるか、食べないか。レクスが選んだのは……。

「う、うまい……!」

 食べることにした。バッファーの肉を噛むと、口全体に仄かな甘味とジューシーな肉汁が広がる。

 しかもこの柔らかさ……! たまりません……!

 バッファーの肉の最大の特徴はこの柔らかさにある。この柔らかさと、噛むときに溢れ出す肉汁とのマッチがたまらない。

「ああーー! お姉様!」

 セレスに先を越された事が悔しいのか、む~っ……。と唇を尖らせるフィア。

「どう? 美味しいか? レクス」

「はい! とても美味しいです!」

 レクスは先程までの羞恥心など頭の中から吹っ飛んだように満面の笑みを浮かべた。

「…………! そ、そうか……。それは良かった……」

 そんなレクスの笑みに思わず一瞬ドキッとしてしまったセレス。だが、ここで動揺するわけにはいかない。姉としての威厳がなくなってしまうからな。

「レクス君!」

「…………?」

「はい!」

 フィアは少しぶっきらぼうにそう言うと、箸でマタイケの葉を掴み、レクスの眼前へ。

 マタイケの葉もまた高級品の一つだ。栄養価が高いというのも理由だが、これを食べるとほんの少しだけだがステータスが上昇するのだ。レクスにとってはありがたいものである。

 レクスはありがたく頂くことにした。

「このシャキシャキ感とサッパリ感……。良いですね……」

 マタイケの葉にはコンディメントの一種、フレグシがかかっている。それによって少しピリ辛さが足され、瑞々しい感じと合わさりサッパリ感が出されているのだ。

 レクスが美味しそうにマタイケの葉を食べている様子を見てご満悦の様子のフィア。

「くっ…………! やってくれるじゃないか……フィア……!」

 今度は逆に悔しそうな声をあげるセレス。

 こうしてレクス、セレスとフィアのネスラ家姉妹との楽しいようで騒がしい昼食の時間は過ぎていった。



◇◆◇◆◇


「ふう……結構食いましたね……」

 レクスは既に自室に戻り、のんびりと過ごしていた。レクスの部屋にはふわっふわのベッドとソファーに透明な素材の机が備え付けられており、とても広々としていた。

「……そう言えば……何か忘れているような……?」

 フィアさんに何かを言うはずだったんですけど……。

 う~ん……と唸るレクス。

 自分のステータスの事……ではなかったはずです……。4日後にはシルリス学園の…………って。

「ああ!! そうだ! フィアさんにシルリス学園の入学試験を受けることを言わなくちゃならなかったんだ……!」

 レクスはすぐにソファーから立ち上がり、フィアに入学試験の事を伝えるべく自室を出ていった。



◇◆◇◆◇



「ここがフィアさんの執務室……!」

 レクスは自室を出た後、フィアの元へ向かおうとしたもののどこにいるか分からず、近くのメイドに聞いたところ。

『フィアお嬢様なら今は執務室におられます』

 レクスは執務室がどこにあるのか教えてもらい、現在に至るわけだ。

 レクスはいきなり執務室に入るのも失礼かと思い、ドアを軽くノックする。

「どうぞ」

 中からフィアの声が。レクスはそれを聞くと、ドアを開けて中に入った。

「レクスか」

 フィアは入ってきた人物を見て呟いた。

「どうしたの?」

「……フィアさんにお伝えしたいことがあって参りました」

 ……言うって決めたんです……! 覚悟を決めて……!

「……僕は4日後に行われるシルリス学園の入学試験を受けにいきます」

 フィアさんには既に僕が無能だということが知られている。無理だって言われるかもしれない。やめろって言われるかもしれない。でも……!

「学園で色々なことを学んでみたいんです……! してみたいんです……!」

 レクスはどうかお願いします! と頭を下げる。

「レクス、頭を上げて」

「………………!」

 フィアにそう言われ、頭を上げるレクス。

「……レクス、一つだけ聞かせて」

 場の空気が緊張感に包まれる。

「ーーー覚悟はある?」

「ーーーあります!」

 自分が無能な以上、例え入学できたとしても蔑まれる事は間違いないのだ。それぐらいーーーとっくのとうに覚悟はできている。

「……そう……か。うん。なら何も言うことはないよ」

 レクスの決意に満ちた表情を見てそう言うフィア。

 レクスは、フィアにそう言われたことでホッとした。特に反対されることもなくすんなりと認めてもらえたので良かった。

 レクスは用事を済ませると、失礼しますと言って執務室を出ていった。

 


 誰もいなくなった執務室で、フィアが背もたれに身を預け、ふうーーと長いため息を吐いた。

「…………レクスが入学試験を……ね……?」

 学園は基本的に実力主義。能力がなければ容赦なく切られる。そんな場所だ。フィア自身もそう言う人達をたくさん見てきた。

「ーーーレクス、頑張れ。負けるんじゃないよ」

 レクスが出ていった執務室のドアを眺めながら、そう呟いた。


「スキル『日常動作』は最強です~ゴミスキルだと思ったら、実は超万能スキルでした~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • 黒音

    次の更新も楽しみにしてます!

    0
コメントを書く