スキル『日常動作』は最強です~ゴミスキルだと思ったら、実は超万能スキルでした~

Mei

提案

 ーーディベルティメント騎士団。常識に疎いレクスでさえ知っている。

 彼らは王都を中心に活動しており、犯罪者を捉えたり、危険な魔物の討伐に向かったりと街の治安維持に努めている。

 ディベルティメント騎士団に所属するためには、当然入団テストを受ける必要がある。ただ、その入団テストが非常に難関らしく、年に二、三人受かるかどうかなのだとか。

「それにしても……まさかネスラさんがディベルティメント騎士団の団長だったとは……」

 ネスラさんがそんな騎士団の団長なのだから、ネスラさんの実力は相当なものなのだろう。

「ふふ。騎士団長といってもそんな大層なものじゃないわよ」

 ネスラさんはそう言って朗らかに笑う。

「いやいや、だってあのディベルティメント騎士団の団長ですよ! どの騎士団よりも強いと言われている騎士団の!」

 レクスは身を乗り出して興奮気味に言った。

「ふふふ。そう言ってもらえて嬉しいわ」

 微笑ましげにレクスの様子を見つめ、そう言うネスラ。

「所でレクス君。今日は話があるってことでここに来てもらった訳だけど……ゾフィール、例の物を」

「はい、かしこまりました」

 黒服の男性ーーーゾフィールは軽く会釈すると、レクスの前に何やらバッジらしき物を置いた。

「これは?」

「それは我がネスラ家の紋章よ」

 そのバッジのデザインは凝っていて、業物であるということが伺えた。

「いえいえ! 頂けませんよ、こんな高価な物!」

 レクスはゾフィールの置いたバッジを直ぐにネスラへ返そうとした……が。

「ーーーレクス君。いえ、レクス。貴方は今日から我が家で生活してもらうわ」

「ーーーーえ?」

 レクスは突如、ネスラの口から発された言葉に驚き、思わず声を漏らしてしまう。

「ーーというより、是非私に貴方を養わせて欲しい!」

 ネスラは目を輝かせながらそう言った。そんな彼女の様子にレクスは更に困惑してしまう。昨日あったばかりの、それもディベルティメント騎士団の団長からそう言われれば当然だろう。

 だが、レクスはこの話を受けられない。正確に言えば断らなければならないのだ。

 レクスとしては、日々暮らしていけるだけのお金が足りないため、是非ともお願いしたい所ではあるが…………。

 レクスは職が無い。所謂│無職《怠け者》なのだ。職が無ければ仕事もまともに受けさせてもらえない上に、世間一般でも風評があまり良くないのだ。仮にネスラ家でお世話になったとしてもネスラ家の評判が落ちるだけである。レクスとしては自分のせいでネスラ家の評判が落ちたりする事はどうしても避けたかった。

「……とてもありがたいお話なのですが……断らせて頂きます」

「…………もしかして、君が昨日言ってた無能ってこと?」

 ーーー勘が鋭い。というより、よく覚えてますね……。普通、忘れてそうな事なのに……。

「……ええ」

 レクスはネスラの問いに小さく頷き返す。

「そんな事気にする必要はないわ」

 寧ろそっちの方が養いがいがあるしね、と内心呟くネスラ。

「で、ですが……」

 それでもなお言い淀むレクス。

「子供はそんな事気にしなくて良いのよ、こう言う時は大人に頼るのも大事よ?」

「…………子供じゃありませんし」

 レクスは拗ねたような口調で呟いた。そんなレクスの様子を微笑ましそうに見つめるネスラ。やがて、答えを決めたのか俯いていた顔をあげるレクス。

「…………では、そちらの方にお世話になりたいと思います」

 宜しくお願いします、と頭を下げるレクス。

「決まりね! じゃあ、この後我が家に案内するから!」

 ネスラはそう言うと、ニッコリと笑った。

 

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