陰キャな僕はバンパイア

ノベルバユーザー269823

陰キャな俺はバンパイア

目が眩みそうになるくらいな朝日がカーテンの隙間から俺の顔を照らしている。
いつもと変わらない朝、俺はそう思っていた。あのおっさんに出会うまでは…。

俺の名前は陰野 和尊(かげの わたる)高校一年生だ。
 
「わたるー、おはよー」

今挨拶したのが俺の母、小夜子(さよこ)
母子家庭だから父はいない。生活には困っていないが。

「行ってきまーす」

「はーい」

いつも通り、一人で登校していく。コンビニの前を通り、太っていて愛想の悪そうな猫を横目に校門を跨ぐ。 

何事もなく席に着くと、

「わたるっ!おはよ!」

と、朝から耳がキーンっとするようなうるさい声で挨拶してくる中川 匠(なかがわ たくみ)がいた。

「朝からうるせーよw」

「ごめんごめんw、それより昨日いいエ○本見っけたんだって!」

「なんでそこは小声で言えるのに挨拶うるせぇんだよ。」

俺らはいつも二人だけでバカみたい話しをして学校生活を送っている。コイツとは小学校の頃からの腐れ縁だ。二人とも友達はそんなに多く無いし、明るくもない。勉強も運動もそんなに出来ない。女子とは絶対に話さない。


そう俺たちは典型的な陰キャなのである。

「あ、わたる見ろよ、藤村さんだ」

彼女の名前は藤村 彩乃ふじむら あやの
少し茶色がかった髪をツインテールにしている学校一といっても過言ではない程の美少女だ。

「わたるー、今日も可愛いな藤村さん」

「俺らみたいな陰キャとは住む世界が違うよなー」

正直、俺も思わず顔を凝視してしまうくらい可愛い。しかも学年トップクラスの秀才だ。天は二物は与えずというが、そんな言葉はあてにならない。

「見ろよ、大岡さんだ。やっぱ色気あるよなー」

彼女は大岡 真子(おおおか まこ)黒髪ロングの清楚系だが大人の雰囲気漂ういわゆる美人系だ。成績も学年首席の才媛だ。何より巨乳!…おっと失礼。俺としたことが取り乱してしまった。



見るだけなら犯罪じゃないよね。

あっ通報しないでね。

あの二人が俺のこと見てくれたらいいのになぁ。憂鬱になるわ。

校庭の桜も俺と同じこと思っているみたいだ。いや、それは俺の独りよがりか。



俺はいつも通り最後の授業を寝て終え、帰路についた。

行きに見たコンビニがまだ別の顔を見せているがその顔は不安になるくらい真っ赤である。

そのコンビニの前にいかにも胡散臭そうなおっさんが立っていた。 

人を探しているようだが、無視して通り過ぎようとした。しかし、

「まてまて。お前さん」

と、話しかけられた。

「な、なんですか?」

「悩み事は無いかね?」

やはり胡散臭い。

「特にありませんが」

「いや、あるであろう。特に女性関係で。ワシが助けてやろう。」

何この人超能力者なの!?

確かに俺、魔法使い見習いだけど別に人に助けて貰らう程困って無いのに…

なんか自分で言ってて辛くなってきたな。

するとおっさんは、俺の頭に手を置いてきた。

そして、謎の呪文らしき言葉を唱えると、俺の意識が刈り取られ目の前が真っ暗になった…


俺はなぜかベットの上で寝ていた。すると、

「目が覚めたかな?」

俺しか居ないはずの部屋からさっき聞いた声が聞こえた。

「どこにいるんですか?」

「君の頭のなかですぞ」

俺はおっさんの意味不明な言葉に戸惑っていた。

「私は吸血鬼に仕える執事なのであります。今、この瞬間からあなたのお手伝いを致します。」

どういうことだ?執事?意味が分からない。

「ど、どういうことですか?」

「あなたはバンパイアになられたのですよ」

これはきっと悪い夢だ。早く覚まさなければ。

「これは現実ですぞ。和尊様。」

心読まれた!?

「あなたはこれからすべてを手にするバンパイアになるのですぞ。」

「すべてを手に?」

絶対無理だろ。

「はい。あなた様なら叶えることができるでしょう。」

「どういうふうにすべてを手にするのですか?」

俺は恐る恐る聞いてみた。

「まず、バンパイアが血が吸えることは周知の事実ですが、吸った相手の能力・記憶をコピーすることができるのです。そして最も重要な力は…」

「相手の心を奪うことです。」

「ど、どういうことですか?」

「つまり、和尊様に血を吸われた女性は和尊様のことを好きになるのです。」

「あくまで女性限定ですが。」

俺は頭の中が真っ白になった。 

どういうことだ?今日は何回どういうことだと思わなければならないのだろうか。

「それでは早速明日吸って見ましょう!」

そんな急に!?

女子と話した最後の記憶が四年前の俺がいきなり女子の首を噛むだと!?

ハード過ぎる…。









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