東のマジア

ノベルバユーザー286206

〈第°,\話〉".:|°-,_'.^-/,…||°/

駅近くの住宅街。
騒がしい人達の声が遠くから聞こえてくる。
いくら電灯があるといえど、その間隔は幼い少女一人には広すぎた。

少女は読み方もしらない“孤独”という言葉を十分すぎるほど理解していた。
それはきっと誰が見てもわかる。

少女の目の色は生まれつき、日本人にとっては珍しい色をしていた。その人々は目を美しいと思うだろうが、その服だけがあまりにみすぼらしい為、だれもそれに気付くことはなかった。
彼女の服がみすぼらしいのは、彼女の家にお金が足りないからではない。彼女の母には駅近くのアパートを借りることができ、毎晩遊べるほどのお金が充分にある。
彼女に足りなかったものは、母の愛だった。
だが、彼女は強く生きてきた。彼女は自分が強く生きていると信じ、そして、誰もがそう思うだろう。

その日彼女は、カップラーメンにお湯を注ぎ出て行った母の後に、なんとなく、こっそりと、付いていこうとして、そうして、彼女は迷子になった。
ふと一つ向こうの光の中に一匹の猫がいることに気がついた。
猫は家と家の間の暗い道へとゆっくり歩いて行く。
それを追い少女も暗い道へと歩いて行く。
すると、子猫は暗いなか足を止め、少女をみた。
あまりに暗く少女はそれに気づかない。

だが、少女は子猫が人間の大人の姿に一瞬にして変化したのには気づいたようだ。

「我らギャング。」

「略奪する者なり。」

恐怖に、息を吸い込み、声が出てしまう前に、少女の口は後ろのもう一匹の人間の大人により塞がれてしまった。
少女の抵抗も虚しく、その体は簡単に持ち上げられてしまった。
そして、大きくなった猫達はマントを翻した。


ビュン!という勢いのいい音と共に少女はふわりとした感覚に襲われたと思えば、バン!と、これまた勢いのいい音と共に抱えられている腕の中で重い重力を感じた。

そうすると、そこは一瞬にして、大きいレンガの壁に挟まれた、さっきよりは少し明るい路地に場所が変わった。少し明るくなったことによって映し出された、大きくなった猫の顔は、猫とは程遠い、悪そうなおじさんの顔だった。だがその眼は猫より鮮やかな黄色だった。

少女もその眼に驚いたが、おじさんもまた少女の眼に驚いた。おじさんはもう一人の仲間のおじさんに言った。
「おい!…こいつの眼…!!」

「顔は!?外国人じゃねぇのか!?」

(これは生まれつきだ!)

言ってやりたいが、口は塞がれている。
そして、驚くことにもう一人のおじさんも紫色という不思議な眼の色をしていた。コンタクトなのだろうか。

「おい!こっちの奴を攫ったんじゃねぇだろうな!?」

「それにしては色が薄すぎる!」

「こっちのやつだったら持って帰れねぇ!」

「おいお前!どっちの人間だ!」

少女は地面に乱暴に落とされた。

「おい!!なんなんだ!お前ら!!なんの話だ!!私はれっきとした日本人だ!!!!生まれつき目の色が青いんだ!!!悪いか!!お前らだって…」

小さい少女から発せられたとは思えない大声に一瞬気圧されたおじさんだったが、すぐに我に返り、その勢いに負けない大声もう一度聞いた。

「どっちの人間かと聞いてるんだ!!」

「なんの話をしてるんだよ!!」

「もういい!」

また喋れなくされてしまった。

「…んんっ!!」

少女は乱暴に扱われた怒りで気づいていなかった。
自分は身動きが取れず、喋ることができないというのに、その体にはなにも縛られていなく、その口にはなにも塞がれていないのだ。
けれど、たしかにその感覚はある。

「おい、どうする…」
「ボスにあそこから余計な奴を攫ったって知られれば…」
「やられるに決まってる!」
「こいつを殺すしかない!」
「いやでも俺たち以外に向こうに行けるのは…もしかして…」
「いい!これ以上面倒なことはしたくねぇ!殺すぞ!」
「いやでも!」

少女をよそに話し合いをし始める、おじさん達の後ろから少女と同い年くらいの男の子がでてきた。

赤い眼だ。

彼は少女に触れ、耳元で早口で囁いた。

「僕のブレスレットをあげるから君は逃げるんだ。」

そして少年がブレスレットを差し出すと、
身動きの取れるようになった少女はブレスレットを奪うようにとって右腕にはめると、全力で走った。

「おい!あいつ逃げたぞ!!」
「なんだって!?」

おじさんはそれにすぐ気付くと追うよりも自分の手から炎の球のような美しいものを少女に投げた。

だがそれは当たらず、少女の少し前にあったゴミ箱を吹き飛ばすだけだった。
それに驚いた少女は衝動的に後ろに右手を振った。
すると少女の手からもさっきと同じような炎の球が出てきたと思うと、それは勢いよくレンガの壁にぶつかり、その破片達は狭い路地を塞いだ。

「おい!小僧お前あいつになんかしたんじゃ…」
「やめておけ、ギャビン様の息子だぞ…!」

黄色い眼をしたおじさんは、少年から一歩引き、なにか言おうとし吸った息をゆっくりと吐いた。

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